久保建英に送られた“スタンディングオベーション”の価値 スペイン人記者「最高のゲーム」

Football ZONE web / 2019年11月12日 19時10分

■ビジャレアル戦で全3ゴールに関与、華麗なミドル弾でリーガ初得点も記録

 マジョルカの日本代表MF久保建英は、11月10日にホームで行われたスペイン1部リーガ・エスパニョーラの第13節ビジャレアル戦に2試合連続で先発出場し、チームも3-1と4試合ぶりの勝利を飾った。

 前節バジャドリード戦(0-3)でビセンテ・モレノ監督はシーズン開幕から初めて4選手を入れ替える大幅なローテーションを実施。久保は第7節アラベス戦(0-2)以来となる5試合ぶりのスタメン復帰を果たした。試合開始直後こそピッチを幅広く動いてボールに絡んでいたが、チームが徐々に押し込まれていくにつれパフォーマンスが低下し、後半23分にピッチを後にしている。チームも今季最大の得点差となる0-3で敗れ、3試合未勝利。3勝2分7敗の勝ち点11で、前節と同じ降格圏一歩手前の17位になっていた。

 一方、今回対戦したビジャレアルは前節終了時点で5勝3分4敗の勝ち点18で8位につけていた。特筆すべきはバルセロナ(29ゴール)に次ぐ25ゴールを記録し、1部リーグ2番目の得点力を誇っていることだろう。また8日に発表された欧州選手権(EURO)予選を戦うスペイン代表の招集メンバーに、最多の4選手(パウ・トーレス、ラウール・アルビオル、サンティ・カソルラ、ジェラール・モレノ)を輩出していることは、このチームが非常に高いポテンシャルを持っていることを物語っていた。

 そんな相手に対し、マジョルカのモレノ監督は、ここまで全試合にスタメン出場していた大黒柱サルバ・セビージャをイエローカードの累積による出場停止で欠いていた。それにより久保を2試合連続でスタメン起用することを決断。前節からGKファブリシオ、MFマルク・ペドラサ、MFサルバ・セビージャに代わり、GKマノロ・レイナ、MFイドリス・ババ、MFアレイシュ・フェバスの3選手が先発復帰している。

 ビジャレアル戦当日のパルマ・デ・マジョルカの気温は10度を切る寒さ。試合直前まで激しい雨が降り、完全に冬の装いになっていた。

 久保はこの日、FWアンテ・ブディミルとMFダニ・ロドリゲスを前線に配置した4-4-2の右サイドハーフでプレー。セットプレーの大部分でキッカーを務めるなど、いつも以上に大きな役割を担い、最終的にチームの全得点に絡む圧巻の出来となった。


本拠地に駆けつけたサポーターも万雷の拍手を送っていた【写真:Getty Images】

■得点シーン以外にも随所で輝くプレー、本拠地ファンから“最大級の賛辞”

 まず前半11分、左CKを蹴った久保が跳ね返ったボールを受け、ビジャレアル2選手を巧みなステップでかわした後、MFビセンテ・イボーラに倒されて最初のPKを誘発した(得点者はFWラゴ・ジュニオール)。さらに前半22分、今度は中盤でダニ・ロドリゲスと絶妙なヒールパスで連係し、PK奪取につながるプレーに関与した(得点者はダニ・ロドリゲス)。

 2点のリードを奪ったマジョルカは後半4分、カソルラのPKにより1点差に詰め寄られ、苦しい時間を過ごすことになったが、その状況を久保が解消した。

 同8分、ペナルティーエリア正面でフェバスからパスを受けると、久保は左足を素早く振り抜き、ゴール右下隅に低い弾道のシュートを突き刺した。このゴールは久保にとって、マジョルカデビューから10試合目での記念すべき初ゴールとなった。

 さらに久保はゴールに絡んだ以外でもドリブルでファウルを誘発し、鋭いクロスを供給。正確なFKを蹴りスルーパスを通すなど、随所に輝くプレーを披露したが、後半22分、モレノ監督の「チームをリフレッシュさせるため」という理由によりピッチを去った。その際、本拠地ソン・モイシュの観衆から最大級の賛辞と受け取れるスタンディングオベーションが送られていた。

 久保の大活躍によりマジョルカは3-1で勝利し、5試合ぶりに勝ち点3を獲得。4勝2分7敗の勝ち点14とし、順位を16位に上げている。

 久保は試合後、この日の自己採点について「試合開始時に一度チャンスに失敗したので10点中9点ですね」と回答。マジョルカ加入後のベストゲームかについては「ゴールを決めたという点ではベストゲームでした」と答え、初得点までに10試合かかったことについては「長かったといえば長かったです。でも入ったので、今までのことは忘れ、この入った感覚を維持していければいいかなと思います」と冷静に答えていた。

 鋭いドリブルによって、第4節アスレティック・ビルバオ戦(0-0)に続き2度目のPKを奪ったことについては、「自分はボールを持った時に違いを出せる選手だと思っていますし、仕掛けないと何も生まれない。積極的な仕掛けがPKにつながったと思います」とコメントしている。


スペインラジオ局「カデナ・セール」のアルベルト・エルナンド記者【写真:高橋智行】

■スペイン人記者も久保を絶賛、圧巻ミドルは「マジョルカに安らぎを与えた」

 前々節のオサスナ戦(2-2)後、おそらく久保も含む今季の新加入選手の貢献度の低さに苦言を呈していたモレノ監督だったが、ビジャレアル戦後の記者会見では「久保が先発し、我々が勝利した最初のゲームとなった。彼は素晴らしい選手であるし、今後もさらに良くなっていくはずだ。でも成長するために落ち着きを与える必要がある。チームに貢献し、何度も攻守にわたってプレーに参加した。素晴らしいゲームをやってくれたよ」と手放しで大絶賛した。久保はそのハイパフォーマンスにより、モレノ監督から称賛の声を引き出すことに成功したのである。

 この日の久保の活躍については、スペインメディアも高く評価した。全国的なスポーツ紙「AS」、「マルカ」とも久保について両チームで唯一となる最高の3点をつけ、久保が試合を決定づけるプレーをしたと強調していた。

 試合後、スペインラジオ局「カデナ・セール」のアルベルト・エルナンド記者も、久保について「ボールを持った時は18歳という若さにもかかわらず、ラウール・アルビオルなどのようなベテラン選手たちと臆することなく対峙していた。チームの指揮を取り、ビジャレアルの選手たちの抗議を受けた最初のPKを誘発した。その後も頻繁にプレーに参加し、3点目のゴールはハーフタイム直後に失点を許し、苦しい時間を過ごしていたマジョルカに安らぎを与えるものとなった。ビジャレアル戦は間違いなく、久保にとって最高のゲームだったよ」と褒め称えた。

 久保が素晴らしい評価を受けるのはおそらく、初先発のチャンスが与えられ、ポストに当てるシュートで名手GKヤン・オブラクを脅かした第6節アトレチコ・マドリード戦(0-2)以来だろう。

 それ以降、1-0で金星を挙げた“所属元”のレアル・マドリード戦を含め、チームが素晴らしい瞬間を過ごしたなかでも上手く流れに乗れていない印象があった。しかし今回のビジャレアル戦で、久保は再び周囲に自らの才能やクオリティーを知らしめることとなった。

 マジョルカはこの後、今シーズン3度目となる代表ウィークを挟み、22日にアウェーでレバンテと対戦する。U-22日本代表に招集されチームを離れている久保だが、ビジャレアル戦のパフォーマンスがモレノ監督の今後の采配にどのような影響を及ぼすかが非常に楽しみな一戦となる。

 再び2週間近くチーム練習に参加できない不利な状況ではあるが、3試合連続のスタメン出場を果たすのか、それともサルバ・セビージャが復帰し、モレノ監督のお気に入りの選手たちが再び先発に名を連ねるのか。現在のマジョルカで久保が置かれている序列に、“革命”が起こることを期待したい。(高橋智行 / Tomoyuki Takahashi)

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