慰謝料の支払いを同意させ、手取り25万円の仕事を見つけ出し、突如離婚を切り出された50歳女性を救った凄腕支援グループ
Finasee / 2024年12月23日 17時0分
Finasee(フィナシー)
<前編のあらすじ>
樋口貴子さん(50歳・仮名)は、今夏、連れ添って25年になる夫との銀婚式を控えていました。しかし樋口さんを待っていたのは、52歳の夫からの「裏切りの告白」でした。
37歳の愛人のお腹には3カ月になる子供もいて……。
不倫相手との暮らしを選んだ夫は樋口さんに離婚してほしいと告げます。
夫への怒りよりも樋口さんを悩ませたのが、今後の生活への不安です。下の息子は大学に入学したばかり、どうすればよいのか。苦境にあえぐ樋口さんに手を差し延べたのは、パート仲間から紹介されたファイナンシャルプランナー(FP)の小原さん率いる専門家グループでした。
●前編:【まさか夫に愛人がいたとは…突如離婚話を告げられ「生ける屍」のようになった50歳女性が縋った「蜘蛛の糸」】
いきなりそんなことを言われても困る25年連れ添った夫から突然「離婚してほしい」と言われたのは、私が50歳を超えて人生の後半戦を意識し始めた時でした。
夫は5年ほど前から取引先の15歳下の女性と不倫関係にあり、女性は夫の子供を妊娠。それを聞いた夫は、私や2人の子供よりも新しい家族との生活を選んだのでした。
しかし、いきなりそんなことを言われても困ります。私は結婚してからずっと「103万円の壁」の範囲内で働いてきました。その私の収入を加えても毎月家計は自転車操業で、とても十分な貯えをする余裕などありませんでした。
目からウロコの数々上の娘は昨年から社会人になりましたが、下の息子はまだ大学1年生です。
そんな我が家の経済事情を重々理解している夫は、100%自分に非があることを認めた上で「息子が大学を卒業するまでの学費は払う」「自宅マンションには私たちが住み続け、ローンは自分が負担する」と言ってきました。
夫にしてみれば最大限の譲歩なのでしょうが、私のパート代と娘が家計に入れてくれる8万円を足しても、毎月の収入は16万円ほど。これではマンションの管理費や修繕積立金に税金、光熱費を払っていくのがやっとです。
藁をもつかむ思いで縋ったのがファイナンシャルプランナーの小原さんでした。小原さんはご自分が幼い子供を抱えて離婚し大変苦労されたそうで、同じような経歴を持つ“士業”の女性たちと経済的に恵まれないシングルマザーや、ドメスティックバイオレンス(DV)に悩む女性たちの支援をしていたのです。
苦境を打ち明けたところ、まずは税理士の中本さんが、私の経歴を見て自分の顧客である病院の医療事務の仕事を紹介してくれました。ちょうど職員の退職が決まっていて代わりの人を探していたらしく、給料は手取り25万円ほどですが、正社員にしてもらえることになりました。
恥ずかしながら、私はこれまで税金や社会保険料を払わなくて済む働き方が一番お得だと信じ込んできました。ですから、中本さんから「厚生年金に加入して保険料を払えば将来受け取る自分名義の年金を増やすことができる」「旦那さんと離婚したら本来は自分で国民健康保険に加入しなければならないけれど、勤務先の病院の健康保険に入ることで保険料は病院に半額負担してもらってこれまでと同じように健康保険が使える」と教えていただき、目からウロコでした。
私はまだまだ恵まれている方「旦那さんから慰謝料を取れなくても相手の女性に請求できる」と助言してくれたのは、弁護士の会田さんです。そして実際に、相手の女性が裕福な会社経営者の娘であることを突き止め、向こうの弁護士との交渉で300万円の慰謝料の支払いに同意させました。会田さんは示談書までしっかり取りまとめてくれて、さすがプロの弁護士さんだと感激しました。
一方、社会保険労務士の資格も持つ小原さんが私に提案したのは「年金分割」です。これも、私が全く知らないことでした。
簡単に言うなら、夫と私が結婚していた期間中に夫が払った保険料分に相当する厚生年金については、将来受け取りが発生した時に分割して私が自分の年金にできるという制度です。年金分割には夫婦の合意を必要とする「合意分割」と必要としない「3号分割」があるのですが、私は夫に扶養されていた公的年金の3号被保険者だったため後者の「3号分割」で夫の同意なしで請求できるのだそうです。
ただし、請求できるのは離婚の翌日から2年間という期限があるので、小原さんに手伝っていただいてすぐに手続きすることに決めました。
小原さんに試算してもらったところ、これから厚生年金に加入して65歳まで働き、さらに夫から年金分割を受ければ、将来は月額10万円以上の年金が確保できることが分かりました。
目先もそうですが、子供たちが巣立った後のことも不安だったので、とりあえず毎月年金が10万円もらえそうだと知ってほっとしました。
夫に離婚を言い渡された日からわずか半年ほどで、ここまでいろいろ手を打ってもらえた私は本当に幸せ者です。
病院への就職も、夫の不倫相手への慰謝料の請求も、年金分割も、私一人だったら、何一つできなかったどころか、思いつきもしませんでした。
この年になっての離婚は大変ではありましたが、このタイミングで小原さん、中本さん、会田さんのような力強い専門家の方々と巡り会えたのは本当に運が良かったと思います。小原さんグループの方々、そして、小原さんを紹介してくれたパート仲間にはいくら感謝してもしきれません。
今はまだ自分の身辺整理で手一杯の状態ですが、少し落ち着いて今の暮らしが軌道に乗ってきたら、何らかの形で小原さんのグループのお手伝いをさせていただけたらと思うようになりました。“士業”の資格がないどころか世間知らずで恥ずかしいことばかりの私ですが、相談に見えた方が小原さんたちと話をしている間に子供の相手をしたり、パソコンで簡単な書類を作成したりするくらいのことならできそうです。
ここに来てしみじみ感じたのは、最初に小原さんに言われたように私などまだ「恵まれている」方だということです。
満足な食事もとれずガリガリの姿で相談に来た母子もいますし、巨額の借金を背負わされて反社絡みの怪しい店で働かされているシングルマザーもいます。
そうした理不尽な立場に甘んじている女性たちのためにも、小原さんには頑張ってサポートを続け、その輪をもっと広げていっていただきたいと思います。
※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。
森田 聡子/金融ライター/編集者
日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。
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