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日本戦でも「空席が目立った」 “客寄せパンダ”も限界…存続危機の五輪サッカー【コラム】

FOOTBALL ZONE / 2024年8月3日 9時49分

■日本は今大会オーバーエイジなしで戦った

 1900年の第2回パリ大会で正式競技に採用されたサッカーは、参加選手資格を変えながらも「特異な存在」として続いてきた。「世界最高峰の大会」の中での「世界最高峰ではない競技」。国際サッカー連盟(FIFA)と国際オリンピック委員会(IOC)の関係から五輪サッカーを考える連載を5回にわたってお届けする。第4回は五輪サッカーの未来について。(文=荻島弘一)

   ◇   ◇   ◇

 日本は今大会、参加16チームで唯一オーバーエイジを使わなかった。いや、使えなかったといっていい。もちろん、リストアップはしていたし、候補の選手はいた。しかし、クラブ事情などで招集はかなわず。結果的に23歳以下だけで戦うことになった。

 アリバイ的に「オーバーエイジ」を使うことはせず、23歳以下で戦うことを決めたのは、大岩監督の英断だと思う。残念ながらベスト8で敗退したが、金メダルを狙える力は十分にあったはず。オーバーエイジ抜きで優勝を果たせば、今後の五輪サッカーの在り方に一石を投じることになったと思うと、残念でたまらない。

 冷静に考えて。かなり無茶な大会ではある。中2日での連戦は、ほかの世界大会では考えられない。しかも、開催都市だけでなく全国で開催だから移動もある。時期的にも7月から8月で暑さは最悪。東京大会ほどではないとはいえ、選手への負担は相当大きくなる。

 招集に応じる義務のない過酷な大会に、喜んで選手を出すチームはない。最低でも3試合、最多で6試合を戦う選手たちの疲労は大きく、直後に開幕するシーズンへの影響は否定できない。

 実際に21年に欧州選手権(EURO)、東京五輪とフル稼働したスペイン代表MFペドリは、その後負傷で長期離脱した。今大会はどのチームも選手の招集に苦慮している。たとえ23歳以下でも、EUROやコパ・アメリカで活躍した選手の招集は難航。日本が敗れたスペイン代表も、EURO主力の招集は見送り。日本戦2得点のFWフェルミン・ロペスは優勝メンバーではあるものの、グループリーグで28分プレーしただけ。バルセロナ所属の好選手だが、母国を欧州王者に導いたわけではない。

 オーバーエイジも同様だ。大会前にはフランス代表のキリアン・ムバッペやアルゼンチン代表のリオネル・メッシらの出場もうわさされたが、どちらも実現せず。各国のオーバーエイジの顔ぶれを見ても、いわゆるスーパースターと呼ばれるような選手は少なかった。

 年齢制限のあるチームに無制限の選手を3人加えるという摩訶不思議な制度は、もともと「集客」のために考えられたもの。23歳以下の選手だけでは集客が難しいからと、IOCのごり押しを受けて「お客を呼べる選手」を出場させるために作ったものだ。

 過去には、ワールドカップ(W杯)で実績のあるスター選手が出たこともあるが、今大会に関しては思惑外れ。それどころか、23歳以下のスター選手も五輪を回避している。EUROだけでなく、今年はコパ・アメリカも五輪直前に開催。今後も4年周期で五輪年に開催されることが決まったから、南米のトップ選手の出場も、欧州同様に難しくなる。

 今大会も、地元フランスの試合以外は決して観客動員がいいというわけでもない。準々決勝の日本対スペインも、スタンドには空席が目立った。ただ、今後も状況が好転するとは思えない。クラブの五輪離れがさらに強くなれば、メンバー招集が難しくなり、まともなチーム編成ができなくなる。そんなチームが集まって試合をしても、五輪サッカーの価値は下がるだけだ。

 新しい「若者受けする」競技を次々と加え、五輪自体も変革の時を迎えている。かつてのように「サッカーに頼る」必要はなくなるのではないか。トップ選手が出ないのなら、なおさらだ。FIFAも過密日程で苦しむ選手に配慮して、一度は断念した「年齢制限引き下げ」を持ち出すかもしれない。再び、五輪サッカー存続がピンチになる。

 16年リオデジャネイロ五輪男子サッカー決勝戦。他競技のブラジル代表選手まで集まった熱気のマラカナン競技場で、ネイマールが初の金メダル獲得を決めるPKを決めた瞬間は鳥肌が立った。ただ、相手のドイツ選手はほとんど知らない。それが、五輪サッカーの現実だ。

 サッカーを五輪競技から外せば、その分の選手数をほかの「五輪しかない」競技に回せる。サッカー界としても過密日程による選手の負担を軽くし、選手の供出を渋るクラブとの関係も良くなる。

 もちろん、女子をどうするかの問題もあるし、各国には資金確保のために五輪競技であることが必要なサッカー協会もある。それらを考えても、五輪サッカーが限界にあるのは間違いない。サッカーがない五輪、決して可能性がないわけではない。(荻島弘一/ Hirokazu Ogishima)

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