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100万円近く税金を節約⁉ ビットコインを売り急いだ60代男性に“払い損”を防ぐ的確な助言をくれたのは…

Finasee / 2025年1月24日 11時0分

100万円近く税金を節約⁉ ビットコインを売り急いだ60代男性に“払い損”を防ぐ的確な助言をくれたのは…

Finasee(フィナシー)

<前編のあらすじ>

工藤敏さん(仮名)は、神奈川県在住の元会社員で、1年前から本格的な年金生活に入りました。奥さまの分とあわせると500万円近い年金収入がありますが、1年遅れの住民税の支払いや昨今の物価高で、それほど余裕があるわけではないようです。

工藤さんは、60歳で定年を迎えた後、退職一時金でビットコインを購入していました。その後、昨秋のアメリカ大統領選を機に盛り上がったトランプ・トレードで、数百万円の利益が乗ることになります。

「売る気満々」でいた工藤さんでしたが、投資情報サイトなどで指摘されていた課税関係が気になり、暗号資産の税制に詳しい専門家に相談することにしました。

●前編:【「投資したことすら忘れていた」年金生活を開始後、想定外の資産が高騰…60代男性がハマりかけた“税金の罠”】 

存在を忘れていたビットコインを久しぶりに見てみると…

私は65歳で完全リタイアして間もなく1年になる元会社員です。

子供2人は独立し、神奈川県内の自宅で妻と2人で暮らしています。年金収入は夫婦であわせると年間500万円近くになり、同世代では恵まれている方かもしれません。それでも、この物価高のご時世、決して悠々自適というわけではありません。

そんな私がこのところ気にかけていたのが、アメリカ大統領選挙のトランプ・トレードで大きく値上がりしている暗号資産のことでした。実は定年して退職一時金を受け取った際、運用の一環としてビットコインにも投資していたのです。

とはいえ、投資の指南をしてくれた同僚から「とにかく値動きが激しく、いちいち相場を見ていたら心臓に悪い。長期的には成長していくはずだから、ほったらかしでいいと思う」と言われ、この数年間は本当に投資したこと自体を忘れていました。

しかし、ビットコインが10万ドルを超えたというニュースを見て久々にログインしてマイページを開いたら、わずかな投資額にもかかわらず何百万円もの利益が乗っていることが分かりました。

暗号資産の申告に詳しい税理士に相談することを決意

投資は「高いうちに売り抜ける」のが鉄則です。指南役の同僚からは「ビットコインは2024年が半減期でアノマリー(市場の法則)からすればまだ上がる」と止められましたが、個人的には売る気満々でした。

そこで気になったのがビットコインの利益にかかる税金のことです。暗号資産の投資情報サイトにも、暗号資産への税制は株式などに比べて不利だと書いてありました。これは売却する前に確認しておかなければと思いました。

幸い、年金暮らしですから時間はたっぷりあります。ただ、国税庁のウェブサイトで暗号資産の税務上の取り扱いに関する資料を見ても何が何だかさっぱり分かりません。

以前仕事で付き合いのあった税理士さんにも尋ねてみたのですが、「あまり詳しくないんだよね」と言われてしまいました。

そこで最後の砦として頼ったのが、動画サイトで株式やFX(外国為替証拠金)取引、暗号資産の申告についての動画を発信していた税理士の土岐田さんでした。

土岐田さんは60代の私から見れば息子のような世代。配信する動画の内容もテレビのバラエティもどきで最初はこの人で本当に大丈夫なのか、一抹の不安もありました。しかも、面談をお願いした際に指定された事務所も今どきのシェアオフィスです。

半信半疑で迎えた面談当日。初めてお会いした土岐田さんは、お笑い芸人のような動画とは打って変わって物腰の柔らかな好青年という印象でした。

事前に送ったビットコインの取引報告書や年金の振込通知書などにもしっかり目を通していてくれたようで、核心部分を端的に説明してくれました。

暗号資産の課税の仕組みとは? 

まずは、暗号資産の税制について。暗号資産は税務上の「雑所得」に分類され、経費を差し引いて年間20万円を超える利益を出すと申告の必要があります。ちなみに、この「利益を出す」とはいわゆる利確をしたり、買い物などの決済手段として使ったりしたケースを指します。

申告すると総合課税の対象となり、他の所得と合算した総所得から税額を算出するため、累進課税(所得や資産が大きいほど税率が高くなる課税方式)の所得税では課税額が膨らみがちです。

証券会社の特定口座(源泉徴収あり)で株式の取引を行った場合、利益に対しては一律20.315%(所得税・復興特別所得税・住民税の合計)が課税され、別途申告する必要はありません。また、株式投資で大きな損失を出した場合は、その翌年から最長3年間の利益と相殺することができます。

暗号資産にはこうした制度が整備されていないため、税制面で不利と言われているのです。

土岐田さんの説明は、わざわざややこしい言い回しをしているのかと勘繰りたくもなる国税庁の資料などと違って、税務の素人の私にも非常に分かりやすいものでした。

課税の仕組みを理解したところで、土岐田さんが指摘したのは私の年金への課税のことでした。

「工藤さんの年金収入は年間400万円以下なので、申告不要制度が利用できます。工藤さんも奥さまもお元気で医療費控除の申告の必要もないようですから、この制度を利用されるのが望ましいと思います。ただ、ビットコインで20万円を超える利益を出して申告をする場合、年金の分もあわせて申告しなければならないんですよ。となると、税額が一気にアップします」

助言がなければ100万円近い税金を支払うことになったかもしれない

私にとって、この指摘は盲点でした。ビットコインを売り抜けることでどれくらいの税金を払う必要があるのかということしか、考えていなかったからです。“年金生活1年生”だったこともあり、自分の年金の税金がどうなるかもよく分かっていませんでした。

「では、売らない方がいいということですね」と落胆する私に土岐田さんが提案したのが、20万円以内に収まる形で利益の一部を売却することでした。確かにそれなら、年金の申告不要制度も使えます。

「工藤さんはビットコインを手じまいすることをお考えだったのでしょうが、当面は年20万円以内を目指して売っていくというのが、値動きの激しいビットコインのような投資商品では悪くないやり方だと思います」

さらに、「ビットコインの業界団体などは株式などと同じ一律20.315%の課税や3年間の繰り越し控除ができるような税制への変更を国に対して要望しています。将来税制が変わったら、その時点で対応を考えてはいかがでしょう」といったアドバイスもくれました。

後から冷静に考えると、土岐田さんの助言を受けていなければ本当に危ないところでした。素人考えで慌てて全部を売り払っていたら、住民税とあわせて100万円近い税金が降りかかってきたかもしれません。

さらに、土岐田さんとの会話は、現場を離れて久しい私にとっていい頭の体操にもなりました。

聞けば、同世代の金融関係者やIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)と連携して包括的な金融サービスを行うことも考えているというので、「ぜひとも利用したいから、その際は声をかけてほしい」とお願いした次第です。

※個人が特定されないよう事例を一部変更、再構成しています。

森田 聡子/金融ライター/編集者

日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。

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