「まさかわが家が…」大黒柱の夫が激務でうつ病発症、退職へ。子持ち夫婦が陥った「無収入の恐怖」
Finasee / 2025年1月21日 18時0分
Finasee(フィナシー)
何かとストレスの多い時代。会社員の方が精神疾患を発症してしまい、フルタイムで働くことが難しくなってしまうケースも多く見受けられます。もし一家の大黒柱が病気で働けなくなってしまったら、生活再建に向けてどのような制度を活用することになるのでしょうか。
家計破たんの危機に陥った30代の子持ち夫婦「このままでは家計が破たんしてしまうかもしれません。まさかわが家がこのようになるなんて、考えてもみませんでした……」
面談で妻はそのように言いました。
これはただ事ではない。そう感じた筆者は、まず状況を整理するところから始めました。
■家族構成
夫 本間洋介さん 36歳 休職中
妻 35歳 パート
長女 4歳
■収入(月額)
夫 洋介さん 傷病手当金 25万円
妻 パート収入 5万円
児童手当 1万円
合計 31万円
■支出(月額)
基本生活費 24万円
住居費(家賃および管理費など) 8万5000円
合計 32万5000円
※一時的な支出は含まず
■貯蓄
預貯金 夫婦合計で700万円
夫の洋介さんは会社員当時、不動産の営業の仕事をしていました。結果が出たらその分だけ評価されるのでやりがいを感じていた一方、仕事の拘束時間は長く、成績が伸びない時は上司からのパワハラともとれるような叱咤激励を受けることもあり、ストレスの多い環境に身をおいていました。
それでも頑張れてこられたのは家族がいたから。
「子どもは小さく、これから教育費もかかる。こんなところで仕事を辞める訳にはいかない」
洋介さんは歯を食いしばり、必死に仕事をしてきました。
しかし35歳になったある日のこと。洋介さんの心はとうとう限界を迎えてしまいました。
朝、会社へ向かうために電車に乗っていたところ、急に動悸(どうき)が起こり視界も狭まっていきました。パニックになった洋介さんはそのまま途中下車。駅のホームで深呼吸をして気持ちを落ち着かせたあと電車に乗りましたが、再び車内で動悸が起こってしまいました。結局その日は会社に行くことができず、時間をかけて家に戻りました。
「今日1日休めば何とかなるだろう」
洋介さんはそう思いました。しかし翌朝、洋介さんは今まで感じたことのないような倦怠感に襲われ、布団から起き上がることができなくなってしまったのです。
その日から会社に行くことができなくなってしまった洋介さんは、やむなく休職することにしました。洋介さんの会社のルール上、休職をするためには医師の診断書が必要なため、妻に付き添ってもらい精神科を受診しました。
うつ病になり会社を退職。再就職のめども立たない医師からは「ストレスで体調を崩したようですね。抑うつ傾向も見られるので、しばらく仕事を休んだ方がよいでしょう」とアドバイスを受けました。
医師の指示に従い、洋介さんは仕事を休むことに。休職中に有給休暇をすべて消化した後は、傷病手当金をもらうことにしました。なお、傷病手当金とは、病気やけがのために会社を休み、十分な報酬が受けられない場合に、所定の手続きをすることによって健康保険から支給されるお金のことをいいます。
洋介さんはできるだけ早く職場復帰を目指そうとしましたが、会社に行くことを考えるだけで強い不安に襲われる、食欲がなくなる、動悸が起こり夜もよく眠れなくなるといった状態になってしまいました。
あまりのつらさから、洋介さんは医師や妻と相談した結果、会社を退職することにしました。
その後、洋介さんは再就職をすることはなく、現在の主な収入は傷病手当金のみ。
妻は、洋介さんが休職する前まで週5日のパートで働いていましたが、現在は夫の看病と子育てのため短時間勤務にならざるを得なくなってしまいました。
傷病手当金のおかげで家計収支は今のところやや赤字程度で済んでいますが、傷病手当金は1年6カ月分が支給されるとそこで終了してしまいます。
「早く正社員として再就職しなければ」
洋介さんはそう思い、体調が比較的よい時にネットで情報収集をすることもあるようです。しかし募集要項を見るたびに「自分はできる自信がない。一体どうすればいいんだ……」と不安を口にしています。
再就職ができないまま傷病手当金が終了してしまうと、家計は一気に赤字状態に陥ってしまいます。
主治医からは「正社員ではなく障害者雇用も検討してみてはどうか?」といったアドバイスももらっています。
しかし、障害者雇用だと正社員に比べ収入はかなり減ってしまいます。給料は多くても月額10万円~12万円程度。
「障害者雇用では全然収入が足りない。正社員じゃないと家族を支えることができない」
洋介さんは妻にそう訴え、障害者雇用に二の足を踏んでいるそうです。
「これからの収入の見通しが立たず、不安しかありません。一体どうすればよいのでしょうか」
状況を話し終えた妻は筆者にそう言いました。
●収入面の不安を抱えることになった夫婦。その後、生活を再建できたのでしょうか? 後編【「食事量は成人男性の半分以下」うつ病で退職した夫の再就職が難航…家計の危機を救った「新たな収入の柱」】で詳説します。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
浜田 裕也/社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー
親族がひきこもり経験者であったことから、ひきこもり支援にも携わるようになる。ファイナンシャルプランナーとして生活設計を立てるだけでなく、社会保険労務士として利用できる社会保障制度のアドバイスも行っている。ひきこもりのお子さんに限らず、障害をお持ちのお子さん、ニートやフリーターのお子さんをもつ家庭の生活設計の相談も受けている。『働けない子どものお金を考える会』のメンバーでもある。
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