遺族年金は“0円”だと思っていたのに…「安心して大丈夫だからね」69歳妻が夫に伝えたかった言葉
Finasee / 2024年12月22日 11時0分
Finasee(フィナシー)
<前編のあらすじ>
秀治さん(仮名、以下同)は74歳の会社経営者で、45年間連れ添った69歳の妻正子さんと暮らしていました。
秀治さんは既に老齢基礎年金や老齢厚生年金を受給しつつ、会社経営を続けていましたが、引退後の生活を考えるようになり、自分が先に亡くなった場合の正子さんの遺族年金を心配していました。しかし、遺族年金の受給には保険料の納付や免除の期間など受給資格期間が25年必要で、秀治さん自身はその合計が23年しかないことから、遺族年金は無理だと考えていました。
しかし、数カ月後に秀治さんが亡くなり、正子さんが年金事務所で確認したところ、遺族年金は支給されると案内され、予想外の展開になりました。
●前編:【「若い時にちゃんと国民年金保険料を払うべきだった…」遺族年金を諦めていた夫婦に訪れた「予想外の展開」】
25年未満でも中高齢者の特例制度がある正子さんは年金事務所で遺族年金が支給されるとの案内を受けました。秀治さんは厚生年金に加入していたため、正子さんに支給される遺族年金は遺族厚生年金とのことでした。
遺族厚生年金を受給するための要件について、厚生年金加入中の死亡などでない場合で、老齢厚生年金を受給している人が亡くなった場合は、亡くなった人の受給資格期間が25年以上必要になっています。
秀治さんは国民年金保険料の納付4年、厚生年金被保険者期間19年が受給資格期間に算入されますが、合計しても23年しかなく、他に受給資格期間に算入できる期間はなさそうでした。そのため、合計25年未満であることは確かです。
しかし、秀治さんは中高齢者の特例制度に該当していました。その中高齢者の特例とは、生年月日により、男性は40歳以降で、女性は35歳以降で15~19年の第1号厚生年金被保険者(※会社・民間の法人等の役員・従業員を対象)の期間があれば、受給資格期間が25年未満でも25年の要件を満たす扱いとなります。
秀治さんは50歳になって法人化してその代表者となり、厚生年金に加入していました。全て40歳以降の厚生年金被保険者期間となり、これが70歳になるまで19年ちょっとありました。
そして、1950年5月生まれ(1950年4月2日~1951年4月1日生まれ)である秀治さんの場合は、当該期間が19年(228月)あればこの要件を満たすことになり、その結果、正子さんに遺族厚生年金が支給されることになります。窓口では「遺族厚生年金の額は40万円になります」との案内でした。
経過的寡婦加算も付くことにまた、正子さんの遺族厚生年金には経過的寡婦加算(1956年4月1日以前生まれが対象)も加算されます。経過的寡婦加算が遺族厚生年金に加算されるためには、厚生年金加入中の死亡などでなければ、本来、死亡した人の厚生年金被保険者期間が20年以上必要です。
しかし、中高齢者の特例に該当している人が亡くなると、これも20年あるとみなされることになります。加算額は受給する妻の生年月日によって異なりますが、正子さんの場合は年間2万円程度の加算です。遺族厚生年金40万円に2万円の経過的寡婦加算が加算され、合計42万円となり、秀治さんの死後、受給できることになります。
こうして正子さんは、0円だと思っていた遺族年金を受けられることが判明しました。新たに受けられる42万円の遺族年金と正子さん自身の老齢基礎年金とをあわせて受給することになります。正子さんは「何とか生活できそう」と考え、亡き秀治さんには「安心して大丈夫だからね」と思うのでした。
遺族年金が支給されるためには要件があります。支給されないと思っても支給されるケースもあります。自身亡き後の家族のことも考えるのであれば、遺族年金についてもあらかじめ確認しておくと良いでしょう。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
五十嵐 義典/ファイナンシャルプランナー
よこはまライフプランニング代表取締役、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、特定社会保険労務士、日本年金学会会員、服部年金企画講師。専門分野は公的年金で、これまで5500件を超える年金相談業務を経験。また、年金事務担当者・社労士・FP向けの教育研修や、ウェブメディア・専門誌での記事執筆を行い、新聞、雑誌への取材協力も多数ある。横浜市を中心に首都圏で活動中。※2024年7月までは井内義典(いのうち よしのり)名義で活動。
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