結局、NISAとiDeCoはどっちを始めても同じ? 押さえておきたい「違い」とは
Finasee / 2025年1月12日 18時0分
Finasee(フィナシー)
非課税で運用できる制度は主に「NISA(ニーサ)」と「iDeCo(イデコ)」があります。どちらも運用益の非課税は共通ですが、大きく次のような違いがあります。
【NISAとiDeCoの主な違い】
それぞれ簡単に要点を押さえましょう。また話題となっているiDeCoの「5年ルール」改正についても解説します。
気楽に始められるのはNISA iDeCoは途中でやめられないまず押さえておきたいのが、途中出金の可否の違いです。NISAはいつでも出金できますが、iDeCoは途中でやめることができません。したがって、より慎重に判断したいのはiDeCoといえます。
NISAは保有する商品をいつでも売却できます。売却代金は所定の日数で現金化され、いつでも出金できます。現金化までの期間は商品によって異なります。投資信託の場合、おおむね売却から2~5営業日後です。
一方、iDeCoは途中でやめることができません。商品の売却は可能ですが、売却代金は別の商品を買い替える資金となります(スイッチング)。出金は、原則として60歳まで行うことができません。
もっとも、資金の性格が老後資金なら、iDeCoの途中出金できないという仕組みは整合的です。老後に備え、より確実に資産形成をしておきたいなら、あえてiDeCoを活用する方法もあるでしょう。
iDeCoは掛け金の全額が所得控除 ただし受取時に全額が課税対象次は拠出時の控除と出金時の課税についてです。これはiDeCoのみの論点です。NISAの場合、拠出時と出金時に課税関係はありません。給与などの節税はありませんが、受け取るときに課税されることもありません。
iDeCoは拠出額の全額が所得控除となります。給与などの税金の計算において、所得から掛け金の分だけ差し引くことができます。計算の基となる所得を減らせるので、税金を減らすことが可能です。
ただしiDeCoの場合、出金の全額が課税対象となります。これは運用で増えた部分だけでなく、元本も含めて課税されるという意味です。
なお、iDeCoの出金は全額が課税の対象とはいえ、一定の控除があります。
iDeCoを分割で受け取る場合は「公的年金等控除額」を収入から差し引けます。公的年金等控除額は次のように計算します。
【公的年金等控除額の計算式(65歳以上)】
・年金額330万円以下:110万円
・同410万円以下:収入×25%+27万5000円
・同770万円以下:収入×15%+68万5000円
・同1000万円以下:収入×5%+145万5000円
・同1000万円超:195万5000円
※所得が公的年金のみ、または公的年金以外の所得が1000万円以下の場合
iDeCoを一括で受け取る場合は「退職所得控除額」を差し引くことができます。退職所得控除額は次のとおりです。税金の計算は、退職所得控除額を差し引いたあと、原則としてさらに2分の1に減じた額で行います。
【退職所得控除額の計算式】
・勤続年数20年以下:40万円×勤続年数
・勤続年数20年超:800万円+70万円×(勤続年数-20年)
iDeCoをめぐっては「5年ルール」の改正が話題です。5年ルールとは、iDeCoと退職金の双方から一時金を受け取るとき、iDeCoを退職金より5年以上先に受け取れば、退職所得控除をどちらも満額で計算できる仕組みを指します。
退職金とiDeCoの一時金は、どちらも退縮所得控除額を差し引くことが可能です。しかし両方を受け取るとき、両者の勤続年数に重複期間がある場合、退職所得控除額が減少される場合があります。
ただし一定の場合は、重複期間がないものとして計算できます。その1つが先述の5年ルールです。iDeCoを退職金より5年以上先に受け取れば、たとえ重複期間があったとしても、退職所得控除額はそれぞれの勤続年数で個別に計算できます。
この5年ルールが改正される見込みとなりました。令和7年度税制改正大綱に、5年ルールを10年に引き延ばす案が盛り込まれたためです。
つまり60歳でiDeCoを一時金で受け取る場合、従来は退職金の支給が65歳以降なら退職所得控除を満額適用できました。これが70歳以降に延長されたのです。退職所得控除を満額適用できない人が現行より増える改正ですから、増税の方向となります。
5年ルールの改正は2026年1月以降に適用される見通しです。退職金は企業の7割で導入されており、多くの人に影響が出ると考えられます(出所:厚生労働省 令和5年就労条件総合調査)。
優先度はNISAが高い iDeCoは税金のバランスがポイントiDeCoの加入は、拠出時と受取時の税負担のバランスを考えることが大切です。受取時の負担の方が大きくなることが想定される場合、加入を見送ることも選択肢です。
一方、NISAは受取時に課税されることはありません。仮に資産が元本から数倍に成長していても、税の負担なく、額面どおり受け取れます。
このことから、優先度は多くの人でNISAの方が高いと考えられます。iDeCoは論点が複雑で、NISAと比べると加入の判断は難しくなります。iDeCoの方が有利な人もいるはずですが、その判断がつかないならNISAを優先した方が無難です。
とはいえ、iDeCoの拠出時の所得控除は魅力的です。わからないからといって、加入を見送るのは早計かもしれません。もし自身で判断できない場合、専門家へ相談することもおすすめします。
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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