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鈴木優磨への依存度軽減はチームのレベルアップの証 鹿島が変化した2つの理由【コラム】

FOOTBALL ZONE / 2024年8月20日 7時40分

■【カメラマンの目】鈴木優磨への依存度減少で感じるチーム全体のレベルアップ

 3万3295人の観衆で埋まった県立カシマサッカースタジアムの上空に試合終了のホイッスルが響くと、最後まで激しい攻防を見せていた選手たちは、精根尽き果てたように、ピッチに膝をつき、そして倒れ込んだ。

 Jリーグ誕生時の「オリジナル10」にして、数々の激闘を繰り広げてきた鹿島アントラーズと浦和レッズが対戦したJ1リーグ第27節の一戦は、お互いにゴールを記録することができず無得点ドローで決着を見た。得点こそ生まれなかったものの、両チームの選手たちが激しい闘志を全面に出してプレーした試合は、実に見応えのある内容となった。

 最初に試合の主導権を握ったのは鹿島。ボールを奪うと展開力のあるロングキックや、狙い澄ましてのグラウンダーのスルーパスと多彩な方法で両翼へとつなげる。そこから敵陣深くに進出してゴール前にラストパスを送り、得点への勝負を挑む。立ち上がりの鹿島はボール運びが実にスムーズで浦和ゴールへと迫った。

 この劣勢の展開に浦和もただ手をこまねいているだけではなかった。戦術的な劣勢となった状況に、それならばと個人技で対抗していく。安居海渡や大久保智明が力強く、推進力のあるドリブルで鹿島守備網の攻略を目指す。チーム戦術の面で劣っていたとしても、この個人からほとばしる勇気は、単純な技術の差を超えることになる。戦術が重視される現代サッカーにおいて、力強いドリブル突破による状況打開の挑戦は、互角の勝負へとピッチの光景を変え、サッカーというスポーツの持つ醍醐味を加速させた。浦和の機転の利いた攻撃精神に端を発した、相手の果敢な仕掛けに負けまいとする姿勢のぶつかり合いにより、プレーは激しさを増していった。

 だが、ピッチには険悪な雰囲気はなかった。ゴール裏からカメラのファインダーに捉えた選手たちは、倒し甲斐のある相手と渡り合えることを楽しんでいるようにさえ見えた。

 リーグ上位に位置し好調を維持する鹿島だが、そのスタイルは前半戦と比較して変化を感じた。これまでのスタイルでは攻撃の形を構築するプレーにおいて、アシストからゴールゲットまで鈴木優磨への依存度がかなり高かった。しかし、ここにきて彼への依存度は低くなっている。そうした流れはチーム全体のレベルアップを示す徴候だ。


柴崎岳と三竿健斗が中盤で存在感【写真:徳原隆元】

■柴崎岳と三竿健斗による鹿島の変化

 変化がもたらされた理由は2つあると感じた。1つは昨シーズン途中からチームに戻ってきた柴崎岳が、ディエゴ・ピトゥカと佐野海舟が抜けた中盤で、中心選手として存在感を発揮し出したことが挙げられる。

 この浦和戦でも相手の守備網を巧みに交わし、短長を織り交ぜた正確なパスを前線へと送りチームにリズムを作り出した。守備面でもファウル覚悟とも思える激しいマークで浦和の武器となっていた鋭いドリブル突破を阻止していた。

 もう1つは三竿健斗の帰還だ。ヨーロッパでの経験から、これまで以上にプレーに逞しさが加わった印象を受けた。高ぶった感情を露わにする場面もあり、そうした戦う姿勢を示すことはチームを勝利に向かって鼓舞するうえで重要となる。この中盤の充実は攻撃面での鈴木への依存度を軽減させ、ボールを運ぶパターンを増やし、そしてスムーズにしている。

 攻撃のアシストの面で鈴木に頼ることが軽減されるのなら、鹿島の背番号40には得点王を意識し、よりゴールを目指したプレーを期待したい。ただ、今の鈴木はストライカーに専念せず、ボールに多く触れて攻撃のすべてを司ることによって、自らのリズムを作り出しているように見える。

 昨シーズンの指揮官が採用したサッカーによる、後方からのロングキックを前線で持っているだけの鈴木とは発散する活力が違う。それでも前線にゴールを量産できる圧倒的なストライカーがいることは、混戦となっているリーグ優勝を手にするためのプラス要素となる。

 かつて鹿島の強化の陣頭指揮を執っていた鈴木満氏は、常勝を謡われていた頃でもチームから得点王の選手が生まれる可能性は低いと語っていた。それは前線に中盤、そしてサイドバックの選手が織り成す一気の波状攻撃を武器に、チームのどこからでもゴールを奪える高い組織力を意味し、そこが鹿島の強さの一面でもあった。

 だが、時は流れ、鹿島だけでなくライバルたちも時代に即したサッカーを展開している。前線に絶対的な得点源がいることに越したことはないのだ。

 Jリーグの得点王の歴史を紐解いてみても鹿島に所属した選手が得点王になったのは2008年のマルキーニョスだけだ。そして、その年に鹿島はリーグ優勝を果たしている。(徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)

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