インドの力強い消費の力をファンドで享受、「イーストスプリング・インド消費関連ファンド」が売れる理由
Finasee / 2025年1月30日 7時0分
Finasee(フィナシー)
京都銀行の売れ筋上位は「海外株式」
京都銀行は、京都府京都市下京区に本店を置き、京都を中心に近隣の滋賀県、大阪府、奈良県、兵庫県、愛知県、東京都に支店と出張所を展開する広域な営業エリアをカバーする地方銀行だ。本支店・出張所は174。海外駐在員事務所を香港・上海・大連・バンコクに置いている。設立は1941年(昭和16年)と比較的新しい。戦後に勃興した京都に本社を置くベンチャー企業や、京セラ、オムロン、村田製作所、任天堂、ワコール、ニデックなどを主力銀行として支え、それらの企業の発展と共に業容を拡大してきた。2023年に持株会社「京都フィナンシャルグループ」を設立し、その100%子会社となる。持ち株会社の傘下にはクレジットカード会社やリース会社などとともに京銀証券があり、スカイオーシャン・アセットマネジメントに出資している。
京都銀行の取扱投信は2024年12月時点で132本。うち、NISAつみたて投資枠対象ファンドは11本、NISA成長投資枠対象が84本。取扱投信を投資資産別に分類すると、「海外株式」が56本で最も多く、次いで「バランス」の25本、「海外債券」の20本、「国内株式」の14本が続く。京都銀行の投信の売れ筋は、ファンドラインアップも充実している「海外株式」が多く、全国的な人気ファンドである「アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース毎月決算型(為替ヘッジなし)予想分配金提示型」や「インデックスファンドS&P500(アメリカ株式)」などとともに、「イーストスプリング・インド消費関連ファンド」が上位にランクされている。2024年10月には同ファンドが販売件数のトップにも立った。
時宜を得た「インド消費関連ファンド」の取り扱い開始京都銀行が「イーストスプリング・インド消費関連ファンド」の取り扱いを開始したのは2022年11月。インド株式市場が2022年12月に史上最高値を更新する上昇相場のさなかだった。その後、2023年1月にインドの新興財閥であるアダニ・グループが不正会計の疑惑を指摘されたことによって関連銘柄の株価が下落。その下落の影響がインド株式全般におよび2023年3月頃まで株価低迷を経験した。ただ、その後にインド国内で個人投資家の株式投資ブームが起こり、2024年6月の総選挙でナレンドラ・モディ首相率いる与党・インド人民党(BJP)が引き続き政権を担うことが決まったこともあって2024年前半は大きな株高になった。2024年半ば以降はインド株式市場の割高感が意識されるようになり、8月以降は弱い高値もみ合い商状になった。
京都銀行が「イーストスプリング・インド消費関連ファンド」の取り扱いを開始した2022年11月の同ファンドの基準価額は5万2000円程度(設定来分配金再投資ベース、以下同)。2023年3月には基準価額が4万3000円を割り込む場面もあったが、2024年1月からは基準価額が6万円の大台を超えて7月には7万8000円台にまで上昇する場面があった。取り扱い開始以降に同ファンドを購入した投資家は、2024年以降も保有を続けていれば収益機会に恵まれたと考えられる。
同ファンドが強く支持されている理由について、京都銀行営業本部は「インドが新興国のなかでも数少ない、今後の成長が期待できる国である点」と語る。さらに、当ファンドの位置づけについては「特にカントリーリスクや為替変動リスクを許容でき、すでに日本株や先進国株式等を保有しており、地域を分散したい顧客や、新興国成長を取り込みたい顧客」を対象に、「人口増加に伴い、インドのなかでも内需企業の成長が期待されること」を訴求ポイントにしているという。同行が同ファンドをラインアップに加えた狙いは、その後のファンドのパフォーマンスによって奏功したといえるだろう。
もちろん、新興国株式に投資するファンドとして、その価格変動リスクについての注意喚起に怠りはない。「新興国株式であり、値動きが大きいため、積立でも購入をご案内するケースも多く、販売の半分程度が積立による購入」(営業本部)という状況になっている。インドの今後の成長期待を鑑みて、中長期での投資を提案しているということだろう。
インド消費関連市場の見方とイーストスプリングの運用力「イーストスプリング・インド消費関連ファンド」を設定・運用するイーストスプリング・インベストメンツは、インドの消費関連市場について「世界最大の人口大国であるインドは、経済成長が加速しやすい人口ボーナス期にある。人口増加、所得水準の向上により、爆発的な消費拡大が見込まれているが、GDPの約6割を個人消費が占め、消費が経済成長を支えているともいえる。セクター別の株式指数の推移を見ても、消費関連セクターが長期にわたってインド株式市場の上昇をけん引してきた。特に昨今では所得増加にともなって、より上質で高価なものを求める『消費のプレミアム化』に加え、『消費のデジタル化』が急速に進んでいることも、消費拡大を後押ししている」(取締役営業マーケティング本部長 面谷祥友氏)と解説する。
そして、インド国内で進む「投信積立制度(SIP)」を通じた投資の拡大にも注目している。「SIPを通じた投資は毎月20億米ドル以上が株式市場に流入しており、こうした国内投資家の力強い資金フローが株式市場を下支えしている」(面谷氏)と、インドの個人消費の1つの発露である「SIP」の発達が、インド株式市場全体の底上げにも寄与しているようだ。「SIP」は2014年頃から市場で注目されはじめ、徐々に存在感を増してきているという。
好調が続くインドの消費関連の中で、「イーストスプリング・インド消費関連ファンド」が銘柄を選定するポイントは、「特定の指標にとらわれるのではなく、徹底したボトムアップ分析に基づき、長期で良好なリスク調整後リターンを生み出すビジネスを特定することを重視。当ファンドでは GARP(Growth at a Reasonable Price)※アプローチにより、中長期の成長性から見て適正な株価水準と判断される銘柄に投資している」(面谷氏)という。
そして、徹底したボトムアップ分析を同ファンドの運用チームに提供している「ICICIAM」は、イーストスプリング・インベストメンツの所属する金融グループの最終親会社とインド国内最大級の民間銀行ICICI銀行との合弁会社で、運用会社としてもインド最大級の規模を持つ。規模と実績のあるところに情報は集まる傾向にあり、「イーストスプリング・インド消費関連ファンド」が国内のインド株ファンドの中で頭一つ抜けた運用成績を残している背景の1つになっている。
※成長性と割安性の両方を重視した投資手法
イーストスプリング・インベストメンツでは、当面の運用環境の見通しについて、「短期的には、グローバルの投資環境の不透明感などからボラティリティの高い展開となる可能性がある」と警戒感を持っている。ただ、中長期的には「インド国内では、政府が支出を再び加速し、インフラ開発の進展など予算消化が進むと予想されるため、企業業績回復、消費回復など、経済が再加速する可能性がある」と分析する。
なお、バリュエーションの観点からは、「株価が調整された大型株には投資妙味があるとみているが、依然として割高感のある中小型については注視が必要だと考えている」としつつも、「長期的には米中の地政学的な緊張の高まりから、インド経済は恩恵を受ける可能性がある。インドはこれまでも新興国平均を上回る高い経済成長を実現してきた。2024年以降も相対的に力強い経済成長を背景に企業の利益成長も高い伸びが予想されており、インド株式は今後もさらなる上昇が期待される」(面谷氏)と明るい見通しを持っている。
中長期の経済成長に裏付けされたインド株式の上昇、なかでも、インドの消費関連企業の成長に投資する「イーストスプリング・インド消費関連ファンド」は今後も魅力的な投資対象であり続けそうだ。
徳永 浩/「フィナシープロ」投信アナリスト
株式専門新聞社で株式・投信市場、上場企業を担当し取材活動をスタート。日本金融通信社『ニッキン』にて地方銀行をはじめ地域金融機関を担当し、投信の銀行窓販の黎明期を取材。日銀記者クラブ、兜倶楽部に所属した。モーニングスター社において投信市場に特化した取材活動を行った後に独立し、投信や年金などウェルビーイングの観点から取材を続けている。
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