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今だからこそ知りたい確定拠出年金(DC)の使い分け 企業型DCとiDeCoの併用はメリット? デメリット?

Finasee / 2024年12月26日 12時0分

今だからこそ知りたい確定拠出年金(DC)の使い分け 企業型DCとiDeCoの併用はメリット? デメリット?

Finasee(フィナシー)

企業型DCと個人型DC(iDeCo)の併用は基本的に可能ですが、併用する人はまだ多くはありません。企業年金制度ありのiDeCo加入者は全体の15%程度にとどまっています。

そもそもDC活用のメリットは何?

NISA(少額投資非課税制度)のメリットである運用益非課税は、確定拠出年金(DC)でも同様の効果があります。

NISAにはないDCのメリットは、DC掛金が全額所得控除の対象となる点です。ゆえにDCの活用といえば、まずは「掛金拠出」に注目することとなります。

DCに拠出した金額は所得税・住民税がかからず、老後資産形成のために積み立てていくことができます。具体的な数字で確認してみましょう。

DC掛金拠出額:毎月1万円

税率:所得税率5%、住民税率10%

  →1年間で1.8万円の節税効果

上記の試算は最も低い所得税率5%で行っています。所得が上がっていけば所得税率も上がるため、より節税効果も大きくなります。また、拠出する金額が大きければ、その分節税額も大きくなります。生命保険料控除のように限度額がない点も魅力といえるでしょう。

ただし、老後資産形成のための制度なので60歳までは引き出せないという留意点はあります。そして大事なポイントは、この節税効果が企業型DCの加入者掛金(マッチング)拠出でも、iDeCoの掛金拠出でも同じという点です。

企業型DC加入者がiDeCoを活用するメリット

iDeCoはここ数年で浸透しつつある一方、企業型DCは「わからない」という人が多く、両者を比較検討されることは一般的ではないようです。企業型DCが企業の制度であるため掛金の設定や資格喪失年齢が企業によって異なり、一概に説明できないのも「わからない」要因かと思われます。

企業型DC加入者がiDeCoを活用するためには、まずご自身の企業型DCの概要を確認する必要があります。

企業型DCで確認すべき事項
・選択肢(加入自体が選択制、掛金が選択制 等)
・事業主掛金額(可能であれば、勤続年数比例、給与比例等の計算方法)
・マッチング拠出(加入者掛金拠出)の有無
・資格喪失年齢(60歳か60歳超か)

基本的な考え方
企業型DCで拠出限度額5.5万円まで活用できるのであれば、まず企業型DCを活用しましょう。企業型DCで5.5万円まで拠出していると、iDeCoは併用できません。

ただ、現実には、企業型DCの平均掛金額は1.7万円です(※1)。これはマッチング拠出を実施している人の加入者掛金も含んだ数字のため、多くのDC加入者は拠出限度額5.5万円の半分も使っていない状況です。

DCに拠出できる金額 
ご自身でDCに拠出できる金額、つまり60歳まで使えなくても困らない金額を考えます。資金に余裕がない場合は、最低掛金が5,000円のiDeCoよりも企業型DCのマッチング拠出のほうが少額から拠出できるなどの使い勝手がよいようです。

事業主掛金額や他制度掛金相当額(※2)によっても計算方法が異なるため、例で考えてみましょう。

【掛金額別】企業型DCとiDeCoの活用例

例1

〈前提〉事業主掛金額:7,000円、他制度掛金相当額:1.2万円

〈前提に対応した拠出上限〉マッチング拠出:7,000円
             iDeCo:2万円

〈判定〉ご自身でDCに拠出したい金額が7,000円未満であれば、企業型DCのマッチング拠出。7,000円以上拠出したい場合はiDeCoを選択しましょう。2万円まで拠出できます。

例2

〈前提〉事業主掛金額:2万円、他制度掛金相当額:なし

〈前提に対応した拠出上限〉マッチング拠出:2万円
             iDeCo:2万円

〈判定〉拠出上限額が同じなので、手数料が発生しないマッチング拠出の活用が第一です。ただ、利用したい運用商品が企業型DCにない場合などはiDeCoも選択肢の一つとなります。

例3

〈前提〉事業主掛金額:3万円、他制度掛金相当額:1万円(経過措置を活用)

〈前提に対応した拠出上限〉マッチング拠出:2.5万円
             iDeCo:1.5万円

〈判定〉マッチング拠出のほうが多く拠出できるためiDeCo活用よりもマッチング拠出を選ぶのがよいでしょう。 

何歳までDCを活用したいか

DCの資格喪失年齢は、法施行時は60歳と決められていました。その後、企業型DCでは事業主の判断により資格喪失年齢の引き上げが可能になりました。

iDeCoでは2022年5月から資格喪失年齢が65歳に引き上げられています。なおiDeCoについては、70歳まで引き上げることも検討されています。

仮に企業型DCの資格喪失年齢が60歳で、かつ60歳以降も厚生年金被保険者として働く場合は、60歳以降はiDeCo加入者になることも積極的に検討するとよいでしょう。

※1「確定拠出年金統計資料2024年3月末」運営管理機関連絡協議会
※2 他制度掛金相当額とは、確定給付型の制度(DBや厚生年金基金、共済制度)の事業主負担分を毎月の掛金に置き換えた金額

企業型DC加入者がiDeCoを活用するデメリット

メリットがある反面、デメリットもあります。なかでも、企業型と個人型でDC口座が二つになるデメリットでは手数料と手間の二つを勘案する必要があります。

手数料(下記は野村のiDeCoの場合)

iDeCoの運営管理手数料は本人負担ですが、企業型DC加入者は事業主負担が一般的です。併用することで発生するiDeCoの手数料は下記のとおりです。

①    iDeCo開始時 2,829円

②    加入者の手数料 105円(掛金拠出する月に発生)

③    事務委託先の手数料 66円(毎月)

iDeCo掛金を拠出する月は171円(②+③)の手数料が発生します(※)。この金額を税制優遇で補うために必要な掛金額は、所得税率5%であれば月額1,140円となります。企業型DCのマッチング拠出と比較して、iDeCoのほうが月1,140円以上多く出せるのであれば、税優遇効果で手数料をカバーできます。

なお、①のiDeCo開始時2,829円の手数料は口座を開設するときに発生します。そのため、以前、iDeCoの口座を持っていたが企業型DCに移換してしまった、というケースでは、再度2,829円が発生します。

離転職が多い方は、企業型DCの設定次第で併用したほうがいいかどうかが変わるので、iDeCo口座を運用指図者として残しておいてもいいでしょう。その場合の手数料は、③の月66円となります。

管理の手間 

二つのDC口座があることで、手間が増えます。たとえば運用状況の確認は、複数のWEBサイトや残高報告書で確認することになります。

これについては、企業型DCとiDeCoの残高を一つのWEBサイトで表示できる金融機関もあるので、企業型DCの運営管理機関のiDeCoを活用すると軽減することもできます。

※お勤め先にDB制度がある場合、iDeCoは毎月拠出のみ可能

老後資金としていくら必要か

DCは老後資金を準備するための制度です。とくに引退年齢が近づいてきている年代の方は、老後資金が十分かどうかも判断ポイントになります。若い年代では現実味のある数字にはならないので、ご自身の余裕資金からDC制度の活用を考えましょう。

老後資金を考えるうえでは、公的年金でいくら受け取れるのかが重要です。2022年4月からスタートした厚生労働省の公的年金シミュレーターは、「ねんきん定期便」に記載の二次元コードを読み取ることで、将来の年金受給見込額を確認できます。

現在の老後生活費は夫婦二人世帯の月平均が24万円程度です※。公的年金では賄いきれないと思う金額を計算しましょう。なお、公的年金シミュレーターは今後、iDeCoの試算機能を追加することも検討されています。

※出所:「高齢者の生活実態」(厚生労働省)
*拠出限度額にかかる部分はすべて月額

津田 弘美/野村證券株式会社 確定拠出年金部

社会保険の専門出版社において、企業年金分野の編集記者として厚生労働省記者クラブ等に所属。厚生年金基金の隆盛期から企業年金2法の成立等を取材。その後、野村年金サポート&サービス(現在は野村證券に合併)に入社。確定拠出年金の運営管理業務に10年以上にわたり従事し、投資教育の企画立案、事業主サポート等を担当。業務の傍ら、横浜国立大学大学院において、理論と実務の両面から企業年金制度についての考察を行う。横浜国立大学大学院国際社会科学研究科博士課程後期課程修了(経営学博士)。

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