【iDeCo】掛金限度額の引き上げがあるかも…!? あらためて注目したい“税負担軽減力”のスゴさ
Finasee / 2024年12月19日 17時50分
Finasee(フィナシー)
ご存じの方も多いと思いますが、2024年12月から個人向け確定拠出年金(iDeCo)の拠出限度額が引き上げられました。
見直しが行われたのは、公務員を含む第2号被保険者の一部です。したがって、第1号被保険者である自営業者が加入できるiDeCoの拠出限度額は変更されず、従来通り国民年金基金等との合算で月額6万8000円になります。
今回、iDeCoの拠出限度額の上限が引き上げられた第2号被保険者とは、厚生年金保険の適用事務所に就職した人、あるいは公務員になった人を指します。簡単に言えば会社員か公務員として働いている人は皆、第2号被保険者になります。
まず2024年12月より前に、第2号被保険者がiDeCoに加入した場合の「拠出限度額」がどうだったのかをまとめておきます。
1.勤め先に企業年金等(確定給付企業年金等の他制度、企業型確定拠出年金)がない場合
拠出限度額:月額2万3000円
2.勤務先が企業型確定拠出年金を導入している場合
月額5万5000円-各月の企業型確定拠出年金の事業主掛金額
ただし、拠出限度額:月額2万円
3.勤務先が企業型確定拠出年金と、確定給付企業年金等の他制度を導入している場合
月額2万7500円-各月の企業型確定拠出年金の事業主掛金額
ただし、拠出限度額:月額1万2000円
4.確定給付企業年金等の他制度のみを導入している場合(公務員含む)
拠出限度額:月額1万2000円
上記のように同じ第2号被保険者でも、勤務先がどのような企業年金制度を導入しているかによって、1万2000円、2万円、2万3000円と違いがありました。
そして2024年12月から実施されたのは、ひとことで言えば、3と4のかたの「拠出限度額1万2000円が2万円に引き上げられた」なのですが、具体的に、どのように引き上げられたのかというと……
月額5万5000円-(各月の企業型確定拠出年金の事業主掛金額+確定給付企業年金等他制度掛金相当額) ただし月額2万円を上限
と示されています。
たとえば3のケースで考えてみましょう。
・企業型確定拠出年金の事業主掛金額が月1万円
・確定給付企業年金の掛金相当額が2万円 だとします。
この場合、従来だとiDeCoの拠出限度額は、
2万7500円-1万円=1万7500円
になるはずですが、月額1万2000円が上限になっているため、1万2000円が拠出限度額になります。
これが2024年12月以降は、
5万5000円-(1万円+2万円)=2万5000円
となります。ただし上限が2万円なので、iDeCoの拠出限度額は2万円になりますが、それでも8000円多くiDeCoの掛金に回せるようになります。
さらなる拠出限度額引き上げが検討されている…!?そして、この年の瀬に飛び込んできたニュースが、2025年度の税制改正において、政府・与党がiDeCoの拠出限度額を全体的に引き上げる方向で話し合っているということです。
この原稿を書いている時点では、まだ詳細は明らかになっていませんが、以下のようになると言われています。
1.第1号被保険者は現在の拠出限度額である月額6万8000円から7万5000円に引き上げる。
2.第2号被保険者は2万円を上限にして、各月の企業型確定拠出年金の事業主掛金額+確定給付企業年金等他制度掛金相当額との合計が5万5000円に達するまでが限度額だったのを、6万2000円に引き上げる。また現在は、確定給付企業年金などの内容次第では、5万5000円の合計限度額に達せられないケースもあるので、iDeCoの拠出限度額自体を現在の2万円からさらに引き上げる。
3.勤務先に企業年金がない会社員の拠出限度額を、現在の月額2万3000円から6万2000円に引き上げる。
もちろん、この政府案を与党との間で審議したうえで、最終的には2025年度税制改正大綱に盛り込まれることになります。
2025年度税制改正大綱に盛り込まれると考えられる、iDeCoの拠出限度額引き上げは、同制度の魅力を一段と高めるものになりそうです。
たとえば3の月6万2000円の拠出によって、所得税や住民税がどの程度軽減されるのでしょうか。あくまで、iDeCoによる税負担の軽減の程度を把握するための簡略的な計算になりますが、課税所得400万円、所得税率20%、住民税率10%という設定で考えてみましょう。
月6万2000円の拠出限度額一杯までiDeCoに掛けた場合、年間の掛金は合計74万4000円で、これをそのまま所得から控除できます。
その場合……
74万4000円×20%=14万8800円(所得税の負担軽減)
74万4000円×10%=7万4400円(住民税の負担軽減)
1年間で実に22万円超もの負担軽減が期待できます。
iDeCoの出口に「課税」システムはあるが、それでもメリットも大iDeCoで拠出した資金は、最終的に「年金」もしくは「一時金」で受け取ることになります。
NISAと同様、iDeCoも個人が利用できる非課税投資制度のひとつと見られていますが、最終的に投資資金を受け取る際の課税形態が異なります。NISAは運用期間中に生じた運用益はもちろん、投資した資金を受け取る際も運用益は非課税です。
対してiDeCoの場合、NISAと同様、運用期間中に生じた運用益には課税されませんが、拠出した資金を受け取る際には課税されます。もちろん、年金で受け取れば「公的年金等控除」、一時金で受け取れば「退職所得控除」の対象になりますから、一定金額までは非課税で受け取れます。
とはいえ、完全な非課税ではないところにiDeCoの弱みがあるとも言えますが、2025年度税制改正で拠出限度額が引き上げられれば、前述したような形で大きな節税効果を得られます。
投資(拠出)した額を所得から差し引いて所得税と住民税を計算できるのは、NISAにはないiDeCoならではのメリットです。「仕組みが難しいから」、「一度始めたら中途解約できないから」といったデメリットもありますが、このメリットを考えれば、利用すべき制度のひとつとして、iDeCoも検討せざるを得ないでしょう。
鈴木 雅光/金融ジャーナリスト
有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。
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