「S&P500」に資金流入の集中度高まる。いつまで「米国株高」は続くのか?=11月資金流入トップ20
Finasee / 2024年12月16日 7時0分
Finasee(フィナシー)
三菱アセット・ブレインズがまとめた2024年11月の公募投信(ETF、DC専用、SMA専用、公社債投信除く)の資金流入額ランキングでトップに立ったのは「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」(流入額1683億円)、だった。前月トップの「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」(同1587億円)は第2位に後退し、第3位は前月同様に「アライアンスB・米国成長株投信 D」(同1022億円)だった。トップ3は3銘柄ともに前月よりも資金流入額が増額し、月間で1000億円以上の資金流入額となった。一方、前月はトップ20に日本株ファンドは1本も入らなかったが、11月も第17位に「日経225ノーロードオープン」が入るのみにとどまった。米国株式を主軸においた一部の銘柄に人気が集中する動きが続いている。
◆人気投信に資金集中? 10カ月間の「オルカン」「S&P500」の動き資金流入ランキング上位銘柄に資金が集中してきている。過去3カ月の資金流入額の推移は、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」で9月1204億円が、10月1342億円、11月は1683億円と拡大。「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」も9月1468億円が10月1493億円、11月は1587億円。「アライアンスB・米国成長株投信 D」も9月635億円が10月721億円、11月は1022億円となり、それぞれ資金流入額が月を追うごとに増額している。
月次の資金流入額では、今年1月に「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」が3439億円を記録し、同月に「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は2090億円で第2位だった。この爆発的ともいえる資金流入によって新NISAのスタートにあたって、NISAで資産形成するファンドとしてこの2銘柄が多くの投資家に選ばれたことが象徴的にわかる出来事だった。その後、両ファンドには月間で1500億円~2000億円程度の資金流入が続き、7月には「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」が2239億円、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は1999億円、また「アライアンスB・米国成長株投信 D」には1675億円の流入という2度目のピークを迎えた。
8月は一転して資金集中度が分散する。月間の資金流入額は「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」が1520億円、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」は1181億、「アライアンスB・米国成長株投信 D」が795億円になった。このトーンダウンは9月ごろまで続き、10月以降に再び徐々に盛り上がるという軌跡だった。ここ数年というもの、資金流入の中心は「外国株式型(先進国株式)」になっている。その「外国株式型」の中で、特定のファンドに資金流入が集中する時と、分散する時が周期的にやってきている。年末を控えて再び資金が集中化し始めた。その資金が集まる先は、今回は「米国株式」が中心になりそうだ。米国では新年には大統領が交代し、これまでとは大きく異なる政策を実行しようとするだろう。「米国株式」への集中がどこまで続くのか見極めたい。
◆新規設定ファンドも依然として米国株頼み?前月(10月)28日に新規設定された「ニュートン・パワー・イノベーション・ファンド(ヘッジなし)」が11月にも355億円の資金流入があり11月29日時点の純資産総額は1079億円になった。SMBC日興証券の専用ファンドだが、わずか1カ月間で1000億円を突破した。「電力需要の拡大や電力市場の変革に伴い恩恵を受けることが期待される、世界の株式に投資を行う」というコンセプトが、近年のAI(人工知能ブーム)の裏側に潜むエネルギー供給不安の問題を想起させる今日性、そして、中長期のテーマである「脱化石燃料」をめざす環境保全のカギを握る技術革新への期待も感じさせる。これまでの市場をけん引してきた「IT(情報技術)」や「コミュニケーション・サービス」といったハイテク企業とは異なる視点で銘柄を選ぶことにも、「ハイテク株は割高」という警戒感を持つ投資家に支持されているのだろう。
一方、11月の新規設定ファンドでは、「外国債券型」の「ウエリントン・トータル・リターン債券ファンド(年1回・ヘッジなし)」がトップ20にランクイン(第19位)したが、資金流入額は約121億円だった。「外国株式型」の新規設定ファンドと比較すると設定規模が小さい。欧米の中央銀行が利下げに踏み出し、当面は利下げトレンドが続くものと考えられ、債券市場にとっては追い風となる投資環境だが、その価値は投資家にはなかなか届かないようだ。
現在の多くの投資家が持っているイメージは、年率40%を超えるような高いパフォーマンスを実現してきた「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」に代表される米国株式の運用実績だ。実際に運用報告書に基づいて同ファンドの過去5年の運用実績を決算日(4月25日)基準で振り返ると、2020年がマイナス5.7%だったものの、2021年は49.8%、2022年は23.4%、2023年は2.4%、2024年は43.8%という成績だった。このような高いパフォーマンスを当たり前だと考えてしまうと、「米国株式」以外に投資対象資産がなくなってしまいかねない。ただ、実際に米「S&P500」指数の長期の平均リターンは7%~10%程度のものだ。
国内投資家がみている「S&P500」連動型のインデックスファンドのパフォーマンスは、株価の動きに為替の円安(円高)効果が組み合わされた運用成績になっている。過去に例をみないほどの高いパフォーマンスを今後も期待し続けることはさすがに無理がある。今後の新規設定ファンド、また、既存ファンドへの資金流出入の動きがいつまで現在の「外国株式型」一辺倒が続くのか、その推移を見守りたい。
執筆/ライター・記者 徳永 浩
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。
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