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「スマホ開けばOAの話題」 複雑な感情と戦い…日本はなぜ「期待できない」声を一蹴できた?【現地発】

FOOTBALL ZONE / 2024年7月30日 7時50分

■大岩ジャパンはパラグアイ、マリを撃破して準々決勝に進出が決定

 大岩剛監督率いるU-23日本代表が2連勝で決勝トーナメント進出を決めた。1996年のアトランタ大会にオーバーエイジ(OA)枠が採用されて以来、オーバーエイジ枠を使用せずに初めて決勝トーナメント進出となった。

 今回のOAはそもそも、A代表で主力級の選手に限った招集が考えられていた。基本的にはクラブでの海外経験も代表での試合も経験し、五輪チームにとってメリットのある選手に限られた。だが、当然そうした選手は、代表に拘束力のない夏のこの時期に招集が難しく、最後の最後まで大岩監督はトライしたが招集は叶わなかった。最初から呼ぶ必要がないと考えていたわけではなく、呼びたいけれど呼べなかったというのが現実だ。

 では、オーバーエイジ招集のメリット(=単純な戦力アップ)を享受できなかったにもかかわらず、大岩ジャパンチームとしてはソリッドな戦いを見せることができているのはなぜか。

 まずは戦術の徹底が可能になったということ。この世代としての活動を長く続けてきたメンバーで構成されているということ、長く時間を共にし、考え方を共有できているからこそ戦術の徹底は可能になる。マリ戦の守備について、大岩監督は「我々のね、ミドルゾーンでの守備の仕方というのは、もう誰と誰がやっても連動性と、あとうしろへの一歩前は、口酸っぱく言ってきているんで、それをもう無意識のうちにやっていると思うし、それが我々の生命線なんで」と考えなくても同じ方向を向くことができるレベルまで、全選手に戦い方を落とし込めていると認めている。

 OA枠を採用した場合、年単位で活動に参加が可能なわけではなく、長くても直前合宿からの参加になる。今回でいえば、6月のアメリカ遠征での参加も検討されていたが実現せず、7月にマルセイユ郊外で行われた事前合宿であれば参加可能かと見られていたがそれも叶わず、本番も不可能だったという流れ。どの段階で入ってきていたにせよ、どれだけ実力のある選手がきたとしても“無意識レベルの意思疎通”を図ることは難しい。戦術の徹底という意味ではOA枠を使わなかったこと自体がプラスに作用したと見ている。

 もう1つ、選手たちの経験、コンテクストの共有。戦術面、戦い方というピッチ内の記憶だけでなく、大会の合宿などを含めた時間の共有による精神的な一体感は同世代ならではのものだ。この世代では4月から5月に行われたパリ五輪アジア予選を兼ねたU-23アジアカップでの優勝を経験した。五輪のわずか3か月前に得た、この大岩ジャパンにとってそこまでで最高の記憶を共有できる仲間と大舞台に臨みたいと考えるのは自然なことだ。

 一方で選手たちは、OA枠がどのように扱われるのか終始気にしていた。ここまで2得点の山本理仁は「毎日スマホを開けば上の方にOAの話題がきているから否が応でも考える」と話しており、目を背けることさえ許されなかった。「ずっと(山本がプレーする)真ん中のポジションの選手の名前が出ていたので気にしていました。いてくれるのはもちろん心強い。チームとしてはいてほしいけれどライバルが増えるわけですから」と、五輪メンバーに選ばれた後、複雑だった心境を振り返っている。

 また、山本は藤田譲瑠チマらと共に東京五輪でトレーニングパートナーして大会期間を共に過ごした。東京大会では吉田麻也、酒井宏樹、遠藤航とA代表の主力が招集されており、彼らの様子をつぶさに観察したという。

「やっぱり彼らがどれだけチームに尽くしているか、リーダーシップを発揮していたかを考えるとOAの重要さは分かっています。でも僕自身もメンバーに入りたいから、ひと枠持っていかれるのは複雑」とひたすら複雑な感情との戦いだったようだ。

 今回の大岩ジャパンでは、OA枠を使用せず「だから期待できない」という話の中で使われる。だからこそ、そんな世間の声を黙らせる見返す活躍をまだまだ見ていきたい。(了戒美子 / Yoshiko Ryokai)

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