「リーマンショック」時の予兆と酷似? 米国REITが発する“小さな危機”のシグナルとは
Finasee / 2024年12月26日 13時0分
Finasee(フィナシー)
FOMC後初日の反応は
過去のデータも重要ですが、大事なのは「株式市場」は生き物であるということです。つまり、何らかの発表後「初日の反応」があります。そして、「一年の計は元旦にあり」ということわざにもあるように、最初の反応が非常に大切です。
FOMC後の12月18日、株価は下げました。画像には各種主要指数に加えて、PLD~SPGという5つの銘柄を書いています。これらは米国マーケットに上場している巨大REITを時価総額順に左から並べたものです。
REITとは不動産上場投信のことを指します。基本的には資本金と同じくらいの借入金をして、ビルやショッピングモール、インフラ施設や住宅を買い、テナントから家賃を集め、それを投資家に配分するというモデルです。本来あまりボラティリティは高くないはずなのですが、なぜか、REITは一斉に、それもかなり下落しました。
ここに今回のFOMCの核心があると思っています。先ほどお話ししたようにREITは資産の半分以上が借金です。借金には金利が付くので、金利が下がらなければ、将来のコストが減らない。つまり、金利が下がるという前提で株価を保っていたものが一斉に落ちてしまったというわけです。
今後はREITのようにお金を借りるビジネスは相当きつくなるでしょう。おまけに、アメリカの不動産物件を持っているREITはちょっとした危機に直面しています。会社に従業員が戻ってきておらず、オフィス空室率が増えている。場合によっては2025年にはテナントの解約から、家賃収入が入ってこなくなるかもしれない。
その状況で金利の費用が思ったほど下がらないとなれば、2025年は相当厳しくなるはずです。
今回のFOMCは商業用不動産の領域に直撃しました。今後、不動産の売却やテナントの返上が加速すれば、REITの下落はトレンドになる恐れもあるでしょう。
事実5つの銘柄は12月19日も2%程度下落しています。言うなれば、ここから始まったアメリカのマーケットの小さな危機と言えるかもしれません。
もちろん、S&P500 やナスダックなど、アメリカ全体が崩れることはそれほど考えられません。しかしながら、金融危機が起こる前年2007年に起こったアメリカの不動産バブル崩壊では、最初に下がり始めたのはREITでした。私はREITが発しているメッセージは市場への一つの警鐘ではないかと受け止めています。
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岡崎良介氏 金融ストラテジスト
1983年慶応義塾大学経済学部卒、伊藤忠商事に入社後、米国勤務を経て87年野村投信(現・野村アセットマネジメント)入社、ファンドマネジャーとなる。93年バンカーストラスト信託銀行(現・ドイチェ・アセット・マネジメント)入社、運用担当常務として年金・投信・ヘッジファンドなどの運用に長く携わる。2004年フィスコ・アセットマネジメント(現・PayPayアセットマネジメント)の設立に運用担当最高責任者(CIO)として参画。2012年、独立。2013年IFA法人GAIAの投資政策委員会メンバー就任、2021年ピクテ投信投資顧問(現・ピクテ・ジャパン)客員フェロー就任。
マーケット・アナライズ編集部
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