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目利きが運用しても、なかなかインデックスファンドには勝てない…驚きの数値を示す「あるデータ」

Finasee / 2024年12月27日 18時0分

目利きが運用しても、なかなかインデックスファンドには勝てない…驚きの数値を示す「あるデータ」

Finasee(フィナシー)

老後資金2000万円問題や新NISA開始もあって、今までにないと言えるほど多くの人が資産形成に関心を寄せています。

しかし、そうしたムーブメントがあれば、必ず現れてくるのが「ネットにあふれる玉石混交の金融情報」。こうした状況に対し、元・金融庁官僚でマネックスライフセトルメント代表取締役の我妻佳祐氏は、「ほんとうに必要な金融の知識は、それほど多くもない」と警鐘を鳴らします。

そんな、“必要最低限の金融知識”を説く話題の書籍『金融地獄を生き抜け 世界一簡単なお金リテラシーこれだけ』から、投資信託の選び方について解説した箇所をお届けします。(全4回の4回目)

●第3回:「インフレで物価が上がればモノが売れなくなるのでは?」という人は知らない…インフレの本当の仕組み

※本稿は、我妻佳祐著『金融地獄を生き抜け 世界一簡単なお金リテラシーこれだけ』(幻冬舎)の一部を抜粋・再編集したものです。

インデックス投資信託に負け続けるアクティブ投資信託

「貯蓄から投資」に切り替えようと決めると、こんどは「なるべくリターンを大きくしたい」と思うのが人情でしょう。すると、「いくらかリスクが高くてもアクティブ投資信託を選んだほうがよいのではないか」と考えるようになるかもしれません。たしかにアクティブ投資信託は、うまくいけばインデックス投資信託よりも高い利回りが得られることもあるでしょう。

ルーレットにたとえるなら、インデックス投資倍託は、いわば全部の数字にベットする(チップを置いて賭ける)わけです。数字ひとつあたりの平均賭け金は少なくなりますが、長くやっていれば、大儲けはしないものの必ず収支はプラスになるでしょう。もちろん現実のルーレットは期待値がマイナスなのでこの賭け方では長期的に必ず損をしますが、経済全体が成長していく場合は期待値がプラスのルーレットのようなものなので、この賭け方(インデックス投資信託)でも利益が出せるわけです。

それに対して、アクティブ投資信託はプロが選んだいくつかの数字にベットするようなもの。インデックス投資信託のように闇雲に全部買うのではなく、投資のプロが値上がりしそうな株を厳選して買ったほうが、直感的には高いリターンを得られそうにも思います。

ところが過去の運用成績を見てみると、必ずしもそうはなっていないのが実情です。驚くべきことに、アクティブ投資信託はインデックス投資信託に比べてリスクが高いだけではなく、リターンも低いのです。要は、アクティブ投資信託はリスクを取ったわりにたいして儲からない商品であるということです。

ふつう、リスクとリターンは相関関係にあります。リターンを高めようとすればリスクも高くなる(ハイリスク・ハイリターン)、リスクを減らせばリターンも減る(ローリスク・ローリターン)という関係です。しかし、アクティブ投資信託はリスクが高いのにリターンは低いという商品です。こういう商品を「非効率」な商品と呼んだりします。「ローリスク・ハイリターン」な金融商品は存在しませんが、「ハイリスク・ローリターン 」な金融商品はいくらでもあるので気をつける必要があります。

毎月の「勝率」は意味がない

インデックス投資信託とアクティブ投資信託の成績比較を検索してみると、いろいろな会社が「アクティブ投資信託が勝っている」というような記事を書いています。投資にあまり詳しくない人は「やはり投資のプロが選ぶ商品はリターンが高いのだな」と思ってしまうかもしれません。

しかし、私の目から見ると、それらの記事はどうもゴマカシが多いように思います。具体的には、毎月の「勝率」を根拠にアクティブ投資信託がインデックス投資信託に勝っているかのような説明をしているものが散見されます。しかし、投資する人が知りたいのは「いくら儲かったか」だけです。毎月の勝ち負けで勝率がいくら高くても、小さく勝って大きく負けていたのでは意味がありません。

ここで、投資信託協会のレポートを見てみましょう。この協会は投資信託を推進するのが目的の協会なので、「アクティブ投資信託を売りたい」と思っています。実際、レポートの冒頭にも「アクティブファンドの活性化の必要性について考察したい」と書いてあり、インデックス投資信託にわざわざ肩入れしようとは思っていないところなので、インデックス投資信託をえこひいきするようなことは書かないでしょう(ここでは「ファンド」は「投資信託」と同じ意味だと思ってください )。

このレボートの4ページに図8のようなグラフと表が載っています。 

 

これを見ると、この10年でのリターンはインデックスファンドが8.3%であるのに対し、アクティブファンドは5.7%にすぎません。アクティブファンドの惨敗といっていいでしょう。投資のプロが目利きしてつくったはずのアクティブファンドが、素人でもつくれるインデックスファンドに負けているのです。
 
また、標準偏差(リスクのことです)は、インデックスファンドが10.4%、アクティブファンドが10.7%と、アクティブファンドのほうが若干高いものの、インデックスファンドと大差ありません。積極的にリスクを取る代わりにリターンも高いというのがアクティブファンドの性質のはずが、実際はインデックスファンドと大差ないリスクしか取れていません。

意地の悪い見方かもしれませんが、投資対象の目利きができずに腰の引けたリスクテイクしかできていないということなのかもしれません。残念ながら、アクティブファンドを買う理由はなにひとつないといっていいでしょう。

マンガ『インベスターZ』も解決?

実際、レポート中にも「日本株式や日本を除く世界株式の指数と比較しても、平均した日本のアクティブファンドの運用効率は振るわず、これが継続するとすれば、現在アクティブファンドを利用している投資者の投資資金も、アクティブファンドからインデックスファンドヘと、よりシフトしていく恐れがあるのではないだろうか」と書いてあり、協会のこのままではマズいという危機意識がうかがえます。

余談ですが、投資をテーマにした『インベスターZ』という三田紀房さんのマンガがあります。これは、名門男子校の高校生が「投資部」をつくり、高校の運営資金を投資で稼ぐという設定なのですが、3000億円の資金を年8%の利回りで運用して毎年の学校運営費の240億円を捻出するというのが目標とされていました。ですが、単に8%稼ぐだけなら、わざわざ投資部をつくって(優秀な)高校生に運用などさせなくても、その3000億円でインデックス投資信託を買っておけば十分だったということになります(マンガの設定の揚げ足を取っているようで申し訳ないですが)。

現実のデータを素直に見れば、協会の認識が妥当なものだと思います。インターネット上にあるアクティブ投資信託が勝っているかのようなことを書いているサイトは、ひねくれた見方をすれば、トータルの利益の比較では勝負にならないので 、「勝率」という一見意味がありそうに見えて、よくよく考えるとあまり意味がないものを持ち出してきて、顧客をミスリード(誤誘導)しようとしているのではないかとも思えてきます。

もちろん、中にはTOPIXなどの指数に連動するインデックス投資信託よりも高い運用成績を上げる腕のよいファンドマネージャーもいるでしょう。世の中にはウォーレン・バフェットなど、インデックスに勝ってきた優れた投資家がいるのも事実です(そのバフェットですら、そこまで大きくインデックスに勝ったわけではないですし、妻への遺言や一般の人に対しては「インデックス投資信託を買え」といっているそうです)。でも、そもそも初心者が投資信託を選ぶのは、自分で投資先を選ぶのが難しいからでした。しかしアクティブ投資信託の場合、「どのファンドマネージャーならインデックス投資信託に勝てるか」を投資家が自分で考えなければなりません。

結局、何を根拠に選べばよいのかわからない点では、自分で投資先を選ぶのと大きな違いはないでしょう。それならば、「下手の考え休むに似たり」と割り切ってインデックス投資信託を選んだほうが賢明です。「資産運用のプロでもインデックスにはなかなか勝てない」ということをしっかり覚えておきましょう。

金融地獄を生き抜け
 

著者名 我妻佳祐

発行元    幻冬舎

価格 1,144円(税込)

我妻 佳祐/マネックスライフセトルメント代表取締役

1981年生まれ、山形県米沢市出身。99年、京都大学理学部数学科入学。2006年、京都大学大学院理学研究科修士課程にて生命保険の研究で修士号を取得する。同年、金融庁に入庁。保険、証券、開示、銀行等金融行政に幅広く関わる。14年、京都大学大学院理学研究科博士後期課程を修了し、生命保険の研究で博士号を取得。19年に金融庁を退官。その後、アクセンチュア等のコンサルティング会社勤務を経て、21年に生命保険の買取サービスを提供する株式会社ライフシオンを設立。24年よりマネックスグループ株式会社傘下のマネックスライフセトルメント株式会社にて代表取締役として引き続き生命保険の買取サービスを提供するとともに、光通信グループの保険事業のアドバイザリーなど、保険・金融コンサルタントとしても活動中。

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