「食事量は成人男性の半分以下」うつ病で退職した夫の再就職が難航…家計の危機を救った「新たな収入の柱」
Finasee / 2025年1月21日 18時0分
Finasee(フィナシー)
<前編のあらすじ>
家計が破たんしてしまうことを心配して面談に来た妻。
夫の洋介さんは不動産会社の営業の仕事をしていました。結果が出ると評価される一方で、拘束時間は長く、上司からのパワハラのような叱咤激励を受けることもあり、ストレスの多い環境でした。洋介さんは必死に仕事をしてきましたが、35歳になったある日、洋介さんの心はとうとう限界を迎えます。
精神科を受診するとうつ病であることが分かり、休職して傷病手当金をもらうことになりました。その後も症状は改善せず会社を退職。再就職のめどが立たず、現在の収入は傷病手当金のみです。
妻はそれまで週5日のパートで働いていましたが、現在は夫の看病と子育てのため短時間勤務。洋介さんが再就職できないまま傷病手当金が終了してしまうと、家計は一気に赤字状態に陥ります。しかし、「正社員じゃないと家族を支えることができない」と洋介さんは障害者雇用に対して二の足を踏むのでした。
●前編:【「まさかわが家が…」大黒柱の夫が激務でうつ病発症、退職へ。子持ち夫婦が陥った「無収入の恐怖」】
障害厚生年金と障害者雇用で生活再建を目指す夫である洋介さんの傷病手当金が終了したら、その後の収入がなくなってしまう。
そのことに大きな不安を抱えているため、まずは収入の見通しを立ててみることが重要だと筆者は考えました。そこで筆者は障害年金について説明をすることにしました。
ただし、説明をするためにはもう少し情報が必要になるため、妻からさらに聞き取りをすることにしました。
妻によると、洋介さんはうつ病で初めて病院を受診した時は会社員の時(厚生年金に加入中の時)。洋介さんは大学を卒業してからうつ病で初めて病院を受診するまではずっと会社員だったとのことなので、その間に公的年金の未納はないことが分かりました。
よって、洋介さんは障害厚生年金を請求することになります。
障害厚生年金で収入を確保する妻からの聞き取りをふまえ、筆者は次のような説明をしました。
「傷病手当金が終了した後は、障害厚生年金で収入を確保することも検討してみましょう。障害厚生年金には3級から1級まであり、1級が最も障害状態が重く年金額も多くなっています」
「仮に障害厚生年金が認められたとしたら、夫はいくらもらえるのでしょうか?」
「障害厚生年金は、ご主人の今までの給与や賞与をベースにして計算するので正確な金額を出すことは難しいです。ですが、大まかな金額であれば試算することができます。それでもよろしいでしょうか」
「はい。それで構いません」
妻はそう言ってうなずきました。
1級はかなり状態が重くないと該当しないので、3級または2級に該当した場合で概算することにしました。
■障害厚生年金の3級に該当した場合
障害厚生年金 5万1000円
※最低保障額で試算
※障害厚生年金の3級では障害年金生活者支援給付金は支給されません
■障害厚生年金の2級に該当した場合
障害厚生年金 4万5600円(※新卒から初診までの平均年収を400万円として概算)
配偶者加給年金 1万9566円
障害基礎年金 6万8000円
子の加算 約1万9566円
障害年金生活者支援給付金 5310円
合計 約15万8000円
※障害厚生年金の2級に該当すると、障害基礎年金も併せて支給されます
さらに条件を満たせば、配偶者加給年金、子の加算、障害年金生活者支援給付金が支給されます
※上記の金額はいずれも2024年度のもので月額換算
それぞれの年金額を確認したあと、妻は言いました。
「3級と2級ではかなり金額に差があるのですね。2級だとすごく助かります。実際のところ、夫は障害厚生年金の何級になりそうでしょうか?」
「障害厚生年金の何級に該当するかは、主に医師の作成する診断書で判断されます。具体的には、診断書の裏面にある『日常生活能力の判定』がどの程度重いのかによります。日常生活能力は7つの項目があり、具体的には次の通りです」
①適切な食事
②身辺の清潔保持
③金銭管理と買い物
④通院と服薬
⑤他人との意思伝達及び対人関係
⑥身辺の安全保持及び危機対応
⑦社会性
すると妻は眉根を寄せました。
「何だか難しそうですね……。一体、何をどうすればよいのでしょうか?」
初診日から1年6カ月たつと障害年金を請求できる「日常生活の困難さを主治医に伝え、その内容をふまえて診断書を作成してもらうよう依頼してみます。ただし、困難さを口頭で伝えるのは大変なので、文書にまとめるとよいでしょう。それぞれの項目についてご主人の具体的なエピソードを教えていただければ私の方で文書にまとめます。試しに今ここで少しやってみましょうか」
筆者はそう言い、妻に質問をしてみました。
「適切な食事とは、例えばご主人が自分で栄養バランスを考えた食事を準備できるかどうか? 食欲があるかどうか? などです。実際どのような状況でしょうか」
「夫は自分で食事の準備をすることはできていません。食事の用意や後片付けはすべて私(妻)がやっています。食事量は調子のよい時でも成人男性の半分以下くらいだと思います。本当に食欲が無い時は、おかゆを茶わんに少しだけだったりすることもあります」
「なるほど、かなり心配な状態ですね……」
筆者は聞き取った内容をメモしたあと、妻に言いました。
「今お話しいただいたような具体的なエピソードを、さらに身辺の清潔保持から社会性まで文書にまとめていけば大丈夫です。エピソードは多ければ多いほど望ましいです。私が質問をしますので、それにお答えいただくだけで構いません」
「分かりました。それくらいならできそうです。文書ができ次第、今すぐにでも障害厚生年金の請求をしていただくことは可能でしょうか?」
「残念ながら障害年金(障害厚生年金および障害基礎年金)は、原則、初診日から1年6カ月経過した時から請求することになっています。ご主人の場合、初診から1年6カ月は経過していませんので、請求はもう少し先になってしまいます。時期が来たらすみやかに請求できるように私がお手伝いすることもできます。ご安心ください」
「夫は今すぐに障害厚生年金を請求することはできないのですね。請求するまでご協力いただけるということでとても心強いです。ぜひお願いいたします」
妻はほっとした表情でそう言いました。
無収入の不安から解放される面談後、妻の協力のもと筆者は洋介さんの日常生活の困難さの文書を作成。請求の時期が来るまでの間、筆者は診断書以外の添付書類をそろえていきました。その後、医師の診断書を入手した筆者は、すみやかに障害厚生年金の請求を完了させました。
請求から3カ月が過ぎた頃。妻から無事障害厚生年金の2級が認められたという報告がありました。ひとまず無収入の不安から解放され、洋介さんも安心したようです。
障害厚生年金の収入が得られるようになったので、再就職に関しては障害者雇用を検討する気持ちになったとのこと。しかし、すぐに職場復帰するのは自信がないので、まずは就労移行支援を受けてから再就職することに決めたそうです。
「おかげさまで何とかお金の見通しも立ちました。障害厚生年金が認められたことで夫も安心したようで、最近では少しだけ笑顔も見られるようになりました。再就職まで時間はかかるかもしれませんが、夫のペースで進めてもらいたいと思います」
妻からの報告を受け、筆者もほっと胸をなで下ろしました。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
浜田 裕也/社会保険労務士・ファイナンシャルプランナー
親族がひきこもり経験者であったことから、ひきこもり支援にも携わるようになる。ファイナンシャルプランナーとして生活設計を立てるだけでなく、社会保険労務士として利用できる社会保障制度のアドバイスも行っている。ひきこもりのお子さんに限らず、障害をお持ちのお子さん、ニートやフリーターのお子さんをもつ家庭の生活設計の相談も受けている。『働けない子どものお金を考える会』のメンバーでもある。
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