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利上げに動く日銀に市場はどう反応したか。米CPI発表後の動静も解説 

Finasee / 2025年1月22日 6時0分

利上げに動く日銀に市場はどう反応したか。米CPI発表後の動静も解説 

Finasee(フィナシー)

今週(1/20週)の振り返りを行いたいと思います。まずは急浮上した日銀の一月利上げ観測について説明します。次に米国CPIと小売売上高の振り返り。次に世界の長期金利と株の動き。最後にさえなかった日本株の動きについても振り返り、来週のポイントである日銀の利上げが株安円高という嵐を呼ぶのかどうかについて説明するという流れでお話ししていきたいと思います。

出所:内田氏利上げ観測9割まで高まる

来週1月23日・24日には日銀の1月会合が控えています。ここでの利上げ観測が一気に9割まで高まりました。次の図を見てください。

 

OIS(オーバナイトインデックススワップ)という政策金利の利上げ・利下げを織り込む市場の動きをまとめたものです。1月17日時点で90%あります。これは、市場は来週の利上げを9割織り込んでいることを示しています。

まずは簡単に、23日・24日に開催される日銀の1月会合で利上げが行われるのではないかと見られている経緯を振り返ります。

昨年12月9日、氷見野良三日銀副総裁が「1月14日に金融経済懇談会出席へ」と報じられました。第11回のマーケットトークでもお伝えしましたが、こういった時期にこういった懇談会に日銀副総裁が出席すること、それも事前にアナウンスされるのは極めて異例のことです。1月の利上げに向けた地ならしを意識し、あえて事前にアナウンスしたのではないかと考えられます。

こういった背景から、当時は利上げの織り込みは60%まで高まりました。ところが、12月19日、植田和男日銀総裁が1月の利上げを示唆する思惑とは反対に、利上げに向けて「もうワンノッチほしいところ」と発言しました。要は利上げには追加の材料が欲しい。そう発言したのです。そのうえ、今後の利上げの鍵として米国のトランプ政権の政策と賃上げの行方、この二つを見極めたいとも発言しました。

そこで一気に「1月の利上げはないのだ」という見方になりました。

それはなぜか。1月の会合はトランプ次期大統領の就任直後に行われます。ですから、政策の具体策は何も見えてこない。また、賃上げにおいても企業の第一次回答が集中する、つまりどのくらい賃上げされるのか、そのおぼろげな姿が見えるのは3月中旬です。ですから、1月ではなく3月の利上げになるだろうという見方になりました。

しかし、今週16日、地銀向け会合の冒頭あいさつで植田総裁から「来週利上げを議論」という発言が飛び出したのです。発言にはおそらくは為替が影響しているでしょう。ドル円160円を相当警戒しての動きではないかと思います。

また、昨年12月に「1月利上げはない」と自らほのめかしておきながらの発言ですから、依然として情報発信や市場との対話に課題が残っていることを示す形にもなりました。

一時ドル円159円に迫る

ここまでを踏まえてドル円相場を振り返っておきます。

 

先週1月10日雇用統計発表のあと、一時158円87銭と159円手前までドル高が進みました。けれども、賃金の伸びは縮小していましたので、ドル買いはそれほど続きませんでした。

そして週明け、トランプ政権が段階的に関税引き上げを進めるのではないかという報道が出ました。少しずつ関税を上げるのであれば、一気に米国がインフレになることはないだろう。ということで少しドル安の動きが見られました。

その後ドル円は158円台に戻ったところで、先ほど紹介した植田総裁の発言がありました。

続いて15日に米国の消費者物価指数(CPI)と小売売上高が発表されました。表面上はヘッドラインを下回ったということでドル安になりました。さらに米連邦準備制度理事会(FRB)のウォラー理事からは「今年は3回から4回利下げできるのではないか」という発言も飛び出しました。このところで、ドル円相場は155円を割り込み、直近で一番のドル安円高である154円98銭を付けました。雇用統計発表後で言いますと約4円ドル安円高が進んだということです。

 

さらに、主要通貨の対ドル変化率を見ますと、ドル指数の対象になっているすべての通貨がドルに対して上昇しており、ドル全面安の状況です。中でも日本円が最も上昇している。つまり、今週の為替市場はドル安と円高のダブルパンチでドル円が約4円下落したということになります。

そういう意味では日銀1月利上げ観測急浮上による円高が今週の為替市場では一番大きな動きだったと言えると思います。

CPIは予想を下回るもまだまだ予断を許さない状況

米国の消費者物価指数も振り返っておきましょう。

 

特に変動の激しい食品とエネルギーを除いたコアの物価の伸びが11月の実績、あるいは12月の予想を下回る形になりました。インフレに対する警戒が和らぎ、少しドル安の動きが見られたことを示唆する形です。

 

ただ、消費者物価指数の中で約4分の1を占めている「帰属家賃」という項目は伸びており、前月比で見ると12月は伸びが拡大しています。

米国のインフレはトランプ政権がどのような政策を打ち出してくるかによるため、読みにくいところがある。ひとまず、CPIは予想を下回ってインフレが順調に減速しつつあるということではありますが、インフレについてはまだまだ予断を許さない状況ではないかと思います。

 

小売売上高も見ていきましょう。コアは自動車・ガソリン・外食・建築資材を除いた数値で、コントロールグループとも呼ばれており、GDPの算出にも間接的に用いられます。

このコアの前月比は11月実績(+0.4%)、12月予想(+0.4%)、12月実績(+0.7%)といずれも上回っています。米国経済は依然として底堅さを持っている。そう言える状況だと思います。

次にG7各国の長期金利の動きも見てみたいと思います。

 

先週の反動で、今週は米国を含む多くの国で長期金利が低下しました。たとえば、米国は先週4.8%近くまで上昇していた長期金利がCPI発表を受けて4.5%台まで低下しています。

グラフ横軸が長期金利の動きであるのに対して縦軸が株です。今週は金利低下を好感してG7、7カ国中6カ国で株が上昇しています。

唯一違った動きをしているのが日本です。日本では利上げ観測の台頭により、長期金利の上昇は一服したものの、ほとんど低下せず、株も2%以上下落しているという動きです。

 

今週、日本の長期金利は週のなかばにかけて、1.26%に迫る14年ぶりの水準まで上昇しました。これが少し株の上値を抑えたのでしょう。

週の後半には、海外の金利低下につられ、日本でも長期金利の上昇に歯止めがかかりました。ですが、先週末と比べるとほぼ横ばいです。直近で言えば、やや金利が高い水準で高止まりしていることが少し株の上値を抑えた一因になったと思われます。

日本株は軟調に推移

日本株も振り返っておこうと思います。

 

日経平均株価は週を通じて少し軟調な動きでした。今週は13日がお休みでしたから14日スタートとなりました。州のはじめは前週金曜日に発表された雇用統計を受けて米国の株が大きく値下がりし、週明けの株も下がった。その動きを受けて日本株も軟調に推移しました。

その後、日銀氷見野副総裁の発言がやや利上げに前向きと受け止められ、少し長期金利が上昇。株の上値を抑える動きになりました。

また、15日は米国で新しい半導体輸出規制という話が出ています。これを踏まえてNVIDIAをはじめとした半導体銘柄の株価が下がった。その動きを受けて、日本でも半導体銘柄が値下がりしました。さらに植田総裁の発言による利上げ観測があり円高になっています。

16日はCPIの落ち着きを好感して米国株が上がったという前日の動きを受け、日本でも反発しました。

ただ、週を通してみると、円高が重しとなり17日、日本株は戻り売りにあってしまう。こんな動きになりました。つまり今週は円高で株がさえない中、金利は高止まりという状況ですね。

以上が今週の振り返りとなります。

―――――――――――――――――――――――――

後編では昨年7月31日から8月5日にかけて起こった日本株の歴史的な急落劇、その要因について解説します。
 

「内田稔教授のマーケットトーク」はYouTubeからもご覧いただけます。

公式チャンネルと1月17日 公開分はこちらから

内田稔/高千穂大学 教授/FDAlco 外国為替アナリスト

1993年慶應義塾大学法学部政治学科を卒業後、東京銀行(現、三菱UFJ銀行)入行。マーケット業務を歴任し、2007年より外国為替のリサーチを担当。2011年4月からチーフアナリストとしてハウスビューの策定を統括。J-Money誌(旧ユーロマネー誌日本語版)の東京外国為替市場調査では、2013年より9年連続アナリスト個人ランキング部門第1位。2022年4月より高千穂大学に転じ、国際金融論や専門ゼミを担当。また、株式会社FDAlcoの為替アナリストとして為替市場の調査や分析といった実務を継続する傍らロイターコラム「外国為替フォーラム」、テレビ東京「ニュースモーニングサテライト」、News Picks等でも情報発信中。そのほか公益財団法人国際通貨研究所客員研究員、証券アナリストジャーナル編集委員会委員も兼任。日本証券アナリスト協会検定会員、日本テクニカルアナリスト協会認定アナリスト、国際公認投資アナリスト、日本金融学会会員、日本ファイナンス学会会員、経済学修士(京都産業大学)

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