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義実家で餅を喉に詰まらせた義父、もしもの時に家族が「一番取ってはいけない行動」

Finasee / 2024年12月26日 18時0分

義実家で餅を喉に詰まらせた義父、もしもの時に家族が「一番取ってはいけない行動」

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

博美(43歳)は、年末に家族で義実家へ帰省したが気分が重かった。きちょうめんで何事もきっちりするのが性分の博美は、田舎特有のわいざつな義実家の雰囲気が苦手だった。

さらに義母はお小遣いを渡すなどして、中学生の息子を必要以上に甘やかす。料理は土が残ったままの野菜を洗いもせずに使っている。それとなく指摘すると、「この土地の土を汚い呼ばわりするなんて!」と義母に逆ギレされる。悪い人ではないが、とにかく気が合わないのが悩みの種だった。

夫に愚痴を言うが、どっちつかずの態度でなだめるだけで、そのまま年を越すことになった。

●前編:義実家で餅を喉に詰まらせた義父、もしもの時に家族が「一番取ってはいけない行動」

義母の仰天行動

まるでわざとやっているんじゃないかと思うほど、愛子の仰天行動は続き、博美はひたすら家に帰りたいという思いを募らせていった。

こたつに入りながら大きなおならをしてはげらげら笑い、年が明けるころには独りいびきをかいている。日が昇ってから向かった初詣はわれ先にと甘酒をもらいに走りだし、おさい銭ではよく見えないねとポケットから取り出した小銭をすべてさい銭箱に放り投げた。

もうこれ以上下がないほどにテンションは下がっていたが、あと一晩だけ寝てしまえば、翌朝にはもう義実家をたつことができると、ゴールがようやく見えたことで博美はほんの少しだけ元気を取り戻しつつあった。

元旦の夜は例年通り、お雑煮を作る。もちろん博美も手伝っている。居間からは正月特番のめでたい笑い声が聞こえていた。

無言で調理をしているとき、市販の丸餅を準備する愛子に博美は声をかけた。

「……ちょっとお餅が大きくないですか?」

毎年使っているお餅よりも一回りサイズが大きかった。

「それっていつものやつと違いますよね?」

「そうね。こっちのほうが安かったし、大きいほうが良いに決まってるから」

「少しだけカットしたほうが良くないですか?そっちのほうが食べやすいですし」

博美の提案に愛子は信じられないと首を横に振る。

「何でそんなことをするのさ。あのね、お餅が丸いのは縁起物だからなんだよ。1年の始まりに食べるものなんだから、そういうのを大事にしないとダメじゃない」

「いやでも……」

博美が言い返そうとすると、愛子は鋭い視線を向けてくる。

「都会育ちのあなたには分からないかもしれないけどね、私たちはこういう風習を大事にして生きてんのよ」

そういうと愛子が餅をレンジで温め始めてしまったので、それ以上博美は言い返せず、うなずくしかなかった。

餅を喉に詰まらせた義父

正月特番がにぎやかに響く。博美は黙々と大きな餅を口に運ぶ。

「ちょっとお父さん!!」

愛子の鋭い声が響いて、一同の視線が俊雄へと集まった。苦しそうな表情をしている俊雄の手にはお雑煮の入ったおわんが握られている。

嫌な予感がして、博美は声をかけようとした。すると、俊雄は何度も空いた方の手で胸をたたき出す。その顔には焦りの色が見えた。

「お義父(とう)さん、大丈夫ですか⁉」

博美が立ち上がると、俊雄の手からおわんが転がり落ちる。ふぞろいにカットされた野菜が転がり、床のカーペットが汁でぬれた。

そして苦しそうに顔を赤くしていた。

「喉にお餅を詰まらせたみたい」

博美が言うや、愛子がリビングの端においてあった掃除機を持ってくる。

「隼佑、お父さんの口を開けてちょうだい!」

「は? え? ちょっと、何をするつもりですか?」

「この掃除機でお父さんの喉の餅を吸い込むのよ!」

そう言いながら愛子はノズルをこちらに向けてきた。

「バカなことを言わないで! そんな雑菌まみれのものを口なんかに入れたらダメに決まってるでしょ!」

博美は思わず声を荒らげた。もはやこれは、ガサツとかそういうレベルじゃない。

「隼佑は病院に連絡!」

「ひ、博美さん、あんた何をする気だい⁉」

「お義母(かあ)さんは黙ってて!!」

そう言って博美は俊雄の背後から胸へ、脇の下から腕を回す。手のひらの付け根のあたりで肩甲骨の間を強くたたいた。

どん、どん、どん。

「お義父(とう)さん、がんばって」

そう言いながら博美は俊雄の背中を5回たたいた。

すると俊雄の口から丸い餅が吐き出された。そして俊雄は止まっていた呼吸を慌てて再開し、床にぐったりと寝ころんだ。

「慌てないでください。ゆっくりとで大丈夫ですからね」

博美は俊雄の背中を擦り続ける。やがて落ち着いた俊雄が正座に居直ってから深々と頭を下げた。

「あ、ありがとうね、博美さん……」

この一連の光景を愛子は目を見開いてぼうぜんとしながら見つめていた。

事なきを得てからやや時間をおいて、サイレンを鳴らした救急車が到着した。博美たちはやってきた救急隊員にひとまず解決したと謝罪をしながら、俊雄が無事なことを伝えた。

「へえ、あなたは背部叩打(こうだ)法をご存じだったんですね?」

救急隊員の言葉に愛子が首をかしげる。

「な、何ですかそれは?」

「異物が喉に詰まったときの適切な処置の名称ですよ。よくご存じでしたね?」

「自治体の避難訓練で消防団の方なんかに教えてもらえるんですよ」

博美が説明すると救急隊員は満足した顔で頭を下げた。

「適切な処置、ありがとうございました。ではわれわれはこれで失礼します」

そうして救急隊員たちはすぐに帰ってしまった。

話を終えて居間に戻ろうとすると、愛子が声をかけてきた。

「……博美さん、本当にありがとう。私、慌てちゃってとんでもないことをしようとしちゃってたわね」

掃除機のことだとすぐに気付く。

「いいえ、別にいいんですよ。私がたまたまやり方を知ってただけですので。もし何も知らなかったらお義母(かあ)さんと同じことをしていたかもしれませんから」

「……お餅を切ろうって言ってくれたのも、詰まらせないようにするためだったんでしょう?」

「小さいほうが食べやすいんじゃないかなと思ってたのは事実ですけど、まさか詰まらせるなんて私もびっくりでした」

愛子は申し訳なさそうに目を伏せる。

「ごめんなさい。そうやって博美さんはいつもいろいろと気遣ってくれてたのよね……。細かくて神経質で、ただのやなやつだと思ってたわ」

「え、そんなこと思ってたんですか?」

「あらやだ。ごめんなさい。つい口が……」

「大丈夫です。私も、お義母(かあ)さんのことガサツなモンスターだと思ってたので」

「な……」

2人は顔を見合わせて笑った。

その様子を、隼佑と大貴は不思議そうに眺めていた。

複数の事例から着想を得たフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

梅田 衛基/ライター/編集者

株式会社STSデジタル所属の編集者・ライター。マネー、グルメ、ファッション、ライフスタイルなど、ジャンルを問わない取材記事の執筆、小説編集などに従事している。

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