J未経由→欧州挑戦の逸材 「最後の砦」の自負…次代の森保J正GK候補に名乗り
FOOTBALL ZONE / 2024年7月22日 7時1分
■【大岩ジャパン18人の肖像】MF小久保玲央ブライアン(シント=トロイデン)柏U-18時代から安定感が大幅アップ
大岩剛監督率いるU-23日本代表は、今夏のパリ五輪で1968年メキシコ五輪以来、56年ぶりのメダル獲得を狙う。4位でメダルにあと一歩届かなかった東京五輪から3年、希望を託された大岩ジャパンの選ばれし18名のキャラクターを紐解くべく、各選手の「肖像」に迫る。
◇ ◇ ◇
大岩ジャパンの守護神・小久保玲央ブライアンはパリ五輪前に大きな決断を下した。
2019年にトップ昇格をせずにポルトガル1部の名門クラブであるベンフィカに移籍。U-23チームでプレーし、22-23シーズン以降はトップチームに帯同するチャンスも掴んだ。そしてパリ五輪メンバー発表後の今年7月11日、ベルギー1部シント=トロイデンへの完全移籍が発表された。この移籍は彼にとってヨーロッパの1部リーグで守護神の座を掴み取ってプレーするという覚悟の表れでもある。
今、Jリーグを経由せず高校卒業後の10代のうちに海外クラブへ移籍するパターンは珍しくない。もちろん、Jリーグを2、3年経験してから海外に出て大成功を収めるケースは、高卒即で行くよりも数多くある。それゆえに「Jリーグを経由してからでいいのでは」という声も根強くあるが、小久保に関してはすぐに海外に飛び出してもいい才能の1人だと感じる。
理由は彼が海外にルーツを持つことで、身長193センチのサイズと長い手足、そしてずば抜けた身体能力を持っている。柏レイソルのアカデミーで育った彼は、着実にGKとしての基礎技術を身につけて行った。
もちろん、順調に成長して行ったわけではなく、柏U-18時代はプレーの波が激しく、出番を掴めないことも多かった。高校3年生で正GKを掴んでからも、試合中にプレーの波が崩れることもあった。
だが、その度に「常に冷静にやらないといけない。戦う気持ちはもちろん失ってはいけないけど、やっぱりGKは最後の砦だからこそ、冷静になるべきところはならないといけない」と自分に言い聞かせながらやったことで、経験した失敗が次々と彼のプレーの土台になっていった。
■パリ五輪前に決意のシント=トロイデン移籍
こうした経験と柏U-18の一員としてカタールで開催されたアルカス国際カップで活躍し、準優勝と大会最優秀GKに選ばれたことで世界のクラブのスカウトの目に留まり、自身も海外でプレーするイメージも広がったことで、彼はトップに進まずに海を渡ることを決意した。
抜群の反射神経とセービング中にグンと伸びる手足。彼の能力を考えたら、日本国内でプレーを続けるより、シュートスピードや打ってくるタイミングが異なるヨーロッパでプレーを続けたほうが、GKとして成長するのではないか。次世代のGKとしての期待を背負って彼はポルトガルの超名門クラブに渡った。
結果、彼は4シーズン半の時間をベンフィカで過ごした。トップチームでデビューすることは叶わなかったが、彼は2シーズン目でUEFAユースリーグにおいてファイナルまで進出。決勝でラウール・ゴンサレス監督率いるレアル・マドリードと対戦し、敗れはしたがフル出場を果たした。2022年にはベンフィカBでプレーするようになり、ポルトガル2部リーグで経験を積みながら、トップまであと一歩のところまで奮闘を見せた。
彼が望んだ結果ではなかったと思うが、彼にとってこの4シーズン半はカテゴリーこそ違えど、コンスタントに試合出場を重ねたことで、ヨーロッパで土台を作るうえにおいて重要な時間となった。
実際に4月のU-23アジアカップでは成長した姿を見せた。初戦の中国戦でいきなり退場者が出て数的不利になるアクシデントにも全く動ぜずにスーパーセーブを連発。それ以降も劣勢に立たされても波が全くないプレーでチームに安定感をもたらし、ウズベキスタンとの決勝戦では1点リードの後半アディショナルタイムにPKをビッグセーブ。MVP級の活躍で優勝に大貢献した。
そして前述した通り、パリ五輪の前に正GKだった鈴木彩艶が退団したシント=トロイデンへの完全移籍。パリ五輪後にベルギー1部リーグでレギュラーとして活躍し、積み上げた土台にさらなる進化を上積みしていくフェーズに入る。
今、A代表の守護神争いは混沌としている。川島永嗣という絶対的な存在から、カタール・ワールドカップ(W杯)では権田修一がゴールを守った。そして「その次」がまだ定まっていない。一歩リードしているのは小久保の2学年下の鈴木彩艶だが、まだ不動の存在ではない。同時に、鈴木と同い年でパリ五輪メンバーの野澤大志ブランドンもその座を虎視淡々と狙っている。
だからこそ、このパリ五輪は彼がこれからステップアップをしていくにあたって、重要な足掛かりとなる。相当な覚悟と冷静さを持って、彼は大岩ジャパンのゴールマウスの前に立つ。(FOOTBALL ZONE編集部)
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