VARにも「チャレンジ制」を サッカー五輪で露呈…“健全運用”へ本来のあるべき姿【前園真聖コラム】
FOOTBALL ZONE / 2024年8月9日 6時50分
■準々決勝で細谷のゴールがオフサイドにより取り消し
パリ五輪では競技とともに審判に関する話題も多く上がっている。どのスポーツでもルールの適用が間違っているのではないかという意見が出て、SNS上ではヒートアップもしている。その一方で、日本五輪サッカーチームの試合では、ルールの適用間違いではない場面が大きな話題になった。ルール通りではあるものの、果たしてそれでいいのか。そしてそういう場面を生んだビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)の運用はこれでいいのか。1996年アトランタ五輪チームのキャプテンで、元日本代表MF前園真聖氏に話を訊いた。(取材・構成=森雅史)
◇ ◇ ◇
パリ五輪ベスト8の日本対スペイン戦で、とても気になったことがあります。それはなんと言っても細谷真大(柏レイソル)のゴールがオフサイドで取り消されたことです。
前半40分、ゴール前で相手選手を背負っていた細谷にパスが通ると、細谷は身体を使って上手くスペースを作り、反転するとGKの逆を突いてネットの中に蹴り込みました。ですがVARが介入し、パスが出た時点でゴールに背を向けて相手選手と押し合いながらポジション取りをしている細谷の足が最終ラインから出ていたということでオフサイドになり、得点は取り消されました。
確かに足が出ていたのでオフサイドというのは間違いないでしょう。「戻りオフサイド」という意見もありましたが、僕はまた違うシチュエーションだと思います。この事例ではオフサイドのラインが引かれた画像が出てこなかったので、分かりづらくて不満が出てきたのではないかと思います。今回の五輪ではオンフィールドレビューで判定を下したあと、主審がマイクで判定内容を説明するようにしていましたが、やはりしっかりと分かりやすい画像で見せるべきでした。
何より、相手を背負っているのにオフサイドというのは非常に珍しいシチュエーションだったと思います。これでオフサイドを取るというのは、ポストプレーのやり方を変えなければならなくなります。サッカーの競技規則(ルール)は毎年ハンドがいろいろ変わってきているように、こういうタイプのオフサイドは取らないというように変更を考えてもいいのではないでしょうか。
■VARの適用方法も検討すべき
また、VARが細かい部分をあぶり出しすぎてサッカーの面白さを消しているという意見もあるようです。でも、僕はVARをむしろ継続したほうがいいと思っています。VARがなかった時代はもっと誤審がたくさんあったと思います。
ただ、VARがあることでいろいろな場面で「これはVARで確認したほうがいいのではないか」ということが起きました。今のVARシステムはすべてのプレーを確認しているのですが、その内容が示されないために「本当に確認しているのか」という疑心暗鬼を生じるような気がします。
またVARで確認する時間があるため、アディショナルタイムはずいぶん延びています。もちろん、審判の努力で短くはなってきているのですが、それでもVAR導入前に比べるととても長くなりました。またVARの判定待ちという時間も、ずっとゲームが途切れないというサッカーの良さを損なっている気がします。
そういうことを考えると、VARの適用方法も考えたほうがいいでしょう。ほかの競技でやっているように、「チャレンジ制」にしてはどうでしょうか。各チーム2回のチャレンジの権利があるということにすれば、VARの介入は多くても4回。アディショナルタイムも短くなるでしょうし、選手も「VARに確認してくれ」と審判に詰め寄ることもなくなります。
また、そのチャレンジをどこで使うかという戦略性も出てきますし、そこに「どうやってチャレンジを使ったのか」というストーリー性も生まれてきます。
サッカー競技規則の変更は国際サッカー連盟(FIFA)ではなくて国際サッカー評議会(IFAB)の管轄です。来年のIFAB年次総会には、ぜひこの2つが議題として上がってほしいと思います。(前園真聖 / Maezono Masakiyo)
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