「S&P500」と「NYダウ」どう違うの? 第2次トランプ政権下ではどちらのファンドが有利?
Finasee / 2024年12月23日 7時30分
Finasee(フィナシー)
三井住友銀行の投信売れ筋ランキングの2024年11月のトップは5カ月連続で「三井住友・225オープン」、第2位には前月同様に「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)<世界のベスト>」が入った。第3位には「三井住友・NYダウ・ジョーンズ指数オープン(為替ヘッジなし)」が浮上し、前月第3位の「SMBC・DCインデックスファンド(S&P500)」は第4位に下がった。そして、第8位以下には前月トップ10圏外だった3ファンドがランクインした。中でも第8位にランクインした「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」は6月に第7位に入って以来5カ月ぶりのトップ10入りになった。
◆「S&P500」より「NYダウ」が選ばれる理由は?10月は「SMBC円資産ファンド」や「三井住友・ワールド・パッケージ・オープン」などのバランスファンドの順位が上がったが、11月は「三井住友・NYダウ・ジョーンズ指数オープン(為替ヘッジなし)」、「エス・ビー・日本株オープン225」、「JPモルガン・アメリカ成長株ファンド(為替ヘッジなし、年1回決算型)<アメリカの星>」などの株式ファンドが順位を上げている。「SMBC円資産ファンド」は順位を1つ落としただけだが、「三井住友・ワールド・パッケージ・オープン」はトップ10から落ちてしまった。
また、同じ米国株式インデックスでも「S&P500」に代わって「NYダウ」が上位になった。この2つのインデックスは、ともに史上最高値を更新しているが、株価指数としての性格はかなり異なる。「S&P500」は、その名前の通り約500銘柄で構成され、「時価総額加重平均」で組み入れ比率が決まるため、時価総額が大きな企業の影響力が強い。時価総額ベースでは米国株式市場の約80%をカバーするため、米国市場全体を象徴しているような指数といえる。
これに対して「NYダウ」は30銘柄で構成され、その平均株価で指数を作るために、値がさ株(株価の水準が高い株式)の価格変動の影響を大きく受ける。しかも、30銘柄を選ぶにあたっては「米国を代表する」という視点で銘柄委員会が会議を開催して決定しており、大きければ指数に入るというものではない。このため、「S&P500」の上位銘柄はハイテク大型株で占められているが、「NYダウ」は必ずしもハイテク株比率が高くない。
実際に11月末時点の「NYダウ」の業種別組み入れ比率は、「金融サービス」が16.4%、「ソフトウエア・サービス」13.1%、「資本財」12.3%、「一般消費財・サービス流通・小売り」が8.5%などとなっている。「S&P500」では「ソフトウエア・サービス」が11.1%、「半導体・半導体製造装置」が10.0%、「テクノロジー・ハードウエア・機器」が8.6%、「金融サービス」が8.0%などで、指数組み入れ銘柄の顔ぶれは大きく異なる。米大型ハイテク株の割高が指摘されているため、ハイテク株比率が低い「NYダウ」を選ぶ投資家が増えたとも考えられる。また、トランプ新政権のもとで「アメリカ・ファースト」の政策が推進されるとみられることから、「資本財」や「一般消費財・サービス流通・小売り」など内需関連の浮上に期待が高まっているとも考えられる。
◆「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」人気化の背景は?「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」は9月17日に信託報酬率の引き下げを実施している。投資先である「ピクテ(CH)プレシャス・メタル・ファンド‐フィジカル・ゴールド」の報酬率が引き下げられたことに伴う変更で、従来は実質的な負担が最大年率0.879%(税込み)だったものが、最大年率0.789%(同)になった。金(ゴールド)に投資するファンドや、金の価格変動に連動する運用成績をめざすファンドには信託報酬が年0.2%を下回るものもあるため、この信託報酬率の引き下げが人気化の直接の要因ではないだろう。
金の価格推移そのものは、10月30日にNY金先物価格が2800ドルの史上最高値をつけて以来、高値もみ合いが続いている。11月は安値2570ドルをつけて月末は2681ドルという結果だった。金価格の推移だけでは、11月にゴールド・ファンドが人気化する理由にはならないだろう。むしろ、将来的に「ゴールド・ファンドに資金が大量に流れ込む事態が起きるのではないか?」という考えによって人気化したと考える方が自然だ。すなわち、現在の投資人気を独占している米国株式が何らかの理由で崩れ、その受け皿としてゴールドが活躍する可能性が高いという見方だ。
11月5日に米大統領選の投票が行われ、6日にはトランプ氏の勝利が確実になった。この第2次トランプ政権の発足というニュースが、米国株式市場の先行きに不透明感を与えている部分がある。第1次トランプ政権で特徴的だった「脱グローバル化」や「減税や財政出動による財政の圧迫」という「アメリカ・ファースト」の政策は、トランプ大統領誕生が確定する前までにあった「米国政策金利の低下シナリオ」をひっくり返す可能性がある。現在の米国株高が金利低下の見通しを背景として続いていることを考えれば、「金利が下がらない」という事態になれば株価上昇の勢いを失くすことにつながりかねない。「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」のようなゴールド・ファンドの人気が一時的なものか持続するのか、今後の展開を注視したい。
執筆/ライター・記者 徳永 浩
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。
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