J1初ゴール→殊勲同点弾…青森山田卒“柏木の後継者”が躍動 覚醒気配で「今後のスタメン候補」
FOOTBALL ZONE / 2024年6月23日 19時10分
■浦和プロ4年目のレフティー武田英寿が、J1初ゴール含む2得点の活躍
浦和レッズは6月22日のJ1第19節、鹿島アントラーズ戦を2-2で引き分けた。敗色濃厚なチームを救ったのは、今季に向け期限付き移籍から復帰したプロ4年目のレフティー、MF武田英寿の2ゴールだった。
驚きの一撃だった。1-2のビハインドで迎えた後半アディショナルタイム突入直後、左サイドで得たフリーキックで武田がキッカーに立った。中央へのクロスが強く想定される場面で、武田も中に視線を置いて助走を始める時に軽く手も上げた。助走もまたクロスを予感させるようなものだったが、そこから蹴りだされたボールはゴールのニアサイドを強襲。ゴールライン付近でバウンドしながら、ゴールポストのスレスレを抜けてゴールに吸い込まれた。
4万8638人が入った埼玉スタジアム、この状況、ここで直接ゴールを狙える度胸はキックの技術と同じくらい素晴らしいものだった。
試合後の武田は「ルヴァン杯の(V・ファーレン)長崎戦で最後に同じような場面があって、GKにキャッチされた。狙っても良かったかなと後悔していた」ことが決断の理由の1つだと話した。そして、鹿島GK早川友基がゴールエリアのラインに片足が掛かるくらいの位置まで出ていたことも踏まえ、「もちろん自信はありました。決められるなと思ったんですけど、あとはキーパーがどれだけクロスを狙っているか、そこは強いボールを蹴ろうと思った」と話す。そして「最後までゴールは見ず、相手に感づかせないようにはしました」と話した。
このゴールの前にも、途中出場直後の後半32分、右サイドからMF伊藤敦樹が中央に戻したボールに走り込むと、得意の左足で正確に流し込んで追撃弾。プロ4年目の武田はこれがJ1初ゴールだった。
武田は2020年に青森山田高校から浦和へ加入。当時の浦和関係者は、いわゆる「10番」タイプの左利きであることやセットプレーのキッカーになれる点も踏まえ、主力だったMF柏木陽介の後継者という意味合いも獲得への動きにあると話していた。デビュー年は数試合の出場だったが、翌年はリカルド・ロドリゲス監督の指揮下でレギュラー獲得に近づいた。しかし負傷離脱して復帰後はゲームから遠ざかり、夏にさらなる出場機会を求め、期限付き移籍を決断した。
そこからFC琉球、大宮アルディージャ、水戸ホーリーホックと渡り歩き、ボランチでのプレーも経験しながらプロの舞台でフィジカル的に渡り合える強さや守備力も磨いた。昨季の水戸ではリーグ第3位のアシスト数も記録し、今季に浦和へ復帰。ルヴァン杯のガイナーレ鳥取戦では浦和での初ゴールを決め、リーグ前節のセレッソ大阪戦ではFWブライアン・リンセンに正確なクロスを上げてアシストを記録していた。
■元浦和のMF原口元気からも期待の“檄”「もっとできるだろ」
全体練習後に居残り練習をする武田の姿は日常でもある。先週と今週の前半に練習参加していた元浦和のMF原口元気とは居残りでのシュート練習をする姿もあった。原口は「気持ちはヒデ(武田)とかヨウタ(堀内陽太)と一緒の感覚で接することもできる。多少、上から『もっとできるだろ』なんて言うけど、それは上手くなって欲しいし、彼らからも向上心を感じる」と話していた。
武田も「一緒に自主トレをしてくれているノブさん(池田伸康コーチ)やサコさん(前迫雅人コーチ)、あとは堀内陽太とか佐藤瑶大君とか、終わってからも一緒にトレーニングしている仲間のおかげで、今は頑張れている」と感謝の言葉を残した。
前線に負傷者が多い中でカップ戦やリーグ戦でめぐってきたチャンスに自らの質を見せている武田について、ペア・マティアス・ヘグモ監督は「チームの中でも意欲的に向上心を持って成長している1人だと思う。攻撃面だけではなく球際の力強さも身についてきている。もちろん今後のスタメン候補に挙がってくる」と話した。
途中出場すれば、実績ある周囲の選手も武田にセットプレーのキッカーを任せる。そうした信頼も感じると話す22歳は、さらに存在感を大きくしていきそうな気配を見せている。(轡田哲朗 / Tetsuro Kutsuwada)
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