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2025年は勝ち組・負け組が鮮明に…プロに聞く「投資妙味」のあるセクター、銘柄選別の視点とは

Finasee / 2024年12月26日 11時0分

2025年は勝ち組・負け組が鮮明に…プロに聞く「投資妙味」のあるセクター、銘柄選別の視点とは

Finasee(フィナシー)

2025年のマーケット展望――債券投資の好環境が継続へ

――2025年の債券市場はどうなるのでしょうか。

債券市場全般は、トータルリターンの観点から好ましい環境になると考えています。グローバル経済の成長率は安定する中、インフレは緩やかに下落し、マクロ経済環境は良好です。日本を除く世界各国は金融緩和を進めており、ファンダメンタルズは一部の債券市場にとってポジティブであることは間違いありません。

個別では、クレジットはバリュエーションが割高な状態ですので、現状からの上昇余地は小さそうですが、魅力的なキャリーのクッションもあり、年の前半はサポートされるとみています。ポートフォリオとしては、バリュエーションを考慮しつつ、ディフェンシブなポジションを組んでいくことが必要でしょう。

国債は、中央銀行が金融緩和を進める余地のある国が選好されるでしょう。欧州は、欧州中央銀行(ECB)が積極的に緩和を続ける可能性が高く、ポジティブと考えられます。米国では10年債より年限の短いゾーンの国債は選好されるでしょうが、トランプ政権のかじ取り次第では不確実性が高まる可能性もあり、積極的にリスクを取ることは今のところ考えていません。他にも投資対象となる国はあり、年限ごとに選択をしていくべきでしょう。

例えば、オーストラリアの一部の国債や日本国債、そして、一部の新興国の国債は好ましい状況だと考えています。多様なグローバル国債が含まれるポートフォリオは魅力ある戦略になり得ると考えています。

MFS債券運用部門共同最高投資責任者(Co-CIO)ピラー・ゴメス・ブラボー氏 勝ち組、負け組が鮮明となる債券市場 銘柄選別を厳格に

――クレジットは全般的に割高とのことですが、例えば米国で検討できそうなセクター、あるいは逆にアンダーウェイトすべきセクターなど、細かくみるとどうでしょうか。

投資適格社債で選好されるのは、インフレに耐性のある輸送やインフラといったセクターでしょう。インフラは、契約によって利用料金に基づくキャッシュフローがインフレにリンクする面があります。また、国の政策に支えられる資本財関連も魅力的だと思います。金融セクターも悪くはありませんが、スプレッドは以前ほどの魅力には乏しいといえます。

一方、避けるべきは化学や自動車といったセクターです。バリュエーションの水準に加えて、自動車は、貿易紛争などの不確実性が高まるリスクがあることも考慮しています。

エネルギーや鉱業の一部銘柄には選好できるものがあります。中国の景気刺激策や米国のエネルギー政策の恩恵があると想定されるためです。

またユーティリティセクターには、気候変動関連を含めたグリーン投資の増加、さらに、AIの拡大を担うデータセンターが増設されることによって、電力需要が高まるといったファンダメンタルズの追い風があります。もともとディフェンシブなセクターであり、他の高クオリティ銘柄に比べても相対的なバリュエーションは魅力的です。

――ハイイールド社債についてはどうでしょうか。

ハイイールド社債の中では、債務返済までのキャッシュフローが見通しやすいデュレーションが短期の銘柄に取引が集中し、市場のポジショニングが混みあっている状態です。ファンダメンタルズが良好で利回りが相対的に魅力的であることに加え、トランプ氏の政策によって国内産業が盛り上がることでメリットを受けると考えている向きもあるのでしょう。

たしかに混みあって過熱感はありますが、しっかりと銘柄分析を行い、厳格に投資をすれば超過収益を獲得する機会はきっとあると見ています。おそらく戦略的なターゲットよりはアロケーションは下がるでしょうが、ディフェンシブな企業やクレジット面での改善余地がある銘柄に選別的に投資することが有効であると考えます。

なお、ハイイールドにとってポジティブな要因もあります。それはプライベートクレジット市場の拡大です。プライベートクレジット市場はハイイールドの企業にとって借り換えの新たな選択肢となりますので、特に信用力が低いような企業にとってはパブリックのハイイールドでの資金調達には難があったとしても、プライベートクレジットでの資金調達で一息つくことができ、生き残りの可能性が高まります。同じ債券の中でも勝ち組、負け組がはっきりするでしょう。いずれにせよ今後、アクティブ運用がますます重要になると考えられます。

――トランプ政権では、グリーン投資には逆風が吹く可能性が高いとみられていますが。

たしかにトランプ政権は、脱炭素社会への移行という側面ではベストな政権ではないかもしれません。しかし、世界的な潮流が巻き戻されることはないと考えています。グリーン投資のモメンタムが減速することはあるかもしれませんが、停止や反転はないでしょう。

米国では、連邦政府ではなくて州政府が主体となる規制が多く、脱炭素を強力に推進している州も相当あります。さらに、民間レベルにおいても、企業の取締役会はグリーン化の必要性を十分理解しています。大統領が誰であろうと、企業の長期的な価値創造のため、そして株主価値を守る戦略は変わらないでしょう。

債券運用で超過収益を得るためにアクティブ・マネジャーに求められるもの

――シビアな銘柄選別が求められるという環境はアクティブ・マネジャーにとっては腕の見せどころです。超過収益の獲得に成功するにはどんなことが求められるのでしょうか。

まずは市場のノイズとシグナルを見分け、長期的な価値に焦点を当てることが大前提です。株式投資とは違い、債券投資のアップサイドは限定的ですが、ダウンサイドは大きくなる可能性があるのでリサーチ・プラットフォームの質が問われます。その意味でリサーチアナリストはポートフォリオのキャピタルロスへの最初の防波堤となるため、非常に高いクオリティのリサーチが求められます。

そして、リサーチで上がってきたアイデアをポートフォリオに落とし込む能力も必要になります。債券市場では流動性が非常に重要で、早いタイミングで参加するほどリスクを柔軟に積み上げることができます。そのためには、リサーチアナリストとポートフォリオマネジャーの協力体制がカギを握ります。緊密な協力体制の構築により、市場の変化に合わせた迅速なポジション調整が可能となり、その結果、長期的に一貫したリターンの実現につながるのです。

以上をまとめると、アクティブ・マネジャーに必須の条件は、「強いリサーチ・プラットフォーム」「長期的な投資目線を持ったフレキシブルな運用体制」「強力なリスク管理のアプローチ」という3点に集約できるでしょうか。グローバル債券市場に投資するのは非常に複雑な作業です。しっかりとストレステストを行い、リスクを適切に取りながら長期的にリターンを積み上げられるようにしなければなりません。

国内投資家は為替のヘッジコストにいかに対処すべきか

――日本の投資家にとって外債投資でもっとも厄介な問題が、為替リスクとそのヘッジに伴うコストです。ここ数年、日米の金利差の拡大によってヘッジコストの拡大が続いています。どう対処すべきでしょうか。

円ベースの投資家にとって、25年後半にかけてグローバル債券市場は魅力的だと考えられます。たしかに現在、ヘッジコストの負担は重いのですが、日本だけが利上げを進めていくことでヘッジコストは低下し、その一方、グローバル債券市場は金利が低下していくのでトータルリターンでみれば投資妙味は強くなるでしょう。ゆえに、機関投資家だけでなく個人投資家の方々も米国をはじめとするグローバル債券投資を前向きに検討できるのではないでしょうか。

また現状でも、債券の組み合わせ次第で魅力的な利回り実現できると考えられます。例えば少しハイイールドを組み入れる、あるいは今後の利下げを見込めるオーストラリアやヨーロッパの債券を組み入れるといった工夫で、現時点のコストは高いものの良好なリターンを確保できるのではないでしょうか。今後は金融政策の正常化も進み、金利差を考えれば、分散された債券ポートフォリオで良好な利回りが得られると期待できるでしょう。

クレジット市場に関しても、グローバルの景気が堅調という点はファンダメンタルズ的に追い風です。これらをうまく組み合わせることで、ヘッジコストを相殺するだけのリターンを獲得できると思われますし、下半期にはヘッジコストもさらに低下し、良い状況が期待できると考えられます。

Finasee編集部

「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。

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