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セブン&アイ【3382】に買収提案で株価急騰 カナダ同業と創業家が数兆円オファー 業績は下方修正で今後は

Finasee / 2025年1月16日 6時0分

セブン&アイ【3382】に買収提案で株価急騰 カナダ同業と創業家が数兆円オファー 業績は下方修正で今後は

Finasee(フィナシー)

株価下落トレンドから一転、上場来高値 買収の思惑で買われる

セブン&アイ・ホールディングスの株価が揺れています。今期(2025年2月期)の業績予想を開示した2024年4月に値を下げ、同年7月には第1四半期の決算でも売りを浴びました。第1四半期は、前年同四半期比で5割の最終減益でした。

しかしカナダの同業や創業家から買収の提案を受けたことが伝わると、株価は一転して急騰します。下落分を短期間で取り戻し、同年11月の上場来高値(2703円)まで直線的に上昇しました。このような経緯から、2024年は安値から高値まで1100円もの値幅が生じる荒い値動きとなりました。

【セブン&アイ・ホールディングスの株価チャート(過去5年間)】
・株価:2490円(2025年1月10日終値)

 出所:Tradingview 

セブン&アイ・ホールディングスは「JPXプライム150指数」に算出開始当初から組み入れられている銘柄です。選定理由は市場評価性(PBR基準)の高さ、つまり投資家の支持が厚く、純資産に対してよく買われていることが評価され、指数に採用されています。

今回はセブン&アイ・ホールディングスを取り上げます。同社の概要と、話題となっている買収の経緯、また足元で業績が振るわない理由も解説します。株価が今後、どのような展開を迎えるかを見通すうえで不可欠な要因を押さえましょう。

世界最大のチェーンストア企業 アメリカでもシェア首位

セブン&アイ・ホールディングスはコンビニエンスストアを中心に展開する流通企業です。日本で初めてコンビニエンスストアを展開し、国内で最大手の地位を占めています。アメリカのセブン-イレブン(現在のセブン-イレブン・インク。当時はサウスランド)の買収を機に海外展開が進み、2007年にはファストフードも含めチェーン店舗数が世界最大となりました。

アメリカでもシェアはトップクラスです。2021年に現地のコンビニ「スピードウェイ」を買収したこともあり、店舗数はアメリカで群を抜いています。なお、アメリカのコンビニはガソリンスタンドを併設している場合が多く、セブン&アイ・ホールディングスも現地の60%が併設店舗です。

【米国コンビニ上位3社(2023年)】

・セブン-イレブン・インク:1万2601店舗
・クシュタール:5845店舗
・ケーシーズ:2642店舗

出所:NACS(全米コンビニエンスストア協会)

コンビニ以外ではスーパーストア事業や金融関連事業などを展開しています。スーパーストア事業はイトーヨーカ堂やヨークベニマルなど、金融関連事業はセブン銀行やクレジットカード事業などです。

その他のグループ企業では、子会社として赤ちゃん本舗やロフト、また「デニーズ」などを運営するセブン&アイ・フードシステムズがあります。また持分法適用関連会社にはタワーレコードやぴあ、おつり投資アプリ「トラノコ」などを運営するTORANOTECなどを持ちます。

とはいえ、利益の中心は国内外のコンビニ事業です。また売り上げは海外コンビニ事業が大半を占めています。

【セブン&アイ・ホールディングスのセグメント業績(2024年2月期)】

出所:セブン&アイ・ホールディングス 決算短信 米コンビニ2位が買収を打診、円安が呼び水か 創業家はMBOで対抗

セブン&アイ・ホールディングスをめぐっては株式非公開化(上場廃止)が話題です。同業の外国企業から買収提案を受けたことをきっかけに、創業家を中心としたMBO(経営陣による買収)の動きがあります。

セブン&アイ・ホールディングスは2024年8月、アリマンタシォン・クシュタールから買収の提案を受けていることを明らかにしました。クシュタールはカナダの流通企業で、世界で「サークルK」や「クシュタール」などのコンビニを展開しています。アメリカでもシェアが高く、店舗数はセブン&アイ・ホールディングスに次いで業界2位です。

セブン&アイ・ホールディングスはこの提案を実質的に拒否しました。しかし同年10月には、再びクシュタールから買収の提案を受けたことを公表します。クシュタールが巨額な費用が想定される買収に積極的な理由として、円安が進んだことが背景にあるとよく指摘されます。

事態は買収合戦へと発展します。セブン&アイ・ホールディングスは同年11月、創業家出身の副社長からMBOの提案を受けたことを公表しました。同氏は関係会社を通じセブン&アイ・ホールディングス株式の8%を握る大株主でもあります。

この展開に株式市場は買いで反応しました。クシュタールと創業家のどちらが買い手になるにせよ、買収となればプレミアムをのせた価格での買い集めが想定されます。同年8月に1600円まで下落した株価は、11月に上場来高値となる2703円まで急騰しました。

報道では、創業家側のMBOは9兆円にのぼると伝えられています。一方、2度目の買収提案で7兆円を提示したと伝えられるクシュタールも、買収をあきらめない姿勢を表明しています。セブン&アイ・ホールディングスはまだ正式な回答を示していません。

買収は成立するのでしょうか。また成立する場合、買い手はどこになるのでしょうか。どのような結果でも、大きなニュースになることは間違いないでしょう。

今期は大苦戦、純利益3割増から一転27%減益予想 アメリカ失速と特損が重荷

最後に業績も確認しておきましょう。

セブン&アイ・ホールディングスの売り上げは、スピードウェイを取得した2022年2月期に急増しました。営業利益も大きく増加しています。スピードウェイは買収費用が約2兆3000億円にものぼったことから償却費が重荷ですが、円安が進んだこともあり、今のところ利益につながっているようです。

なお、2024年2月期は「そごう・西武」の売却に関連する特別損失から、純利益は前期比で2割の減益となっています。

 出所:セブン&アイ・ホールディングス 決算補足資料より著者作成 

しかし、今期(2025年2月期)は不調です。2025年1月に公表された第3四半期の決算では、売り上げは5.7%の増収だった一方、営業利益は前年同四半期比23.1%の減益、純利益は同65.1%の減益となりました。

減益は全てのセグメントで生じました。特に海外コンビニエンスストアの苦戦が顕著で、営業利益は同32.1%減、のれん償却前でも同19.2%減と、全セグメントで最も悪化しました。アメリカで販売が振るわず、大幅な減益となっています。

 出所:セブン&アイ・ホールディングス 月次営業情報より著者作成 

セブン&アイ・ホールディングスは中間決算で通期の利益見通しを下方修正しています。引き下げ幅は営業利益で1420億円、純利益で1300億円です。純利益は期首時点で前期比30.4%増の計画でしたが、一転して大幅な減益予想となりました。

【セブン&アイ・ホールディングスの業績予想(2025年2月期)】

・営業収益:11兆8790億円(+3.5%)
・営業利益:4030億円(-24.6%)
・経常利益:3560億円(-29.8%)
・純利益:1630億円(-27.4%)
※()は前期比
※同第3四半期時点における同社の予想

出所:セブン&アイ・ホールディングス 決算短信

見通しを引き下げたにもかかわらず、純利益の進捗は低調です。第3四半期までの進捗率は39%となりました。不採算店舗の閉店やネットスーパーの再構築、システム統合などに伴う一過性の特別損失が主な要因です。なお、経常利益までの進捗率はいずれも75%を超えており、修正後の計画に沿った消化となっています。

結果として、セブン&アイ・ホールディングスは通期の予想を維持しました。想定される一過性の特別損益の9割は第3四半期までに計上したこと、また一過性の特別利益の計上を見込んでいることなどから、予想の各段階利益は達成できると説明します。本決算は2025年4月9日に公表の予定です。

文/若山卓也(わかやまFPサービス)

若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種

証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。

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