「あいつに決めさせたい」男へ…柏から世界へ羽ばたくパリ五輪エースの覚悟「自分がやらなきゃ」
FOOTBALL ZONE / 2024年7月20日 6時50分
■【大岩ジャパン18人の肖像】FW細谷真大(柏レイソル)が描いた成長曲線
大岩剛監督率いるU-23日本代表は、今夏のパリ五輪で1968年メキシコ五輪以来、56年ぶりのメダル獲得を狙う。4位でメダルにあと一歩届かなかった東京五輪から3年、希望を託された大岩ジャパンの選ばれし18名のキャラクターを紐解くべく、各選手の「肖像」に迫る。
◇ ◇ ◇
巧くて、速くて、強い。ゴールに一直線に向かう姿はまさにストライカー。柏レイソルの絶対的なエースである細谷真大は、ゴールへの鋭い嗅覚を武器に緩急をつけた多彩な動き出しを駆使して最前線に飛び出していく。
柏レイソルアライアンスアカデミーである「柏レイソルTOR`82」からレイソル一筋。常に黄色のユニフォームを身に纏ってチームの勝利のためにゴールを決めてきた彼が、今度は日本のエースとしてパリ五輪でチームを勝利に導くストライカーとしての期待を一身に背負っている。
よく「いいストライカーとはどんな選手か?」と聞かれるが、その答えはもちろんゴールを奪えることにあることは間違いないものの、その選手が挙げた1つのゴールがチームを一気に盛り上げる、活気付けるということも付け加えたい。仮にゴールを奪えなくても、周囲が「あいつに決めさせたい」「決めて欲しい」と思える選手こそが本物のストライカーであるという答えだ。
細谷はその要素を持っている。柏U-18時代にも「真大に預ければなんとかなる」という共通認識がチームにあった。その一方で、「なるべく真大にいい形でつなぎたい」という気持ちも全員が持っていた。だからこそ、常に彼の動きを見て、パスをつなぎながら前を意識して全員がプレーするスペクタクルなサッカーを当時の柏U-18が繰り広げていた。
「ゴールを決めるということは、周りが僕にボールを運んできてくれた感謝の気持ちも含めて、自分がやらないといけないことなんです」
細谷自身も周りに感謝の気持ちを持ちながら、「自分が決める」という強い信念の覚悟を持ってピッチに立っているからこそ、周りは彼を信頼する。高校3年の時はすでにトップデビューを果たすも、ユースに戻ってくると誰よりもハードワークをして、貪欲にゴールを狙い続ける。常に全力の姿勢もまた、周りを惹きつける彼の魅力だった。
柏一筋でプレーし、パリ五輪に挑む【写真:徳原隆元】
■U-23アジア杯では苦戦も…準々決勝で勝利を手繰り寄せた決勝弾
プロ1年目こそ、当時圧倒的な存在感を放っていたオルンガの壁を破れず、リーグ戦はわずか2試合出場に留まったが、オルンガが移籍をした2年目にコンスタントに出番を掴むようになり、3年目の2022年にはついに不動のエースとしてリーグ8ゴールをマーク。この年のJリーグベストヤングプレーヤー賞に輝いた。
J1屈指のストライカーに成長すると、昨年は凄みを増したスピード、技術、強さを駆使して自身初の2桁となるリーグ14ゴールを叩き出すなど大車輪の活躍を見せてA代表入り。11月のFIFAワールドカップ(W杯)アジア2次予選のシリア戦でA代表初ゴールをマークした。
今年もA代表としてアジアカップに出場。U-23日本代表に当然のように選ばれたが、4月のU-23アジアカップではなかなかゴールが出ずに苦しんでいた。グループリーグ3試合全てに出場をするもノーゴール。しかも初戦以降はスタメンからも漏れていた。
この状況に対して周りのチームメイトが「真大に点を取らせたい」という気持ちになっていた。だからこそ、ノックアウトステージに移行した準々決勝のカタール戦でスタメン復帰をした細谷に周りはボールを集め続け、2-2で迎えた延長前半11分の値千金の決勝ゴールに結び付けた。
このシーン、MF荒木遼太郎からのスルーパスを得意の鋭い動き出しと、相手を弾くフィジカルの強さ、ファーストタッチの置き所の巧さを発揮してGKとの1対1に持ち込み、右足で冷静にゴールに沈めた。その瞬間に歓喜の疾走をする細谷に対して、関根大輝や荒木など周りの選手が喜びを大爆発させながら抱きついていく。このシーンがチーム全体の思いを如実に示していた。
彼の積み重ねてきた努力と、周りの「あいつに決めさせたい」という思いが最高の形で結実した瞬間であった。その後の彼のエースとしての活躍は言わずもがなで、準決勝の決勝弾を含めて、優勝への貢献度は計り知れなかった。
パリ行き直前の天皇杯3回戦でも筑波大相手に苦戦するチームにおいて、途中出場から延長前半に決勝ヘッドを叩き込むなど、チームが苦しい時にゴールを決める存在感を見せて、本番へと臨む。
パリでチームに勢いを付けるゴールをここぞというところで決める。大岩ジャパンのエースストライカーたる所以を示す舞台はすぐそこまで迫っている。(FOOTBALL ZONE編集部)
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