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「姉はかっこよくて性格もいい旦那をゲットしたのに」相続で噴出…地味な妹が募らせた姉へのコンプレックス

Finasee / 2024年12月27日 11時0分

「姉はかっこよくて性格もいい旦那をゲットしたのに」相続で噴出…地味な妹が募らせた姉へのコンプレックス

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

後藤理奈さん(35歳・仮名)は昨年11月に愛する父を亡くしました。その遺産相続の話し合いの席で、予期せぬ事態が襲います。

普段は控えめな妹の香奈さんが「姉と遺産を二等分するのは納得ができない」と異を唱えたのです。香奈さんは私立一貫校や海外の大学院で学んだ理奈さんの教育費を引き合いに出し、「姉の特別受益の分、自分には多くの遺産を受け取る権利があるはず」と主張します。

お父様は一族が経営する会社の社長でもあり、一家はこれまでも恵まれた生活を送ってきました。そんな中飛び出した今さら感のある主張に、唖然とする理奈さん。結果的に特別受益は認められませんでしたが、今度は追い打ちをかけるように二人のお母様から、香奈さんが一方的に募らせていたコンプレックスについて聞かされ戸惑います。

●前編:【「姉と二等分は納得できない」真面目で地味な妹が父の相続で豹変し起こった”爆弾級”のトラブル】

姉との遺産の折半には賛同しかねる

母方の祖父が高度成長期に立ち上げた会社を受け継いだ2代目社長の父が、昨年11月に出張先で急死しました。残された私たち家族は悲しむ間もなく、父の葬儀の準備や会社の引き継ぎなどに追われてきました。

それがようやく一段落した春先、父が残した財産の相続の話し合いが始まったその席で、普段は地味で控え目な妹から、とんでもない爆弾が投下されました。

担当の税理士さんが提示したのは、父名義の財産からは自宅不動産も含めて半分を母が承継し、残りの半分を私たち姉妹が二等分するというものでした。私も母もそれに異存はなく、そのまま遺産分割協議書の作成に進むと思ったタイミングで妹がいきなり異を唱えました。

母が父の遺産の半分を受け取るのはいい。しかし、残りを私と折半することには賛同しかねる。それは、私が父の生前に多額の特別受益を得ていたからだというのです。

リストに記載された1億近い金額

私が妹より多く受け取っていた分は“遺産の先取り”としてしっかりカウントすべきだと言います。そして準備周到にも、私の特別受益と推察される項目と、その想定金額まで記載したリストを持ち出したのでした。

そこには、私立のお嬢様学校の費用(小学校から大学まで、公立だった自分との差額)1500万円、お受験の塾・バレエ・ピアノ・絵画などのレッスンにかかった費用2000万円、アメリカの大学の大学院への留学費用(2年間)2000万円、結婚式費用500万円、新居購入費用2000万円……など、合計1億円近い金額が記されていました。

これには目が点になりました。何を今さらという感じです。

そもそも、私が私立に入学したのは母に「受けてみたら?」と言われたからです。特に私が通った学校は制服がかわいい名門校として有名で、亡くなった祖母や母が私にその制服を着せたがったのがきっかけでした。

しかし、祖母も母も妹には私の母校の受験を勧めることはありませんでした。地味で引っ込み思案な妹だって、きらきらした名家の子女が集まるような学校には通いたくなかったのではないかと思います。

習い事をたくさんしていたのは確かに私の希望もありました。

けれど、多方面に好奇心旺盛な私を「いろいろチャレンジできるのは今だけだから、やりたいことをやって理奈の才能が発揮できる対象を見つけていけばいい」と励まし、背中を押してくれたのは両親でした。

妹だって「ピアノを弾いてみたい!」「絵が習いたい!」と言えばいくらでも習わせてもらえたはずですが、妹自身が家で絵本を読んだり、ゲームをしたりしていることを好んでいたように私には見えました。

妹の言いがかりは却下されたが

妹より私の方が親の援助をより多く受けていたのは確かで、世間一般の教育費の相場よりは高いかもしれません。でも、両親が承知の上で払ってくれたわけですから、父が亡くなった今、その分を清算しないとおかしいというのはあまりに身勝手な物言いに思えました。

しかし、戸惑う母と私を前に、税理士さんは意外なことを言い出しました。

「おっしゃる通り特別受益という概念があり、これまでの判例を見ると学費が特別受益と認められたケースもあります。ただ、このリストが全て特別受益に該当するかは精査してみないと何とも言えません。リストは一旦預からせていただけませんか?」

思わず抗議しそうになった私を、母が目で制しました。そして、遺産分割協議は仕切り直しということになったのです。

数日後、母は妹を自宅に呼び出し、二人でいろいろ話をしたようでした。

母と税理士さんの事務所に伺ったのは、それから半月ほど後のことでした。

その際に税理士さんから、特別受益は「生計の資本としての贈与(独立して生計を営む相続人への多額の贈与)であり、子供の教育費が該当するのは極めて稀なケース」だと説明されました。さらに、私の場合、住宅資金も半分は母の貯蓄から提供されていて、父からの特別受益と認定されるのはせいぜい1000万円といったところだろうとのことでした。

妹の胸糞悪い言いがかりが却下されてほっと胸をなで下ろしたところ、帰り道に立ち寄ったカフェで今度は母がとんでもないことを言い出しました。

今さら一方的に言われても

「香奈はパパのお金がほしいわけじゃないの。だから、香奈のことを悪く思わないで。二人きりのきょうだいなんだから、これで縁を切るなんてことになってほしくない」

母が切々と語ったのは、妹が私に対して強いコンプレックスを抱いていたという話でした。「子供の頃から理奈は蝶よ花よとかわいがられて育って、しかも、成績も良かったし、習い事をさせても何でも器用にこなしていたでしょ。香奈はお姉ちゃんみたいにできない自分が嫌でたまらなくて、内に引きこもったそうよ」

「家族や友達がみんな理奈の方ばかり向いている中で、幼い子供は自分を差別しないから子供が好きになったと言っていたわ」

「大人になってようやく自分の道を歩み始めたと思っていたけれど、理奈が雄吾さんと結婚したのがショックだったみたい。『お姉ちゃんはあんなにかっこよくて性格もいい旦那さんをゲットしたのに、自分は彼氏もいないし、一生独身かもしれない』ってまた鬱っぽくなったって」

そんな妹の一方的な思いを伝えられても、共感も納得もできるわけがありません。「まぁ、私の育て方にも問題があったのよね。若い頃は理奈のこと、自分のアクセサリーみたいに思ってたから」と悪気なく話す母にも向かっ腹が立ちました。

家族に不信感を覚え、母から「これだけはお願い」と頼まれた会社の株式だけ受け取ることにして、他の金融資産は私の分も全て妹に渡しました。

相続で揉めるというのがどういうことか、今回のことで身をもって経験した感じです。相続とは、親族に対して鬱積した負のマグマが一気に噴き出すトリガーなのかもしれません。

遺産分割協議書にサインをした日以降、妹と会うことはもちろん、一切連絡も取っていません。母に「生まれ変わって新しい人生を始める」と話したという妹は、父の一周忌にも姿を見せませんでした。

恐らくこの先も、母に何かあった時くらいしか会うことはないでしょう。本音を言えば、二度と顔も見たくないし、名前を呼ぶのも嫌なくらいです。

※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。

森田 聡子/金融ライター/編集者

日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。

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