新NISA「年初に一括 VS 積立」に最終結論が…!? どちらが有利かすぐに分かる「超シンプルな考え方」
Finasee / 2024年12月25日 11時0分
Finasee(フィナシー)
2025年のNISA戦略、どうする?
2024年もあとわずかになりました。
そろそろ来年の目標などを考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。資産形成もしかり。何かと忙しい時期ではありますが、今年1年の成果を振り返りつつ、来年の戦略を検討してみるには良いタイミングだと思います。
恐らく自分の判断で個別銘柄投資を行っている人たちは、さまざまな戦略を考えていることでしょう。特に来年は、トランプ政権が本格的に稼働します。
今のところ、マーケットは比較的、トランプ大統領に対して好意的な反応を示していますが、現在、トランプ次期大統領がSNSなどを通じて宣言している政策の一端を見る限り、不法移民の強制送還、関税引き上げなど、いずれもインフレを招くものばかりです。物価が上昇すれば、マーケットが期待しているインフレ抑制と利下げの可能性は雲散霧消し、下手をすれば利上げに転じることも考えられます。それは利下げを織り込んで上昇している米国の株価にとってはネガティブです。
当然、米国株の下落は日本株に少なからぬ影響を及ぼすので、恐らく輸出企業を中心に保有している投資家であれば、その比率を下げて内需を中心にするとか、米国株を保有している投資家であれば、そろそろ利食いをするとか、さまざまな戦略を考えているはずです。なかでも、個人で億単位の資金を動かしている人は、神経をとがらせているのではないでしょうか。
一方、資産形成を始めたばかりの人は、そこまでシビアに戦略を立てる必要はありません。やるべきことはNISAの口座を用いて投資信託を積み立てることです。
「年初に一括 VS 積立」問題…投資の原点に立ち返れば「一括」ただ、そのNISAも積み立てた方が良いのか、それとも一括投資が良いのか、ということで迷っている人は少なくないと思います。
結論から言えば、一括投資が有利です。
それは、なぜ投資をするのかを考えれば、おのずと答えは明確になります。
私たちが投資をするのは、投資対象がいずれ値上がりすると考えているからです。値下がりするのであれば、わざわざ価格変動リスクのある株式や投資信託を買う必要はありません。現金で持っているのが一番でしょう。
でも、私たちは株式や投資信託の価格が値上がりすると信じているからこそ、これらの投資商品を買おうとするのです。だとしたら、できるだけ早いタイミングで、それもある程度まとまった資金で投資する方が、資金効率は着実に良くなります。
「年初に一括 VS 積立」を考える、簡単なシミュレーション現実にはあり得ないシミュレーションですが、価格が右肩上がりで直線的に上昇する投資信託のケースを想定してみましょう。ある年の初めに投資を始めた時の価格は基準価額1万口1万円(1口1円)で、1年後に1万口1万2400円になったとします。つまり毎月200円ずつ上昇したことになります。
この投資対象に投資元本は同じ120万円でありつつも、120万円を年初に一括で投資した場合と、毎月10万円ずつ12回に分けて投資した場合を比較してみます。
<一括購入>
まず一括投資した場合ですが、120万円が1年後には148万8000円になります。利益は28万8000円です。
<10万円ずつの積立購入>
対して毎月10万円ずつ買い付けた場合はどうでしょうか。
1月:10万円で10万口買い付け(1万口あたり1万円)
2月:10万円で9万8039口買い付け(1万口あたり1万200円)
3月:10万円で9万6153口買い付け(1万口あたり1万400円)
4月:10万円で9万4339口買い付け(1万口あたり1万600円)
……<中略>
12月:10万円で8万1967口買い付け(1万口あたり1万2200円)
↓
(そして、翌年1月に当該投資信託は1万口あたり1万2400円に…)
という具合に1月~12月に月1回の買い付けを続けた結果、トータル108万5292口となります。そして、翌年1月にはその投資信託は1万口あたり1万2400円に上がっている設定ですので、評価額は1.24×108万5292口=134万5763円です。つまり、投資元本120万円に対し、利益は14万5763円となります。
結果として、一括のほうが、毎月積立よりも14万円超上回り、およそ2倍の利益が出ています。
確かに定額積立投資は、ドルコスト平均法の時間分散効果によって、一見すると有利に見えるのですが、実は一直線に値上がりするマーケットでは、むしろ最初にまとまった金額で一括投資した方が有利になるのです。
前述したように、そもそも資産形成は投資対象が今後、値上がりすることが前提になります。もちろん、投資には値下がりしても利益を得る方法はあります。株式投資で言えば、信用取引の売り建てがそうですし、株価指数先物取引の売り建て、プットオプションの買いなどを駆使すれば、マーケットの下落局面でも利益を得ることは可能です。
しかし、これらの方法は資産形成というよりも、値下がりに乗じて利益を得る「投機」に近い取引になります。当然、NISA口座を用いてこの手の取引はできませんし、これからNISAを活用して資産形成を始めようという人に、この手の取引を勧めるわけにはいきません。
理論上は「一括」でも、不安が残る人は積立でOKというわけで、NISAで資産形成をするのであれば、一括で投資することをまずお勧めします。もちろん、資金がある程度あるならば、と言う前提条件ですが……。
ただし、年間にまとまった資金を入れられるのは成長投資枠だけです。成長投資枠なら年間240万円を一括投資できるので、毎年240万円を年初に一括投資し続ければ、5年間で成長投資枠の生涯非課税枠を満たせます。
加えて、さらに資金面に余裕のある方は、同時につみたて投資枠を用いて毎月10万円ずつ積み立て、5年後に成長投資枠と合わせて1800万円の非課税枠を全額満たすという合わせ技を検討しても良いでしょう。
実際、S&P500に連動するインデックスファンドに、2008年のリーマンショック後から投資した場合、この16年間で、米国株式市場も幾度となく株価の急落に見舞われたものの、それでもチャートを見ると右肩上がりの値上がりが続いているだけに、一括投資した方が高いリターンが得られたはずです。
とはいえ一括投資するには、投資対象が長期的に値上がりすることを強く信じられなければ難しいと思います。その自信が今ひとつ持てない場合は、精神安定剤として積立投資を選ぶのも一手です。
正直、2025年のマーケットは波乱含みでしょう。場合によってはトランプ次期大統領の政策次第で、米国株式などは大きく調整することも考えられます。大きく調整する局面では、積立投資で買い付けタイミングを分散させた方が、価格の安いところで多くの口数を買い付けられるので、その後の価格上昇局面で大きなリターンが期待できます。
その点で、NISAを用いた投資初心者の運用でも、多少の戦略を検討する必要性はあるのかもしれません。
少なくとも来年中は、トランプリスクによる株価の急落を警戒しておくに越したことはないので、まずは積立投資からスタートすることも考えてみてはいかがでしょうか。成長投資枠を使って、まずは積立投資からスタートし、株価がボトムを打ったと判断した時に、その年で残っている枠を使って一括投資するのです。
もちろん、成長投資枠の240万円の枠内で、マーケットが下落した時に複数回にわけて資金を投入するという手もありますが、この方法は買い付けるタイミングを間違えると、一時的に大きな含み損を抱える恐れがあります。その心理的なプレッシャーを避けたいのであれば、マーケットが下げている間は定額積立で乗り切り、底を打って徐々に上昇トレンドに入る場面で、まとまった資金を投入するという戦略を取るのも“あり”だと思います。
鈴木 雅光/金融ジャーナリスト
有限会社JOYnt代表。1989年、岡三証券に入社後、公社債新聞社の記者に転じ、投資信託業界を中心に取材。1992年に金融データシステムに入社。投資信託のデータベースを駆使し、マネー雑誌などで執筆活動を展開。2004年に独立。出版プロデュースを中心に、映像コンテンツや音声コンテンツの制作に関わる。
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