1億総お金持ち社会はすぐそこに? テクノロジーによる“平等な金融”が生活者にもたらす「最大のメリット」
Finasee / 2025年1月28日 17時30分
Finasee(フィナシー)
2024年の新NISA開始を契機に、世間では投資の話題が少しずつ身近になっている。しかし、依然として「投資や保険、とにかく金融は難しい」という印象は根強く、生活者と金融の距離は縮まりきれていない。こうした現状を変えるべくフィンテック企業のMILIZEでは業界改革を推し進めている。「私たちが真のフィンテック」と語る代表取締役社長・CEOの田中徹氏に、テクノロジーが可能にする金融の未来と、その先に生活者が享受できる恩恵について話を聞いた(全2回の1回目)。
金融の仕組みへ疑問を抱き、入行9年目で銀行退職を決意――御社は金融工学とAIを用いて「もっとフェアな金融」を目指されています。金融を誰にとっても分かりやすく、使いやすいものにしたいと考えるようになった経緯をお聞かせください。
起業する前は、新卒で就職した銀行に9年在籍していました。支店で個人のお客さまや地元企業の社長さんと接する、いわゆる普通の銀行員っぽい仕事をしたのが最初の3年で、その後は、東京の本部でクレジットデリバティブ商品の開発や、トレーディングなど、当時の最先端とされた金融工学の仕事に就きました。
そこでモニターがたくさん並ぶデスクで朝から晩まで画面を眺め、同僚ともほとんど口をきかないような環境で取引を繰り返すうちに、次第に「なんとなく違うな」と思い始めました。全くやりがいを感じなかったのです。
最初の支店勤務の時のように、年配のお客さまに世の中の仕組みを教えていただいたり、先輩とお酒を飲みながら談笑したりする機会が全くなくなってしまい、人との関わりがなくなると、どんなにお金を儲けていても、ちっとも面白いとは感じられませんでした。
また、当時はバブル崩壊後の厳しい時代でもあり、取引先が必ずしも幸せになる結果ばかりではありませんでした。金融は人にお金を貸したり、便利なサービスを提供したりした対価としてお金をもらう仕事だと思っていたのが、仕組み上、必ずしもお客さんがみなさん幸せになるわけではないというのを悟ってしまって……。
その後、日本では巨大な不良債権処理とそれに伴う金融機関の破綻や合併が相次ぐ頃、ニューヨーク支店に転勤になりました。
オフィスには連邦準備銀行(FRB)の監督官が常駐していました。彼らは「なぜ君たちは日本に帰らないのか」「日本の銀行なんてニューヨークにいる価値がない」と厳しい言葉を投げかけました。
米国、そしてニューヨークはグローバル資本主義の中心地ですから、欧米をはじめ世界中の有力金融機関が拠点を置いています。それで自分の勤める銀行だけが撤退したとなるとメンツの問題を含めて大変なことになりますから、「自分たちはここで、グローバルなリスクを管理する必要があるのです」「なんとかニューヨークに置いてください」と主張しつつも、本心では「自分たちがここにいる必要はあるのだろうか」と考えていました。
目の前の仕事への興味が薄れ、金融業界の不健全さやさまざまなアラについて考えるようになり、勤めていた銀行を辞めようと決意したのでした。
夜は資産運用、昼はプログラミングに明け暮れる生活がスタート――銀行退職後、起業という選択をとったのはなぜでしょうか。
当時はインターネットも出たての頃で、スマホもまだ誕生していません。今のような転職エージェントもありませんから、とにかく、ニューヨークから日本に帰りたいがために、次の転職先も決めずに「もう辞めます」と上司に告げて帰国しました。その時、職場で開いてもらった送別会で「ついて行きます」と言ってくれた部下がいました。冗談だろうと思っていたところ、本当に辞めて日本まで追いかけてきたのです。
こうなると、自分だけで転職活動をするわけにもいかず、2人で組んで仕事をすることにしました。自分たちにできることを考えた時に頭に浮かんだのが資産運用とプログラミングです。そんな求人はなかったので、自分たちで始めるしかないと立ち上げたのが最初の会社です。
「僕たちは資産運用が得意で、トレーディングができます」「プログラムはめちゃくちゃ書けます」と体当たりで営業してみましたが、門前払いされることも多かったと記憶しています。幸い、お金を出して仕事を任せてくれる会社が見つかって、その会社のお金を米国株の運用で増やす仕事を始めることができました。
ニューヨーク市場が開いている夜間はトレーディングで利益をあげて生活費を賄い、昼間は睡眠時間を極限まで削ってプログラミングをして、銀行のリスク管理を効率的にできるソフトウェアを作る生活が続きました。
当時、日本の金融機関は高価な海外のソフトウェアを買い、英語のマニュアルを読みながら使っているような状況でした。そこで、自分たちで日本人向けに使いやすく、コストを抑えたものを作ろうと考えたのです。
そうして出来上がったソフトウェアに、九州のある大手地銀さんが目をつけてくれて、彼らのニーズをあれこれと取り入れて開発したものを納品したら、とても喜んでくださいました。さらに、他の銀行にも自由に売っていいと言ってもらって、最終的に約100の金融機関に導入していただきました。
それからは、次の機能開発、法令対応、別のソフトウェア開発とのめり込んでいるうちに、資産運用の仕事はそっちのけとなり、いつの間にかシステム会社の社長になっていました。
個人を最大限お金持ちにして、金融機関の経営効率をアップさせたい――同じ金融業界といっても、取り組む業務内容は大きく変わっていったのですね。その後MILIZEを起業されたわけですが、フィンテックの業界に入ったきっかけは何でしょう。
何か良いことをして感謝されて、お金をもらえるって爽やかですよね――弱肉強食の世界で勝つことだけを追求する商売をするよりも、後半の人生は、世の中をわずかでもより善きものにできるよう身を捧げようと決めたのがこの頃です。Googleが創業時に「Don’t be evil(悪いことをしない)」を掲げていましたが、同じような気持ちです。
最初に起業した会社を大手のIT会社に売却した後、「ありがとう」とか「おいしかった」とか言ってもらえるビジネスへの憧れがあって、カレー屋を始めた時期もありました。評判も良かったのですが、深夜2時にレジを締めて、朝9時から仕込みを始めるような生活を6年くらい続けていくうちに、体力的に一生続けていくことは現実的ではないと考えて、店を畳みました。
その次に立ち上げたのがMILIZEです。この会社がやるべきことは、金融に関する情報格差の歪みを正して、人々や社会の役に立つことです。払わなくていい手数料を削減して、その分、個人がもっとお金持ちになったり、根性論の営業など非効率な仕組みが是正されて、金融機関が高い手数料を取らずにサービスが提供できたりすればベストだと考えて、この業界に入ってきました。
最初に作ったのは、個人の資産を管理する人生設計のサービスです。ただ、元々、金融工学に基づいたシステムを作っていたので、どんな人生のイベントでも細かなコストまで試算できて便利ではあるものの、すごく複雑なソフトウェアを作ってしまい、さっぱり使われませんでした。
ある時、家計簿アプリで成功している会社の社長に「今はスマホの時代で、スマートな画面設計で手軽な操作感のアプリがウケているよ」という話を聞き、「そうか、PCで見るような大画面の複雑な分析システムなんて個人は使わないんだ」と反省しました。複雑で多機能なソフトウェアのプログラムを、使われるシーンや目的ごとにスマホのアプリに分割していくうちに、だんだんと使ってもらえるようになって今に至ります。
私たちは人生設計に関するソフトウェアやアプリをたくさん出していますが、個人の人にもっとたくさん、自分の人生に関するシミュレーションをしてほしいということではありません。本当に目指しているのは、家計、預金、投資信託、生命保険、損害保険の加入状況など、預けていただいた金融情報を分析して、最良のアドバイスを提供するサービスです。
「これはあなたの人生を良くするのに必要ない提案です」「これは詐欺です」といった具合に、不要な金融商品を購入させられたり、金融犯罪の被害に巻き込まれたりしないようにアラートを出します。また、「お子さんが生まれたので、安くて必要十分な保障を考えましょう」「毎月、家計が黒字で貯蓄もできているので、一部をNISAで投資信託を積立すれば、将来もっと豊かになる可能性が増えます」など、本当に必要なアドバイスを必要なタイミングで提供します。
このサービスを無料でやろうとすると、スポンサーの意向でアドバイスがねじ曲がってしまう恐れもあるので、そこはユーザーの皆さまから月々に数百円をいただければと考えています。
でも、どんなに役に立つアドバイスでも、見ず知らずの会社からいきなりそんなことを言われても、怪しいし、気持ち悪いじゃないですか。
「このアドバイスをするのは誰?」「どうしてそんなことを知っているの?」「なぜ自分のためにやってくれるの?」と思われてしまうから、とりあえず今は挨拶状代わりに、たくさんアプリを作っています。
●後編【「一生で2000万円損をする」と分かっていても…日本人が不要な保険や高い住宅ローン金利で損し続けてしまうワケ】
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。
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