三菱HCキャピタル【8593】“26期連続増配”達成なるか 配当利回り4%、好調は今後も続くのか
Finasee / 2025年1月6日 6時0分
Finasee(フィナシー)
株主還元に積極的、新NISAなら配当も売却益も非課税に
三菱HCキャピタルの株価は2023年に大きく上昇しました。同年9月には1088円の高値をつけています。2022年末は649円で取引を終えていました。
以降の値動きは横ばいでした。2024年は7月には上場来高値を更新したものの、おおむね1000円を挟んで取引されています。直近5年間の上昇率は38.7%と、TOPIXの55.9%を下回る水準です(2024年12月20日終値)。
【三菱HCキャピタルの株価チャート(過去5年間)】
・株価:1004.5円(2024年12月20日終値)
ただし、株価だけでは三菱HCキャピタルへの投資効果は語れません。同社は株主還元に積極的な企業としても知られており、2024年3月期まで25期連続の増配を達成しています。保有期間の長い株主は、受取配当金が積み上がっていると考えられます。
なお、増配は今期(2025年3月期)も実施される予定です。前期比3円増配となり、配当金は1株あたり40円を計画しています。
【三菱HCキャピタルの予想配当利回り(2025年3月期)】
・予想配当金:40円
・予想配当利回り:3.98%
出所:三菱HCキャピタル ホームページ
長く配当金を受け取りたいなら新NISAを活用しましょう。非課税で受け取れるほか、非課税期間も無期限です。さらに売却益も課税されません。つまり新NISAは、保有を続ける限り株式から得られる利益がいつまでも非課税となります。
新NISAでは成長投資枠で株式に投資できます。成長投資枠の投資可能額は年間240万円です。三菱HCキャピタルは足元の株価1004.5円から計算すると、最大2300株まで購入できます。1株あたり配当金が40円なら、年に9万2000円の配当金が受け取れる計算です。
ただし、配当は基本的に利益がなければ実施できません。増配を続けるなら、利益も増加していくことが望ましい状況です。
三菱HCキャピタルの利益はどう推移するのでしょうか。足元の業績と中期経営計画から探ってみましょう。
大手2社の合併で誕生 航空とロジスティクスで高シェアまずは概要から解説します。
三菱HCキャピタルはリースの大手です。2021年4月に旧・三菱UFJリースと旧・日立キャピタルが合併して誕生しました。日立キャピタルは消滅し、承継した三菱UFJリースが商号を変更して現在の体制になっています。三菱HCキャピタルは、三菱商事と三菱UFJフィナンシャル・グループの持分法適用関連会社となっています。
リースは取得した物件を貸し出してリース料を得るビジネスです。三菱HCキャピタルは航空リース部門でシェアが高く、航空機は世界13位、航空機エンジンはメーカー系を除くと世界首位です。またロジスティクス(物流)リース部門では海上コンテナで世界4位のシェアを持ちます。
リース以外では販売金融やローンなどを手掛けています。また「環境エネルギー」セグメントは、再生可能エネルギーの開発事業を展開しています。「不動産」セグメントは、オフィスや物流施設などを対象としたファイナンスや投資、アセットマネジメント(不動産ファンドの運用)で構成されます。
【セグメント情報(2024年3月期】
出所:三菱HCキャピタル 有価証券報告書 統合後はすべて増収増益 今期も増益予想、想定外の損失も航空が好調次に業績の推移を紹介します。
三菱HCキャピタルの業績は2022年3月期に大きく拡大しました。これは日立キャピタルとの統合が主因です。また同年に海上コンテナリース大手の米CAI社を連結子会社化したことも影響しています。
直近の2024年3月期は増収増益でした。統合の2022年3月期から起算すれば、増収増益は2期連続です。
利益は主に航空セグメントがけん引しました。市場が回復するなかで新規資産を積み上げたこと、またエンジン稼働率が向上したことから粗利益が改善しました。また貸倒関連費用で大口の戻り入れが生じたことも増益につながっています。
主力のカスタマーソリューションの利益は前期並みでした。前期の大口売却益のはく落による粗利益の減少を、政策保有株式の売却益の増加でカバーしました。
出所:三菱HCキャピタル 有価証券報告書より著者作成今期(2025年3月期)の業績予想は純利益のみ開示しています。純利益は前期比9%増の1350億円を見込みます。
【三菱HCキャピタルの業績予想(2025年3月期)】
・純利益:1350億円(+9.0%)
※()は前期比
※同第2四半期時点における同社の予想
出所:三菱HCキャピタル 決算短信
開示のある中間決算までの実績では、純利益は617億円となりました。前年同四半期比で17%の増益です。ただし、通期予想に対する進捗率は46%と、やや低調です。期首計画を上回る貸倒関連費用が生じたことが主な原因です。
貸倒関連費用は、主に米州運送セクターで生じました(海外地域セグメント)。商用トラックの運送業者の資金繰りが悪化し、延滞率が上昇しました。資金繰りの悪化は金利上昇やコロナ禍以降の受給バランスの悪化などが背景にあります。
もっとも、通期の業績予想は据え置かれています。航空とロジスティクスで計画を上回る業績を見込むこと、また環境エネルギーで下期に計画を上回るアセット売却益を見込むことが主因です。
初の中計を公表、純利益1600億円を計画 海上コンテナへ積極投資最後に中長期的な計画を押さえておきましょう。三菱HCキャピタルは2023年5月、日立キャピタルと統合して初の中期経営計画を公表しました。2031年度までの3段階の計画で、現在は2026年3月期を最終とする一次中期経営計画(2025中計)に取り組んでいます。
2025中計では純利益を1600億円まで引き上げます。2024年3月期の実績(1238億円)から29%増加させる計画です。さらにROA(自己資本利益率)とROE(総資産利益率)を指標とし、収益性の向上にも取り組みます。また配当性向は40%以上を目指すことが明かされました。
【中期経営計画の主な財務目標(~2026年3月期)】
・純利益:1600億円(1238億円)
・ROA:1.5%程度(1.1%)
・ROE:10%程度(7.7%)
・配当性向:40%以上(42.9%)
※()は2024年3月期の実績
出所:三菱HCキャピタル 中期経営計画
収益性を向上させる具体的な施策の1つが事業ポートフォリオの入れ替えです。
三菱HCキャピタルは、これまでもポートフォリオの入れ替えを進めてきました。近年の主要案件で売却は1兆円、投資は1.3兆円に上ると同社は説明します。売却案件の合計ROA(総資産利益率)は0.9%、投資案件は同1.7%だったことから、採算性は向上しているようです。
【主な売却案件】
・MMCダイヤモンドファイナンス(約2600億円、2018年)
・ディー・エフ・エル・リース、首都圏リース(約2200億円、2024年)
・ダイヤモンドアセットファイナンス(約2100億円、2023年)
※()の金額は連結除外影響額
【主な投資案件】
・米CAI(4600億円、2021年)
・米ジャクソン・スクエア・アビエーション(約2900億円、2013年)
・アイルランド エンジン・リース・ファイナンス(約1700億円、2014年)
※()の金額は連結化影響額
出所:三菱HCキャピタル 個人投資家向け説明会資料
足元では海上コンテナへの投資を強化しています。投資額は2025年3月期で2000億円と、直近2期の実績(300億~400億円)を大きく上回る計画です。三菱HCキャピタルによると、2000億円の投資は業界で2024年の最大規模です。また翌2026年3月期も1000億円規模の発注を計画していることを明かしています。
三菱HCキャピタルは、中東情勢の緊張や海上貿易の堅調な推移などから、海上コンテナの需要がひっ迫すると見込みます。投資が奏功すれば、さらに安定的な収益基盤へ成長することが期待されます。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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