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鈴木優磨が感じさせる“チームの命運” 存在感から浮かび上がる不在時のリスクと燃料切れ【コラム】

FOOTBALL ZONE / 2024年6月29日 6時50分

■【カメラマンの目】G大阪戦では前半に優勢も0-0ドロー

 今シーズンの主役となるチームにも目星が付き、後半戦へと突入したJ1リーグ第20節。6月26日、鹿島アントラーズはホームでガンバ大阪との一戦に臨んだ。上位対決となったこの試合は、好調なチーム同士の対戦ということで互角の攻防を予想したが、前半に限って言えばその考えは大きく覆され、鹿島の攻撃が目に留まる展開となった。

 鹿島はリーグ上位に進出し、チームのスタイルも定まってきたことで選手たちにも自信が漲り、その思いがプレーに表れていた。試合開始から素早く縦にボールを運ぶ迫力ある攻撃で、G大阪ゴールへと迫った。

 しかし、結果的にこのG大阪戦は0-0のドロー決着となる。さらに直近の2試合を含めて、鹿島は3試合連続の引き分けで勝利を挙げられていない。だが、激しい守備で相手選手からボールを奪取し、そこから素早くゴールを目指す鹿島のスタイルは、攻撃に転じてからの仕掛けの多彩さとプレースピードが増し、ここにきて完成度が高まっている印象を受けた。

 パス交換における多少のズレも、旺盛な動きでボールに追い付いてミスを帳消しにしてしまう。チームの好調を意味するミスを恐れない大胆で力強いプレーが随所で見られた。G大阪の攻撃を封じるマークは激しく、攻守が入れ替わればスピードに乗ったパス交換と鋭さを纏ったドリブルで強敵に挑んでいた。いまの鹿島ではダイナミックなリズムを作り出せない選手はピッチに立つことは難しい。そう思わせるほど、選手たちは迫力あるプレーを生み出していた。


遜色なくポジションをこなす知念慶【写真:徳原隆元】

 選手個人にフォーカスすれば、知念慶は鋭いタックルでG大阪の攻撃の芽を摘み取り、もはや違和感なく与えられたボランチというポジションをこなしている。

 カメラのファインダーに捉えた佐野海舟のプレーで目を引いたのは、正確に前線の味方へとつなげる中・長距離のハイボールのパスだ。グラウンダーのパスも威力を発揮していたが、長い距離のパスになると、まるで弓の名手が矢を放つように、ボールは的となる味方選手へと吸い込まれるように飛んでいく。そのキックは勢いがあり、精度も高い。

 そして、攻撃の中心となっているのが、言うまでもなく鈴木優磨だ。前線で幅広い動きを見せ、チャンスメイクにフィニッシュとさまざまな場面に顔を出し攻撃をリードする。

 ベルギーでのプレー経験を経て、2022年から再び鹿島でプレーする鈴木は、チームの中心選手として活躍している。チームが低調なときに向けられた批判にも矢面に立ち、ピッチ内外で鹿島を牽引してきたが、今シーズンはこれまで以上に圧倒的な存在感を放っている。

 ほかのチームを見渡してみればヴィッセル神戸の大迫勇也、横浜F・マリノスのアンデルソン・ロペス、そしてG大阪の宇佐美貴史と前線で存在感を発揮している選手はいる。だが、鈴木以上に1人の存在が、チームの勝敗に大きく影響を及ぼしている選手はいない。今シーズンの鹿島にとって絶対的な選手だ。


キックの精度と勢いが光った佐野海舟【写真:徳原隆元】

■鹿島のダイナミックさは90分間継続が困難

 ただ、好調な鹿島にも不安材料や課題がないわけではない。強敵のG大阪を相手に、鹿島サポーターたちが快哉を叫んだダイナミックなプレーは、前半の45分だけに限られていた。さすがに後半は体力が消耗してペースダウンし、G大阪に主導権を握られる時間が長くなった。

 鹿島は剛の鈴木とは対照的に繊細なボールタッチでチームにリズムをもたらした宇佐美を中心とした攻撃に晒される。なんとかゴール中央を固めて失点を許さなかったが、後半は劣勢の展開を強いられることとなった。

 現実的に考えて肉体的に負担のかかる、相手を圧倒するアグレッシブなプレーを90分間やり続けるのは難しい。ただ、優勝を目指すうえで勝ち点3を奪取するための“攻め勝つ”プレーは絶対に必要になる。それだけに相手の牙城を攻め落とす気概から生まれる迫力あるプレーを試合のなかで、どれだけ長く続けられるかが今後の鹿島の課題だ。

 そして、もっとも懸念されることは、鈴木が怪我などの理由で長期不在となった時だ。チーム戦術も浸透し、それを的確にこなす技術を持った選手が揃う鹿島だが、攻撃面において鈴木の能力に依存している部分は非常に大きい。それだけに彼が不在となるとチーム力がダウンするとは否めないだろう。

 精神的にも肉体的にもタフな鈴木だが、もし彼がプレーできなくなったとき鹿島は好調を維持することができるのか。いずれにせよ、チームの命運を握っているのは、アグレッシブなサッカーの体現を目指す中心にいる、背番号40の攻撃のオールラウンダーであることは間違いない。(徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)

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