1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

「FIREは本当に幸せなのか」──変わり続ける“前提”と資産運用のリスクとは?

Finasee / 2025年2月1日 12時0分

「FIREは本当に幸せなのか」──変わり続ける“前提”と資産運用のリスクとは?

Finasee(フィナシー)

FIRE(Financial Independent Retire Early)という言葉を聞く機会が増えている。十分な資産を築くことで「働く必要がない生活」を実現し、早期リタイアするという考え方だが、本当にそれで安定した幸福を得られるのだろうか。

FIREの前提条件は変化し、不安は消えない

FIREに必要とされる金額は、多くの場合「年間生活費×25年分」などを基準に、想定利回りや物価上昇率などを考慮して算出される。具体的には、「年利○%で運用する」「年間の生活費はこれくらい」といった複数の前提を組み合わせるわけだ。

しかし、運用成績やインフレ率は常に変動するため、想定した利回りを確保できなかったり、物価が想定以上に上昇して実質の生活費が増えたり、税負担が増したりすると当初の計画が十分に機能しなくなる可能性がある。

これは、数年前に話題になった「老後2,000万円問題」とも似通っている。その試算も、運用利回りや物価上昇率など、いくつもの前提を組み合わせて導き出されたものだが、「2,000万円では足りない」という意見から「そこまで大きな数字ではない」という見解まで、さまざまな議論が繰り広げられた。将来の生活を「これで安心」と言い切るのは難しいのだ。

また、仮に「これだけあれば働かなくても生きていける」と判断できる資産を築けたとしても、将来的な医療費や家族のケアなど、想定外の大きな支出が発生する可能性もある。お金が増えることで新たな悩みが生じることもあるだろう。従ってライフステージや経済状況の変化に合わせて、継続的に資産運用を見直していく姿勢は求められるだろう。

お金が増えても「幸福感」が高まるとは限らない?

FIREを目指す理由としては、「働く苦労から解放されたい」「もっと自由な時間を増やしたい」といった思いが考えられる。一方で、実際に大きな資産を手に入れた人の中には、「想像したほど幸福感を得られなかった」という声も多い。

たとえば、「働く必要がないほどお金がある」という状態になっても、時間は増えるものの、退屈や虚しさを覚える人もいるようだ。逆に、「お金を稼ぐ」という形以外で社会や家族に貢献している人も多く、それによって十分にやりがいや満足感を得ている場合もある。それぞれが納得する形で、周囲との関わりを保つことが重要なのだろう。

FIREの本質とは「選択肢を増やす」こと

こう考えると、FIREは「働かなくていい生活を絶対的に保証する」というより、「働く・働かないをある程度自由に選べる状態を目指す」戦略としてとらえるほうが現実的かもしれない。ある程度十分な資産を築ければ、続けたくない仕事を思い切ってやめたり、より自分に合った職種や働き方を選びやすくはなるだろう。

「経済的な自由度を高める」こと自体は、ライフスタイルを柔軟に変えやすくするという意味でメリットがある。ただし、資産運用には不確実性がつきまとうため、想定どおりにいかないリスクを踏まえ、定期的にポートフォリオを見直すといった対応は求められる。

柔軟な資産運用と自分なりの価値観が重要

FIRE関連の情報は数多く出回っているが、そこに示される必要資金はあくまで目安であり、前提条件が変わると計算が大きくずれる可能性がある。FIREを目指す際にはリスク管理や定期的な見直しを重視し、運用商品や投資先の分散などを継続することが望ましい。また、大きな資産を築けたとしても、それだけで必ずしも幸福感が向上するわけではないだろう。FIREはあくまで一つの選択肢にすぎず、各自の人生設計や価値観に合った形で取り入れることがポイントではないだろうか。

木村 大樹/Keyaki Capital代表取締役CEO

野村證券でオルタナティブ商品の営業に従事した後、ニューヨークで証券化ビジネスに携わり、サブプライム危機に直面しながら問題解決に努める。帰国後はバークレイズ証券を経て、2012年にシティグループ証券の年金ソリューション部長、2015年からはマッコーリー・インベストメント・マネジメント日本代表。2020年に個人に公開されていない世界中のプライベートアセットへの投資機会を、充実感と高揚感に満ちた投資体験として提供するKeyaki Capitalを創業。一橋大学経済学部卒。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください