SCREEN(スクリーン)ホールディングス【7735】株価はどうなる? 配予想当金247円に上方修正 4期連続の最高業績を見込む
Finasee / 2025年1月20日 6時0分
Finasee(フィナシー)
高値からの急反落 配当利回りは2.4%へ上昇
SCREENホールディングスの株価は2024年に山なりのチャートを描きました。3月までは大きく値上がりし、7日に上場来高値となる2万440円まで買われています。これは年初来で70%もの急騰です。しかし以降は値を消していき、8月には9000円まで値下がりしました。以降はおおむね1万円をはさんだ値動きとなっています。
【SCREENホールディングスの株価チャート(過去5年間)】
・株価:1万80円(2025年1月10日終値)
投資家の心理が冷える一方、株価が下がったことで配当金には妙味が出てきました。足元の配当利回りは2.45%と、プライム市場の加重平均利回り2.11%(2024年12月)を上回っています。配当金を重視する投資家にも、SCREENホールディングスは選択肢になりやすくなってきたのではないでしょうか。
【SCREENの予想配当利回り(2025年3月期)】
・予想配当金:247円
・予想配当利回り:2.45%
出所:SCREENホールディングスホームページ
通常の株式投資では配当金に約2割の税金がかけられます。しかし、新NISAを通じた投資なら非課税にできます。新NISAでは成長投資枠で個別株式に投資でき、その年間投資枠は240万円です。足元の株価で計算すると、SCREENホールディングスなら200株まで購入できます。配当金が計画どおり支払われるなら、総受取配当金は4万9400円となります。
とはいえ、高値から半値まで急落したSCREENホールディングスは、今後も大きな値動きが想定されます。リスクは相応に高い銘柄といえるでしょう。投資の判断は、事前に事業内容や業績を把握し、慎重に行いたいところです。本記事でそれらを解説します。
洗浄装置で世界トップシェア 中国の比重大きいSCREENホールディングスは半導体製造装置の大手です。シリコンウエハの洗浄装置や、レジスト(感光材)の塗布を行うコータ・デベロッパ装置、また熱処理装置や検査装置などを手掛けています。
主力は洗浄装置です。半導体デバイスはシリコンウエハ上に回路を形成し製造します。その過程では洗浄が繰り返されます。洗浄を行う目的は、微細なゴミや汚染の除去、また製造で用いられる薬剤の除去などです。
この領域でSCREENホールディングスのシェアは世界トップです。シリコンウエハを1枚ずつ洗浄する枚葉式や、複数枚を同時に洗浄するバッチ式、またブラシなどの物理的な手法を用いるスピンスクラバーのいずれも高いシェアを握っています。
【SCREENホールディングスの洗浄装置の世界シェア(2023年度)】
・枚葉式:34%
・バッチ式:47%
・スピンスクラバー:59%
出所:SCREENホールディングス マーケットデータ
売り上げは半導体製造装置が大半です。ほかにグラフィックアーツ機器(印刷関連機器)やディスプレー製造装置および成膜装置、プリント基板関連機器を製造しています。
【SCREENホールディングスのセグメント業績(2024年3月期)】
出所:SCREENホールディングス 決算短信主力の半導体製造装置は海外向けの売り上げが9割を超えます。地域別では中国が4割を占めており、主要な市場となっています。中国で半導体への投資が増えるほど、SCREENには恩恵があると考えられます。
【SCREENホールディングスの半導体製造装置の地域別売上高(2024年3月期)】
・中国:1809億円(43.3%)
・米国:688億円(16.5%)
・日本:590億円(14.1%)
・台湾:496億円(11.9%)
・欧州:247億円(5.9%)
・韓国:203億円(4.9%)
・その他:144億円(3.4%)
※()は構成比
出所:SCREENホールディングス 有価証券報告書
ただし、半導体は対中輸出を規制する動きがあることは知っておきたいところです。米国は2024年12月、半導体製造装置を中心とした新しい対中貿易規制を公表しました※。日本は除外されていますが、同様の規制が日本にも及べば、SCREENホールディングスの業績に影を落とすことが懸念されます。
※出所:ジェトロ 米商務省、半導体製造装置を中心とした新たな対中輸出規制を発表(2024年12月3日)
売上・利益とも過去最高、中国向けが倍増 今期は2ケタ増収増益を計画次に業績です。直近10期を振り返ると、SCREENホールディングスは2020年3月期までの苦戦からV字回復していることがわかります。
2019年3月期と2020年3月期は2期連続で減益でした。主力の半導体製造装置において、2019年3月期は人件費といった固定費が増加したこと、2020年3月期は売り上げが減少したことが減益の主な要因です。
以降は売り上げと利益のいずれも回復しています。回復は2022年3月期から加速し、売り上げおよび各段階利益は2024年3月期までに3期連続で過去最高を更新しました。
出所:SCREENホールディングス 有価証券報告書より著者作成売り上げは特に中国向けが伸長しました。2024年3月期は前期比2.1倍に増加し、台湾の不振をカバーしています。また北米向けも前期比1.7倍に増加し、業績を押し上げました。半導体製造装置がファウンドリー※向けに好調だったようです。
※ファウンドリー…半導体デバイスの製造を他社から受託する業態
出所:SCREENホールディングス 決算説明会資料より著者作成SCREENホールディングスは今期(2025年3月期)も過去最高の業績を目指します。通期の業績予想は第1四半期と第2四半期で相次いで上方修正されました。期首予想からの引き上げ幅は売上高が170億円、営業利益が135億円、純利益が80億円です。達成すれば、売上高および各段階利益はいずれも2ケタ増収増益となります。
今期は第2四半期まで決算を公表しています。進捗率は、売上高が48.1%、営業利益が51.3%、純利益が48.5%です。消化はおおむね順調といえそうです。
【SCREENホールディングスの業績予想(2025年3月期)】
・売上高:5770億円(+14.3%)
・営業利益:1135億円(+20.5%)
・純利益:800億円(+13.3%)
※()は前期比
※同第2四半期時点における同社の予想
出所:SCREENホールディングス 決算短信
なお、SCREENホールディングスは2024年11月、過年度の決算において子会社で出荷済み装置に関わる収益認識の時期をめぐって不適切な会計処理が行われていた可能性があることを公表しました。これに伴い設置された特別委員会から調査報告を受けたところ、影響が限定的なことが確認できたことから、決算の修正は行わない予定です。
売上1兆円を目指し3年で3100億円を投資 還元方針に配当性向30%を設定最後に中長期的な経営方針も確認しておきましょう。
SCREENホールディングスは2024年5月、新しい中期経営計画を公表しました。2027年3月期を最終年度とする3カ年計画です。10年後の売上高1兆円を目指すための投資フェーズという位置付けで、期間中は成長投資として2900億円を投じます。うち2100億円は研究費と設備投資に、800億円はM&Aを含む戦略投資へ振り向けます。
新中計では新規事業の創設にも取り組みます。半導体パッケージ関連機器や水素MEA(燃料電池向け部材)の受託事業は最終年度までの黒字化を目指します。ライフサイエンスの領域では既存製品(細胞検査事業、錠剤インクジェット)の拡販に取り組むほか、京都大学らと開発する次世代型医療(がん個別化医療)のビジネスモデル確立も模索します。
また、新中計では財務目標も設定されました。売上高は平均6000億円を目指す計画で、2024年3月期(同5049億円)より収益を拡大させます。同時に営業利益率の向上も目指すことから、株主に残る利益も増加することが見込まれます。
【中期経営計画の財務目標:2025年3月期~2027年3月期】
・累計売上高:1.8兆円以上(1.7兆円)
・通算営業利益率:19%以上(15.1%)
・ROIC:15%以上(15.9%)
・株主還元方針:配当性向30%以上(総還元性向30%以上)
※()は2021年3月期~2024年3月期の実績
※ROIC=投下資本利益率
出所:SCREENホールディングス 決算説明会資料
株主還元方針には配当性向で30%以上が盛り込まれました。成長投資の進捗によっては機動的に自社株買いを行う方針も示しています。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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