青山商事【8219】配当金の倍増&自社株買いを公表、株主還元の強化が評価 PBR1倍は達成できるか
Finasee / 2025年1月27日 6時0分
Finasee(フィナシー)
株主還元強化でストップ高 新NISA満額投資で配当金13.9万円
青山商事の株価が急騰しています。株主還元の強化を発表したことが好感された模様です。同社は2024年11月、今期(2025年3月期)の予想配当金を従来の2倍超へ上方修正したほか、30億円を上限(自己株式を除く発行済株式数の2.98%)とする自社株買いも公表しました。
公表後、青山商事はストップ高まで買われ、翌営業日も大幅高となりました。2営業日で株価は49%以上の上昇となっています。
【青山商事の株価チャート(過去5年間)】
・株価:2167円(2025年1月20日終値)
株価は大きく値上がりしましたが、配当利回りは依然として高水準です。足元で5.86%と、プライム市場の加重平均(2.11%、2024年12月)を大幅に上回ります。
【青山商事の予想配当利回り(2025年3月期)】
・予想配当金:127円
・予想配当利回り:5.86%
出所:青山商事ホームページ
高配当株への投資には新NISAを活用したいところです。本来は配当金に約2割の税金が課せられますが、新NISAなら非課税にできます。新NISAでは、成長投資枠で個別株式に投資できます。
成長投資枠の年間投資可能額は240万円です。青山商事なら足元の株価水準で1100株まで買えます。1株あたり配当金が予想どおりなら、受け取れる配当金の総額は13万9700円となる計算です。
多くの配当金が期待できる青山商事ですが、業績には懸念があります。2021年3月期は2期連続の最終赤字となり、現在もコロナ前の水準を取り戻していません。今期は2ケタの営業増益を見込みますが、中間決算までの進捗率は4.7%にとどまります。
今回は青山商事を取り上げます。事業の内容と業績を押さえましょう。また、同社が株主還元を積極化した理由についても解説します。
スーツ大手 「焼肉きんぐ」「セカスト」などフランチャイズ加盟店も展開青山商事はビジネスウェアの販売を手掛ける企業です。「洋服の青山」を中心に、「スーツスクエア」や「ザ・スーツカンパニー」などの業態を展開しています。「ザ・スーツカンパニー」は英モスブロス社から国内ライセンスを取得しています。
ビジネスウェア事業に付随する事業としてカード事業も展開しています。カード事業は、子会社を通じ「AOYAMAカード」といったクレジットカードを発行しています。
青山商事の利益は、このビジネスウェア事業とカード事業が大半です。とはいえ、その比率は低下傾向にあります。
【営業利益に占めるビジネスウェア事業およびカード事業の割合】
・2014年3月期:99.3%
・2024年3月期:82.5%
出所:青山商事 決算短信
ビジネスウェア事業とカード事業以外で、利益の貢献が比較的大きいのがフランチャイジー事業です。フランチャイジー事業は、フランチャイズの加盟店として飲食店の「焼肉きんぐ」や「ゆず庵」、リユースの「セカンドストリート」、フィットネスジムの「エニタイムフィットネス」などを展開しています。
【青山商事のセグメント情報(2024年3月期)】
出所:青山商事 有価証券報告書 足元は回復傾向 今期は営業増益の計画も進捗は低調、スーツ不振が重荷次に業績を確認しましょう。青山商事は低迷からの脱却を図っています。
苦戦が顕在化したのは2020年3月期です。主力のビジネスウェア事業で収益が低下し、大幅な営業減益となりました。さらにカジュアル事業の撤退および総合リペアサービス事業における減損に伴う特別損失から最終赤字に転落します。翌2021年3月期は、新型コロナウイルスの影響を主因に赤字が拡大しました。
足元は回復が続いています。2022年3月期に黒字化を果たし、直近の2024年3月期まで2期連続の増収増益となりました。ビジネスやフォーマルの需要が戻ったことに加え、フランチャイジー事業も好調でした。ただし、業績はコロナ前の水準を下回ります。
出所:青山商事 有価証券報告書より著者作成回復は今期(2025年3月期)も続く予想です。中間決算時の修正後で通期売上高は前期比微増、営業利益は15%以上の増加を見込みます。引き続きビジネスやフォーマルの需要が期待できるなか、商品価格の見直しと値引きの抑制で粗利の改善を目指す計画です。
なお、純利益は前期比で減少する見込みです。最終減益は、主に前期の繰延税金資産積み増しに伴う法人税等調整額が要因となっています。
【青山商事の業績予想(2025年3月期)】
・売上高:1986億円(+2.5%)
・営業利益:138億円(+15.8%)
・純利益:91億円(-9.8%)
※()は前期比
※同第2四半期時点における同社の予想
出所:青山商事 決算短信
ただし、取り組みは低調です。公表のある中間決算までの進捗率は売上高が42.3%、営業利益は4.7%にとどまっています。純利益は6.3億円の赤字でした(前年同四半期は4.6億円の黒字)。
苦戦の主因はビジネスウェア事業です。12.5億円の営業赤字となり、前年同四半期(6.1億円の営業赤字)より赤字が拡大しました。メンズスーツの販売が不振で売上高が減少したところ、販管費も増加したことで利益を減らしています。
青山商事は、下期における既存店売上高の予想を引き上げ、さらに販管費の削減に取り組むことで計画を達成するとしています。
株主還元方針をわずか8カ月で引き上げ、低PBRに焦り 株価をどう上げる?最後に冒頭に触れた株主還元の強化について解説します。
青山商事は2024年11月、新しい株主還元方針を公表しました。配当性向70%またはDOE(株主資本配当率)3%のいずれか高い方を採用するものです。また自社株買いは、3年間で最大100億円を実施すると明言しました。
従来は1株あたり配当金に60円の下限を設け、配当性向40%を目途としていました。また自社株買いは具体的な金額に言及していませんでした。これは同年3月に公表したばかりの目標です。
短期間で還元方針を引き上げたのは、株価の低さを懸念したことが理由です。青山商事は市場平均と比べるとPBR(株価純資産倍率)が低く、投資家から評価されていないと判断したようです。
【青山商事と東証プライム市場のPBR(2024年末)】
・青山商事:0.64倍
・プライム市場(総合):1.4倍
・プライム市場(小売業):2.5倍
※純資産は青山商事が2024年3月期、プライム市場が2023年10月期~2024年9月期
※プライム市場は加重平均PBR
出所:青山商事 決算短信、日本取引所グループ その他統計資料
青山商事は、PBRが低いのは株主還元が不足しているためとの認識から、配当を積極化させました。2027年3月期までの配当還元の額を、従来の130億円から200億円以上に引き上げています。
株主還元と同時に業績の成長にも取り組みます。ビジネスウェア事業はオーダースーツおよびECの売上高を拡大させるほか、都市型の新コンセプト店舗の開発も行います。また在庫の圧縮と本部費の削減にも取り組み、より利益を重視した経営へと舵を切ります。この実現に向け、既存事業への成長投資として3年間で300億円を投じます。
さらに新規成長投資として、自社株買いを含め3年間で100億円以上を振り向けます。新規成長投資は新規事業の開発およびM&Aとしており、その財源には保有資産や有利子負債などの活用を計画しています。
青山商事は、PBR 1倍の達成には業績拡大も必須との認識です。株主還元と事業成長の両輪を回し、株式市場での評価につなげたい考えです。
文/若山卓也(わかやまFPサービス)
若山 卓也/金融ライター/証券外務員1種
証券会社で個人向け営業を経験し、その後ファイナンシャルプランナーとして独立。金融商品仲介業(IFA)および保険募集人に登録し、金融商品の販売も行う。2017年から金融系ライターとして活動。AFP、証券外務員一種、プライベートバンキング・コーディネーター。
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