「イーライリリー」や「ネットフリックス」を上位に組み入れたファンドが、第2の「米国成長株投信」になる?
Finasee / 2025年1月26日 18時0分
Finasee(フィナシー)
三井住友銀行の投信売れ筋ランキングの2024年12月のトップは前月の第2位から「インベスコ 世界厳選株式オープン<為替ヘッジなし>(毎月決算型)<世界のベスト>」が浮上し、「三井住友・NYダウ・ジョーンズ指数オープン(為替ヘッジなし)」は第2位に上がった。「世界のベスト」がトップに立つのは6月以来6カ月ぶり。11月まで5カ月連続でトップを維持していた「三井住友・225オープン」は第3位に後退した。また、前月に第8位にランクインした「ピクテ・ゴールド(為替ヘッジなし)」が第7位に上がり、前月第10位だった「JPモルガン・アメリカ成長株ファンド(為替ヘッジなし、年1回決算型)<アメリカの星>」が第8位にまで順位を上げた。
◆「225」人気が後退した理由は?7月から5カ月連続で売れ筋トップの座に君臨してきた「三井住友・225オープン」が第3位にまで後退した。同じインデックスファンドとの比較では、「NYダウ」に逆転されたことになる。ただ、第3位に落ちたとはいえ、「S&P500」や「全世界株インデックス(MSCI-ACWI)」関連のファンドよりも順位は上にある。依然として高い人気を保ちつつ、その人気の勢いが少し弱くなったというところだろう。
「三井住友・225オープン」がトップに立った7月は、同ファンドが連動をめざす「日経平均株価」が7月11日に4万2224円の史上最高値をつけて好調だった。ところが、日銀の金融政策に関する説明不足などの影響で8月5日には3万1458円に急落し、その後は3万5000円~4万円のもみ合いを続けた。12月27日には4万281円とかろうじて4万円の大台を回復したものの、その後、4万円台を維持することはできていない。米国株に対して日本株の割安は指摘されて久しく、しかも、東証のPBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業に対する改善要請などを受けて国内企業の株式価値向上に向けた努力も続いている。このため、日本株の「先高期待」は強いのだが、その期待に応えられない状況が続いている。
「NYダウ」は、7月に「日経平均株価」が史上最高値を更新した時に同じく史上最高値を付けて7月17日には4万1198ドルになった。8月の急落時には連れ安をして3万8703ドルの安値に沈んだものの下落率は軽微だった。「日経平均株価」と決定的に違うのは、8月26日には史上最高値を更新し、9月、10月、11月、12月と史上最高値を更新し続け、12月5日には4万5014ドルに進んでいる。日米の株価指数の動きには、明らかに大きな差があった。12月の半ば以降は、米国株も調整局面に入っている。今後、日米の株価はどちらが優位に進むのか? 三井住友銀行の売れ筋ランキングは、どちらとも決めつけることはせずに今後の状況をじっと見守っているようだ。
◆「アメリカの星」が輝きを増す?11月に売れ筋トップ10の第10位にランクインし、12月には第8位にランクを上げた「JPモルガン・アメリカ成長株ファンド(為替ヘッジなし、年1回決算型)<アメリカの星>」は、米国最大の金融グループであるJPモルガン・チェース・アンド・カンパニーの運用部門が厳選する米国の成長株に投資するファンドだ。米国の大型グロース株投資戦略は、その運用ポートフォリオの中身が「S&P500」に似てしまうが、その中から、JPモルガンの判断で成長力に乏しいと判断される企業を除外し、また、より高い成長が期待できると確信度が高い銘柄には資産の配分比率を高くするなどの調整を行うことで株価指数を上回る運用成績をめざす。
実際にファンドの月報によって組み入れ上位銘柄をみると、「エヌビディア」9.3%、「マイクロソフト」9.2%、「アマゾン・ドット・コム」6.2%、「メタ・プラットフォームズ」6.1%、「イーライリリー」5.0%、「アップル」4.9%、「アルファベット」4.7%、「ネットフリックス」3.1%、「マスターカード」3.0%、「ブロードコム」2.3%となっている(2024年10月末時点)。これは同時点の「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の組み入れ上位の「アップル」7.0%、「エヌビディア」6.9%、「マイクロソフト」6.5%、「アマゾン・ドット・コム」3.6%、「メタ・プラットフォームズ」2.6%、「アルファベット」3.8%、「バークシャー・ハザウェイ」1.7%、「ブロードコム」1.7%、「テスラ」1.4%と比較すると、その違いがよくわかる。「JPモルガン・アメリカ成長株ファンド」は、「S&P500」ではトップの「アップル」の評価が低く、「バークシャー・ハザウェイ」「テスラ」はトップ10に入れていない。また、「S&P500」ではトップ10に入っていない「イーラーリリー」や「ネットフリックス」「マスターカード」を高く評価している。
そもそも「S&P500」は約500銘柄を組み入れた指数であることに対し、「JPモルガン・アメリカ成長株ファンド」では67銘柄に厳選している。この銘柄選定の効果がパフォーマンスに表れているかどうかは、運用会社の銘柄選定能力の良しあしに直結している。過去3年間のトータルリターンでは「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」は77.4%で「JPモルガン・アメリカ成長株ファンド」の71.2%を上回っているが、過去1年間では36.7%に対して40.4%で「JPモルガン・アメリカ成長株ファンド」が勝っている。過去3年は市場全体が大きく上昇したため銘柄選定の効果が表れにくかったが、過去1年は米国株の割高懸念が強く意識されるようになったため、選別投資の効果が表れやすくなったのだろうか。「JPモルガン・アメリカ成長株ファンド」が人気化しているのは、パフォーマンスの変化も考慮された結果と考えられる。
執筆/ライター・記者 徳永 浩
Finasee編集部
「一億総資産形成時代、選択肢の多い老後を皆様に」をミッションに掲げるwebメディア。40~50代の資産形成層を主なターゲットとし、投資信託などの金融商品から、NISAや確定拠出年金といった制度、さらには金融業界の深掘り記事まで、多様化し、深化する資産形成・管理ニーズに合わせた記事を制作・編集している。
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