「公務員が貯められる額とは思えない」税理士も絶句…それぞれ1億円以上の遺産を残した義両親の“超絶節約生活”
Finasee / 2025年1月28日 18時0分
Finasee(フィナシー)
「トラブルというほど大げさなものではないのですが……」と恐縮しきりで話してくれたのは、都内の私立大学に事務職員として勤務する金子雄彦さん(仮名)です。金子さんは昨年11月に奥さんの晶子さんのお母さまが亡くなるまで、二世帯住宅で25年以上義両親と同居していました。自称「アニメ『サザエ』さんのマスオさん状態です」とおっしゃいますが、誠実そうな面差しや物言いは確かにちょっとマスオさんに似ているかもしれません。
そんな金子さんにとって長年ストレスになっていたのが義両親との経済的な価値観の違いでした。昭和一桁世代で、東京で過酷な戦争体験をした義両親は、外食やレジャーに振り向きもせず、何十年も前の服を着続ける節約家。義理のお父さまが亡くなった際には1億5000万円の相続が発生し、税理士に「一公務員が貯められる額とは思えない」と驚かれたそうです。金子さんに、そんな義両親との生活を振り返ってもらいました。
〈金子雄彦さんプロフィール〉
東京都在住
56歳
男性
大学職員
公務員の妻、社会人の長男と3人暮らし
金融資産8500万円(世帯)
2024年の11月に二世帯住宅で同居していた妻の母親が亡くなりました。2025年には卒寿を迎える予定でした。急性心疾患だったこともあり義母は死の直前まで元気そのもので、前夜も息子の好きな煮込みを作って届けてくれたばかりでした。
「このまま100歳まで生きてくれると思っていたのに」と肩を落とす妻を横目に、私自身は、大変不謹慎ですが、大きな呪縛からようやく逃れたという解放感を味わっていました。
経済的な価値観の違いを実感した二世帯同居生活地方出身の私は進学した大学で妻と出会い、30歳で結婚しました。妻は東京の下町の出身で、義父は区役所の職員、義母は区役所で健康診断などに携わる看護師でした。
私たちが結婚を決めた頃、両親は義父の親から引き継いだ家に住んでいて、「改築を考えているんだけれど、二世帯住宅を建てて同居しないか?」と声をかけてくれたのです。
それは当時の私たちにとっても渡りに舟でした。私たちが住む2階部分の建築費はローンを組んで借り入れましたが、月々の返済額は都内のマンションの家賃よりずっと安上がりだったからです。
私自身も男ばかり3人兄弟の三男坊だったこともあり、うちの両親も「いっそのこと、婿養子になっちゃえば?」と気楽な感じでした。
かくして二世帯同居がスタートしたのですが、義両親との暮らしは思いのほか、気づまりなものでした。最大の要因は経済的な価値観の違いです。
昭和一桁世代の義両親は、私たちが歴史の授業でしか知らない第2次世界大戦、さらには終戦後の荒廃した東京で、相当に厳しい生活を強いられたようです。ほとんどが水分の味もない重湯を1日1杯しか食べられなかったこともあるという話を聞かされたこともあります。そうした過酷な体験をしたためか、義父母は「つつましい」を通り越して「吝嗇(りんしょく)」というレベルの節約生活を送っていたのです。
義母は料理上手でもあったのですが、朝晩の食事は100%自炊でほとんどが焼き魚や野菜の煮物。出来合いの惣菜を買ってきたり、店屋物を取ったりすることは皆無でした。誕生日などのお祝いの食卓には、決まって義母の手製の野菜やかんぴょうの入ったちらし寿司が並びます。
衣料品や服飾品もほとんど買いません。義母が穴の開いた服に当て布をして修繕する姿をよく見かけました。そんな親に育てられた妻も服装には無頓着。結婚後も中学生の頃の服を平気で着ていました。私は学生時代からファッション誌を読み流行を追いかけるタイプだったので、自由に買い物ができない環境はストレスがたまりました。
そんな義両親が唯一、出費を惜しまなかったのは…義両親はレジャーや旅行にもとんと興味がないようでした。温泉旅行をプレゼントしようとしたことがありますが、「そんなことにお金を使うのはもったいない」と固辞されました。
それは妻も同じで、私だけが出かけるのも気が引け、結果的に家を空けるのは私の実家に帰省する時くらいになりました。遊びたい盛りの息子にはかわいそうなことをしたと思っています。
半面、義両親はともに家庭の事情で自分の思い通りの進路に進めなかったという後悔があり、妻や義姉の教育には出費を惜しまない様子でした。60代の義姉は同世代では珍しく大学院で修士号を取得しています。
教育熱心なのは孫世代に対しても同様で、息子の教育費も過分に援助してもらいました。ただ、正月にお年玉をくれたり、誕生日にゲームソフトをプレゼントしてくれたりするのは専らうちの両親だったので、現金な息子は田舎のおじいちゃん、おばあちゃんの方に懐いていたのですが。
そんな義両親ですから、年金生活でもお金は貯まる一方でした。公務員で在職期間も長かったため2人合わせて40万円をゆうに超える年金を受け取っていたはずですが、月の出費はその4分の1にも満たないのですから当然と言えば当然です。
がんを患った義父が8年前に亡くなった時、不動産や金融資産を含めた遺産の評価額は1億5000万円ほどになり、相続税の申告をお願いした税理士の方には「失礼な言い方かもしれませんが、区役所の一職員でよくここまで貯められましたね」と驚かれました。
それは、ちょうど同じ頃に亡くなった私の父親とは対照的でした。
●金子さんの父親は、義両親とは正反対のタイプでした。父親の価値観に共感する金子さんにとって、質素すぎる生活を送る義両親と生活するのは、なかなか骨の折れる作業だったようです。後編【食費は夫婦2人で月2万円、「30代の頃の服が着られる」が自慢…義両親との同居で判明した「驚きの生活実態」】で詳説します。
※プライバシー保護のため、内容を一部脚色しています。
森田 聡子/金融ライター/編集者
日経ホーム出版社、日経BP社にて『日経おとなのOFF』編集長、『日経マネー』副編集長、『日経ビジネス』副編集長などを歴任。2019年に独立後は雑誌やウェブサイトなどで、幅広い年代層のマネー初心者に、投資・税金・保険などの話をやさしく、分かりやすく伝えることをモットーに活動している。
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