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名古屋生まれの中国人FWはなぜ3部リーグ挑戦を選択したのか 「チーム選びに成功した」と胸を張る訳【インタビュー】

FOOTBALL ZONE / 2024年6月3日 7時30分

■ナツ・タツリュウはカテゴリーを下げ、中国3部広東広州豹での挑戦を選択

 日本のサッカーファンのみなさま、こんにちは。久保田嶺です。昨年10月に「名古屋生まれの中国人FW、社会人リーグ→4部→3部→2部→1部のシンデレラストーリーの舞台裏」という記事を書きました。日本生まれの中国人FW夏達龍(ナツ・タツリュウ)がついに夢の舞台である中国スーパーリーグへ挑戦するというもので、多くの反響をいただきました。しかし、彼は今シーズン、中国3部の広東広州豹サッカークラブへと移籍してプレーしています。なぜ夢の1部リーグを離れ、3部でプレーすることになったのか、取材しました。
   ◇   ◇   ◇

 今年のお正月、上海の龍華寺というお寺へ私が初詣に訪れている際に、ナツ選手から電話がありました。私たちは定期的に「Zoom」を介して情報交換をする仲ですが、今回のように彼のほうから電話をしてくることは珍しく、直感的に移籍のことかもしれないと電話を取りました。

「先ほどチーム(深セン新鵬城)から戦力外の連絡がありました。契約は残っていますが、新シーズンのメンバー構想に僕は入っていないようで。(1部)スーパーリーグの戦いに向けて外国人FWを獲得することが濃厚で、残っても出場時間は全くないと。とりあえず1月の海外キャンプには帯同しながら、新チームを探すことになりそうです」

 私は正直に言うと、取材対象でもあり、友人でもあるナツ選手が中国スーパーリーグで戦う姿を期待していたこともあり、ショックを隠すことができませんでした。しかし、当の本人はあくまで前向きに受け止めている様子でした。

「残念ではありますが、レンタル移籍は十分あるかもと思っていました。そして、こういう難しい時はきっとよりいい経験ができるはずです。中国サッカー界の給与未払いやコロナ禍での隔離開催など、より厳しい経験を中国では乗り越えてきたので、今の僕には全然問題ありません。チームが決まったらまた話をしましょう」


オンライン取材に応じるナツ・タツリュウ【画像:久保田嶺】

■目標は中国3部優勝&得点王

 そして2月、ナツ選手の広東広州豹サッカークラブへの移籍が決定。広東広州豹クラブは、広州自動車工業集団など7つの国家企業が出資をする大型のクラブで、2024年シーズンは中国3部で首位、ナツ選手も6ゴールと得点ランキング2位につけています(5月25日時点)。新しいチームや生活にも慣れてきたということで、インタビューの時間をもらいました。

――まず、なぜ広東広州豹クラブを移籍先に選びましたか。

「ありがたいことに、2部のチームからも複数オファーをもらいました。しかし、また同じ2部でプレーをして昇格を目指す、ということにチャレンジを感じませんでした。それは昨年十分にやり切ったつもりです。なので、違う環境で挑戦したいと思っていました。そんななか、このチームがオファーをくれました。自分でも調べてみると、スポンサー企業も充実しており、安定している。本気で2部リーグを目指すという目標がある。そして若手中心なので僕も経験から何か還元できること、プレーでチームを引っ張ることができそうだと、決断しました」

――ナツ選手自身は2019年以来の3部でのプレーになりますが、当時との違いは感じますか。

「全く違います(笑)。2019年は中国サッカーがどういうものなのか何もかも知らなかったですが、今は余裕があります。コロナ禍での厳しさや、昨年は絶対に昇格するという重圧の中で戦ってきた経験などありますので、見えている景色が違います。それがいい結果につながっているかと思います」

――現在得点ランキング2位、不動のスタメンと調子が良さそうです。

「毎試合メンタル的に余裕と自信を持って戦えています。そして、僕は2部優勝チームから移籍してきたFWということで、みんなの期待を感じていますし、監督も僕も信用してくれています。それが居心地が良く、プレーでも上手く表現できていると思います」

――それでも、スーパーリーグで戦ってみたかったという思いはありますか。

「もちろんなくはないですが、一番はやはり試合に出ることです。それにまだスーパーリーグへの可能性は十分あると思っています。まずはここでの戦いに集中し、2部へ昇格すること。そして、得点王も狙えるポジションにいますので頑張りたいです。その先にまたスーパーリーグへの挑戦も見えてくると思います」

――広州での生活はどうですか。

「成都より正直いいですね(笑)。僕も市内の中心に住んでおり、日本食レストランが数多くあります。また日系企業も多く日本人をたくさん見かけますし、チームのアカデミーにも日本人コーチがいたりと、日本人との交流は成都よりしやすい印象です。ぜひ日本人のみなさんに試合を観に来てほしいです」

――非常に前向きで充実した印象を受けます。

「そうですね。同じく深セン新鹏是城から新チームへ移籍した元チームメイトとも時々連絡をとっていますが、僕のチーム選びは成功したと感じています。中国ではチーム選びに失敗してしまうと給与未払いや解散など、ピッチ外のことに巻き込まれてしまいサッカーに集中できません。それがないクラブを冷静に選べたことも、自分が少しはこの中国サッカー界で成長できたなと感じる部分です」

 中国3部の首位を走るチームを牽引する30歳のナツ選手。中国サッカー界で揉まれた経験から、冷静に現状を受け止め適切なチームでプレーをし、充実したシーズンを過ごしています。このまま3部優勝、そして得点王を獲得し、当初のシンデレラストーリーを上書きする最高のシンデレラストーリーを描いていくことを期待しています。(久保田嶺 / Rei Kubota)

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