「セカンドキャリア」の表現に違和感 日本代表OBが「スポーツの価値の最大化」に込めた思い
FOOTBALL ZONE / 2024年8月10日 8時30分
■元日本代表FW大津祐樹氏は大学生を支援するプロジェクトを2019年に発足
昨季限りで現役を引退した元日本代表FW大津祐樹氏は、大学生支援プロジェクトを運営する株式会社「ASSIST」の代表取締役社長を務める。サッカー選手としてピッチに立つと同時に、「アスリートの価値を高める」ことに注力してきたなかで、「スポーツ界の“全体値”を上げたい」と思いを語っている。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小田智史)
◇ ◇ ◇
大津氏は現役時代、柏レイソルでプロキャリアをスタートさせ、ドイツ1部ブンデスリーガのボルシアMG、オランダ1部エールディビジのVVVフェンロと海外リーグを経験。2014年12月に国内復帰を決断し、柏、横浜F・マリノス、ジュビロ磐田でプレーした。
まだ現役プロサッカー選手としてピッチに立っていた2019年9月、大津氏は元日本代表DF酒井宏樹(オークランドFC)とともに発起人となり、大学生を支援するために「Football Assist」と題したプロジェクトを立ち上げ、自身も株式会社「ASSIST」の代表取締役社長に就任。現在では、「大学生支援」「小学生支援」「オンラインコミュニティ」を行っている。
サッカー界では、大津氏や酒井のように現役中にビジネスやプロジェクトを始める例は少なくない。大津氏が目指すのは、「スポーツの価値を最大化させる」ことだ。
「選手として(サッカー界の)中にいたからこそ、(現役を引退して)外から見て分かることもあります。アスリートの価値を高めていきたい。そのためにはまだまだ足りない部分があると思っています。ビジネス的な目線でもそうだし、クラブも成長しないといけない。ただ、間違いなくいい方向には向かっているので、それがよりよいものになるための活動をしていきたいと思っています」
■「代表」の立場は「あまり難しさは感じない」
スポーツ界では、引退後に指導者の道を進む者もいれば、解説者、はたまた全く違う業界に挑戦する者もいる。近年はこの次なるチャレンジを表す「セカンドキャリア」という言葉が広く認知されているが、大津氏は「セカンドキャリア」という表現には違和感があるのだと明かす。
「なぜ、アスリートだけ『セカンドキャリア』という表現になるのか、ずっと疑問に思っています。僕はサッカーをやってきたことが今につながっていると思うし、これからの人生に生かせる武器を持っているんだと思っていて、引退後も含めて『1つのキャリア』を歩んでいると思っています。『ファースト』『セカンド』と分けられる印象になっているのは見方として少し違う気がしますし、サッカーを辞めたら、サッカーをやっていたことがなくなってしまうみたいな考えは正直好きじゃないです」
そうした固定観念を覆す意味でも、大津氏は自分が先頭に立っていく意思を示す。
「選手はとことん応援してもらわないといけないし、ファン・サポーターも応援し続けてほしい。そうなるだけで、サッカーやスポーツの評価もまた変わってくると思います。ただ、みなさんが言う『セカンドキャリア』を僕がちゃんと体現できれば、もっと説得力もあるし、評価が上がるはず。お互いに相乗効果が生まれると考えています」
現在務める「代表」という立場に関して、「あまり難しさは感じない」と話す大津氏。「むしろ楽しいと感じることのほうが多いです」と笑顔を覗かせる。
「(酒井)宏樹と今後について話したりしますが、僕らは『スポーツの価値を最大限に高める』ことにフォーカスしています。スポーツの価値を高めることでアスリートの価値が高まるし、その逆もしかりで、アスリートの価値を高めることでスポーツの価値も高まる。そして、アスリートを応援してくれるファン・サポーターの質が上がれば、サッカーをはじめとした競技ごとの盛り上がりももっと大きくできる。“全体値”を上げていくことを今後のビジョンとして持っています」
プロサッカー選手の立場を離れ、これまで以上にプロジェクトに注力する大津氏に懸かる期待は大きい。
[PROFILE]
大津祐樹(おおつ・ゆうき)/1990年3月24日生まれ、茨城県出身。180センチ・73キロ。成立学園高―柏―ボルシアMG(ドイツ)―VVVフェンロ(オランダ)―柏―横浜FM―磐田。J1通算192試合13得点、J2通算60試合7得点。日本代表通算2試合0得点。フットサル仕込みのトリッキーな足技や華麗なプレーだけでなく、人間味あふれるキャラで愛されたアタッカー。2012年のロンドン五輪では初戦のスペイン戦で決勝ゴールを挙げるなど、チームのベスト4に大きく貢献した。23年シーズン限りで現役を引退し、大学生のキャリア支援・イベント開催・備品支援・社会人チームとの提携・留学などを行う株式会社「ASSIST」の代表取締役社長を務める。(FOOTBALL ZONE編集部・小田智史 / Tomofumi Oda)
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