年金のみの生活が苦しくなってきた70代おひとりさま女性…突然“給付金”をもらえることになったワケ
Finasee / 2025年1月30日 17時0分
Finasee(フィナシー)
<前編のあらすじ>
72歳の真理子さん(仮名)は7年前の2018年に、夫を亡くしました。その後、老齢基礎年金と老齢厚生年金であわせて年間75万円程度と、遺族厚生年金を年間130万円受け取っています。
少しでも余裕のある生活をしたいと、短時間の仕事をして100万円を超える給与収入を得ていましたが、真理子さんが70歳になった年に退職することになり、以降は年金のみの収入となりました。
そんな中、2024年9月に真理子さん宛てに突然お知らせが届きます。それは年金生活者支援給付金の案内でした。
●前編:【「せめてもうちょっとお金があれば」年金だけでは心もとない…パートの給与収入が途絶えた70代女性に見えた希望】
いまさら年金生活者支援給付金の対象になった理由真理子さんに支給される給付金は老齢年金生活者支援給付金です。真理子さんがなぜ対象になったかというと、給与収入がなくなったからです。しかし、2022年に退職し、給与収入が完全になくなったのは2023年のこと。2024年になってから給付金の案内が来る理由は何でしょうか。
まず、真理子さんが請求できるこの老齢年金生活者支援給付金の支給要件から見てみます。老齢年金生活者支援給付金は、老齢基礎年金の受給者を対象とし、①前年の年金収入とその他の所得の合計で約78万円以下、②市町村民税が非課税世帯、いずれも満たしていれば支給されます。なお、①の額が約78万円の基準額を超えていても約88万円以下である場合、老齢年金生活者支援給付金は支給されませんが、補足的老齢年金生活者支援給付金の対象になります。
2023年の所得基準をクリアして2024年10月分から支給対象にこの所得基準を満たすかどうかの判定にあたって、非課税となる遺族年金は除外されることになります。2年前の2022年の段階では、遺族年金は除いたとしても、老齢年金の収入の他に給与所得があったことから、先述の所得基準ををオーバーしていました。そのため、真理子さんは給付金の受給に必要な所得要件を満たしていませんでした。しかし、退職して給与がなくなった2023年の段階では、老齢年金75万円のみとなります。
真理子さんは、2023年は老齢年金75万円だけの収入で、①の所得基準はクリアしていることになります。また、真理子さんの市町村民税についても非課税世帯となり、②も満たしていました。
①について前年である2023年の所得基準を満たしたことにより、老齢年金生活者支援給付金は2024年10月分からが支給対象となります。そのため、給付金の案内は2024年9月になって届いたことになります。
給付金が支給されるかは毎年判定される給付金について理解した真理子さんはすぐさま年金生活者支援給付金の請求書を提出し、実際に2024年10月分から支給されるようになりました。「月数千円でも、給付金があるのとないのとでは随分と違う」と安堵するのでした。
年金生活者支援給付金は2023年の所得基準により、2024年10月分から2025年9月分までの1年間が支給されますが、毎年所得要件を満たすか判定されて10月分から翌年9月分までが支給されるかが決まります。
真理子さんは2024年も年金収入のみでした。そのため、2025年10月分から2026年9月分までの1年分が支給される予定です。つまり、今の年金収入のみの生活が続くようなら、今後もずっと支給され続けることになり、他に収入が得られるようになると、先述の所得要件を満たさず支給されなくなる可能性もあります。また、真理子さん自身は年金収入のみであっても、働いて市町村民税が課税されている息子や娘と同一世帯になるなどして非課税世帯でなくなると、先述の②の要件は満たさなくなり、給付金は不該当になります。
もし、一度不支給になっても、その後再度要件を満たせば再び支給されるようになりますが、その場合はまた請求が必要となります。
物価上昇が続く昨今、年金受給をする人は年金だけで足りるか不安になることもあり、年金生活者支援給付金が支給されることで経済的に助かることもあるでしょう。給付金の対象となるのにその請求が遅れると、支給されない給付金が発生することもあります。必要な請求は忘れずに早めに行う必要があるでしょう。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
五十嵐 義典/ファイナンシャルプランナー
よこはまライフプランニング代表取締役、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP®認定者、特定社会保険労務士、日本年金学会会員、服部年金企画講師。専門分野は公的年金で、これまで5500件を超える年金相談業務を経験。また、年金事務担当者・社労士・FP向けの教育研修や、ウェブメディア・専門誌での記事執筆を行い、新聞、雑誌への取材協力も多数ある。横浜市を中心に首都圏で活動中。※2024年7月までは井内義典(いのうち よしのり)名義で活動。
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