まさか夫に愛人がいたとは…突如離婚を告げられ「生ける屍」のようになった50歳女性が縋った「蜘蛛の糸」
Finasee / 2024年12月23日 17時0分
Finasee(フィナシー)
樋口貴子さん(仮名)は短大を卒業して社会人となって5年目の春、勤務先の先輩だったご主人と結婚、翌年に第一子の長女、その5年後に長男を授かりました。寿退社した後は自治体やクリニック、診療所などで103万円の壁を超えないようにしながらパートで働いてきたそうです。
しかし、結婚25年の銀婚式を迎えた今夏、夫からいきなり離婚を切り出されます。なんと夫には5年越しの不倫相手がいて、その女性が夫の子供を妊娠したのです。夫への怒り以上に樋口さんを追い詰めたのが、「これからどうやって暮らしていったらいいか」という極めて現実的な問題でした。
夫は大学生の長男が卒業するまでの学費の支払いと、自宅マンションのローンの返済を約束してくれましたが、樋口さんと社会人2年目の長女の収入では母子3人が今まで通り暮らしていくのは困難です。そんな樋口さんに救いの手を差し延べたのが、自身も離婚や子育てで苦労した経験を持つ“士業”の女性たちのグループでした。
〈樋口貴子さんプロフィール〉
埼玉県在住
50歳
女性
病院事務
社会人の長女、大学生の長男と3人暮らし
金融資産350万円
***
50代になってにわかに「老後」という言葉がリアルに感じられるようになりました。まさかそのタイミングで、自分が人生の大きなターニングポイントを迎えることになるとは夢にも思っていませんでした。
銀婚式を迎えた夫から急に離婚の話を切り出されたのはつい半年ほど前のことです。
「好きな女性ができたから離婚してほしい」
聞けば、相手は取引先の37歳の女性社員で交際期間は5年にも及び、お腹には夫の子供がいるとのことでした。その時点で妊娠3カ月だと聞きました。
とはいえ、私からすればまさに青天の霹靂です。
夫に愛人がいたこと自体がショックなのに子供まで作っていた上に、夫はその愛人との生活を選んで私たち家族を見捨てるというのです。
精神的なショック以上に大きかったのが経済的な問題でした。
今後の生活に不安しかない上の子は昨年から社会人になりましたが、下の子は今年大学に入学したばかり。まだまだお金がかかります。
しかも、私は結婚してからずっと今話題の「103万円の壁」の範囲内で働いてきたパート主婦です。毎月の家計のやり繰りに精一杯で貯えなどほとんどありませんし、実家の両親も年金暮らしで今さら頼れません。
夫は100%自分に非があることを認め、「下の子が大学を卒業するまでの教育費は負担する」、さらに、「自宅マンションには子供たちとそのまま住み続けてもらって構わない。残りのローンは自分が払う」と提案してきました。
とはいえ、食費や光熱費、マンションの管理費や修繕積立金などの住居費、税金はこの先もずっとかかってきます。夫の給料が入らなくなって家計をどう回していったらいいのか不安しかありません。
こういう時こそ自分がしっかりしなければいけないのに、年齢に応じた人生経験を積み上げてこなかったツケか、何一つ行動を起こせず悶々としていました。
むしろ、少ない給料の中から毎月8万円を家計に入れると言ってくれた上の子や、速攻でアルバイトの時間を増やした下の子の方がずっとたくましく思えたくらいです。
本当にこの人大丈夫かなって思ったわよそんな時、仲のいいパート仲間が紹介してくれたのが、シングルマザーの支援をしているファイナンシャルプランナー(FP)の小原さんでした。
小原さんはご自分が幼子を抱えて離婚して大変苦労されたそうで、同じような経歴を持つ“士業”の女性たちと協力して、経済的に恵まれないシングルマザーや、夫のDV(ドメスティックバイオレンス)などに苦しむ女性に救いの手を差し延べ、経済的自立を促す支援を行っているとのことでした。
私のパート仲間の姪御さんもバイクの事故で旦那さんを亡くし、1歳の子供を抱えて困っていたところ、小原さんが遺族年金や児童手当などの助成金の手続きをしてくれた上に子供を預けて働ける体制まで整えてくれたと聞きました。
小原さんの存在はその時の私にとって、芥川龍之介の小説に出てくる「蜘蛛の糸」そのものでした。急に落ちた地獄の池から救い出してくれる1本の糸。どんな細い糸であっても縋りつくしかない。絶対に切らせてはいけない。
そんな必死の思いで小原さんの事務所の扉を開いたせいか、初めて小原さんと会った時、私は「生ける屍」のようだったと後から言われました。
「目に光がないだけじゃなく、全く生気が感じられなかった。本当にこの人大丈夫かなって思ったわよ」
それでも小原さんはそんな私から辛抱強く話を聞き出すと、優しく背中をなでて励ましてくれたのです。
「私はいろいろ大変な人を見てきたけれど、あなたは恵まれてる。自立した、頼りになるお子さんたちが側にいるんだから。今は3人の新しい生活のことだけを考えて!」
小原さんのポジティブな言葉を聞いているうちに、不思議と腹が座りました。
まず、自分が変わらないといけない。できることからやってみるしかない。そんな気持ちになったのです。
そして、小原さんとその仲間の方々による支援が始まりました。
●小原さんを通じて樋口さんの苦境を知った、税理士、弁護士、社労士からなる支援グループがついに樋口さんのサポートに乗り出します。夫からの裏切りの告白により、50歳にして意図せず人生のターニングポイントを迎えてしまった樋口さん。離婚から半年間の奮闘の続きは後編【慰謝料の支払いを同意させ、手取り25万円の仕事を見つけ出し、突如離婚を切り出された50歳女性を救った凄腕支援グループ】にて詳報します。
※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。
森田 聡子/金融ライター/編集者
日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。
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