【介護破産はこうして起こる】裕福な生活ができると思っていたのに…年金額の勘違いで80代女性が陥った大誤算
Finasee / 2025年1月29日 18時0分
Finasee(フィナシー)
介護保険制度がスタートしたのは2000年。介護保険は、時代に合わせ、3年ごとに改正を続けています。しかし、知らなければ受けられないサポートもあります。
介護事業を運営する株式会社アテンド代表の河北美紀氏は、最後まで自分らしい生き方を追及するために、介護保険などの公的保障制度を正しく活用する大切さを説いています。
そこで豊富な相談例から「介護破産」の怖さ、そして対処方法を河北氏に紹介してもらいます。(全3回の1回目)
※本稿は、河北美紀著『介護のプロだけが知っている! 介護でもらえる「お金」と「保障」がすらすらわかるノート』(実務教育出版)の一部を抜粋・再編集したものです。
裕福なセレブ? 82歳女性のMさん千葉県在住のMさん(82歳女性)は要介護2。ご主人を3年前に亡くしてからは、自宅で引きこもり気味の生活を送っていました。そのせいで足腰が弱り、ついに一人で買い物へ行くことができなくなりました。
そんなMさんのところには週3回ほどヘルパーが買い物の支援に入っていますが、Mさんが書いたメモを見ながら食品を買ってきても、なかなかお気に召してくれません。「このちくわって美味しくないんだよね。総菜も美味しくない。高くてもいいから、もっと美味しいのを買ってきてちょうだい」などと言っては、「これ、捨てちゃうけど持ってく?」とヘルパーが買ってきた食品を渡そうとすることもありました。
そのためケアマネジャーもヘルパーも、「Mさんは裕福なセレブに違いない」という認識でいたのです。
Mさんに家賃の督促状が届いたところがある日、Mさんの自宅に「家賃が引き落しできなかった」と、家賃1カ月分の請求書(振込用紙)が届いたのです。ヘルパーは封筒を見て、「家賃が引き落しできなかったというお知らせみたいです」とMさんに伝えました。当のMさんは「そんなはずないわよ」と言っていましたが、ヘルパーから促されて通帳の残高を見てみると、「あ、ホントだ」と一言。
なぜ? あてにしていた遺族年金が「わずか月2万円」Mさんが生活レベルを変えずに羽振りのいい生活をしていたのは、「夫の遺族年金が月15~16万円入っている」と勘違いしていたためでした。しかし、実際の受給額はわずか月2万円。夫の遺族年金をあてにする妻は多いですが、遺族年金は老齢基礎年金(国民年金)の支給はなく、もらえるのは「老齢厚生年金」部分の4分の3だけなのです。
また、遺族厚生年金では、自身の老齢厚生年金の額を差し引いた残りの差額分を受け取ることになります。つまり、ご自身の老齢厚生年金が65万円、遺族厚生年金が90万円なら「90万円-65万円=25万円」が遺族厚生年金として受け取れる金額なのです。月に換算すると約2万円となるのは、こうした理由です。
遺族年金の仕組みを知らず、夫が受給していた年金総額の4分の3をもらえると思い込んでいる方は多いようです。Mさんは「主人は2カ月ごとに35万円ももらっていたのよ。こんなに遺族年金が少ないなんて思いもしなかったわ」と言い訳。しかしようやく、節約して暮らさなくてはならないことを自覚しました。
援助のポイント・対処方法 遺族年金を請求する際には必ず金額の確認を遺族年金受給の申請の際、Mさんは「金額は通知を見ればわかる」と思い、受給額の確認をせず3年も経過してしまいました。
援助のポイントは、視力が低下している高齢者に代わって、ご家族や介護事業者が郵便物を開封するよう促すことです。面倒でも中身を確認してもらいましょう。
●第2回は【子どもに財布を握られて、病院にも行けない老夫婦。「経済的虐待」を防ぐための「無料の相談窓口」は?】です。(1月30日に配信予定)
介護のプロだけが知っている! 介護でもらえる「お金」と「保障」がすらすらわかるノート著者名 河北美紀
発行元 実務教育出版
価格 1,870円(税込)
河北 美紀/アテンド代表取締役
東京生まれ。旧三菱銀行およびみずほ銀行で窓口・ローンアドバイザー業務に携わったのち、2013年に株式会社アテンドを設立。同年に通所介護の高齢者リハビリデイサービス「あしすとデイサービス」、2020年に訪問介護「あしすとヘルパーステーション」を開所。2017年、全国35か所で開催された介護コンクール横浜会場において最優秀賞を受賞。現在は介護施設経営に加え、東京都江戸川区の「介護認定審査会委員」として、介護手当の受給もれや要介護認定が下りないといった情報不足によるトラブル、介護離職や介護費用など仕事・お金の問題を解消することで、全世代が安心して生活できるよう日々精力的にセミナー・執筆活動を行っている。
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