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英3部入り「衝撃」移籍も…J主力タレント流出の是非、代表未経験でも広がる“受け皿”【コラム】

FOOTBALL ZONE / 2024年8月22日 7時20分

■Jリーグでブレイクしたタレントの海外移籍が頻発した夏の移籍市場

 この夏はJリーグで活躍が目立っていたタレントの海外流出が目立っている。川村拓夢(サンフレッチェ広島→レッドブル・ザルツブルク)や佐野海舟(鹿島アントラーズ→マインツ)、毎熊晟矢(セレッソ大阪→AZアルクマール)のような、直近の日本代表に招集経験のある選手、パリ五輪に出場した平河悠(FC町田ゼルビア→ブリストル・シティ)はもちろん、そうしたA代表経験がなくても28歳にして欧州移籍を果たした大橋祐紀(サンフレッチェ広島→ブラックバーン)のように、Jリーグでの活躍が認められて欧州移籍を果たすケースもここ数年で増えている。

 理由はいくつか考えられるが、日本人選手の安定供給力は見逃せない。言うまでもなく、海外で挑戦する日本人選手がすべて順調にステップアップできるわけではないが、ベルギーからドイツ、プレミアリーグ屈指の名門リバプールへと飛躍した遠藤航、シュツットガルトのU-23からトップチームに上がり、そしてバイエルン・ミュンヘンに飛躍したDF伊藤洋輝を代表例として、数多くの選手が最初に所属したリーグやクラブから飛躍を果たす選手の件数も増えてきている。

 佐野のように、Jリーグから5大リーグの1部クラブにいきなり引き抜かれる件数は多くないものの、欧州の第2勢力とも言えるオランダ、ポルトガル、ベルギーでの日本人選手の人気は高まっており、ベルギー1部では日本代表の谷口彰悟やパリ五輪代表GKの小久保玲央ブライアンが加入したシント=トロイデンや、伊藤敦樹が浦和レッズから移籍したヘント、高嶺朋樹が柏レイソルから移籍したコルトレイクなど、日本人選手が所属していないクラブを探すほうが難しいぐらいだ。さらに、ここに来て非EU選手の保有条件が緩和されたイングランドの2部に相当するチャンピオンシップなども、日本人選手をターゲットにしてきている。

 現在は新天地のブラックバーンでいきなりゴールラッシュを見せている大橋や平河のほか、昨シーズンはプレミアリーグでデビューした橋岡大樹(ルートン・タウン)、角田涼太朗(カーディフ・シティ)、坂元達裕(コベントリー・シティ)、斉藤光毅(クイーンズ・パーク・レンジャーズ)の6人が在籍しており、遠藤や冨安健洋(アーセナル)、三笘薫(ブライトン)、菅原由勢(サウサンプトン)、鎌田大地(クリスタル・パレス)が在籍する世界最高峰のプレミアリーグ昇格を目指して、しのぎを削る。また海外移籍のために川崎フロターレを離れた瀬古樹の行き先はやはりチャンピオンシップのストーク・シティであると伝えられる。

 大手データサイト「オプタ」の独自調査による世界のリーグランキングによると、チャンピオンシップは6位で、オランダ、ポルトガル、ベルギーの1部より上に位置している。ちなみにJリーグは25位に評価されていた。そうした流れにあっても、今シーズンのJ1でブレイクした21歳の横山歩夢が、夏の市場でサガン鳥栖からイングランド3部に相当するリーグワンのバーミンガム・シティに移籍したのは衝撃的だった。バーミンガムはチャンピオンシップから降格した古豪で、日本代表経験のあるMF三好康児も所属しているが、横山のようなJ1でブレイクしたての選手が、イングランド3部のクラブに買われてしまうという現状はやはり複雑なものがある。

 今シーズンのJ1で、首位のFC町田ゼルビアをはじめサンフレッチェ広島、鹿島アントラーズ、C大阪、FC東京、浦和、川崎、柏、鳥栖から日本人の主力選手が夏に海外移籍している。こうした選手の移籍はリーグ戦の順位争いに少なからず影響を及ぼしており、こうしたシーズン途中での主力の海外移籍が、リーグとしての面白味を削ぐ要素になっていると指摘する声も多く見られるのは実情だ。こうした傾向は秋春制に移行することで、多少なり緩和されるかもしれないが、そうした選手たちの移籍のタイミングがシーズン中か、シーズンオフかの違いであり、大量の選手が国外に流出する傾向はむしろ加速するかもしれない。


三竿健斗のようにJリーグに復帰した選手たちも【写真:徳原隆元】

■Jリーグに帰ってくる出戻り組の選手たち…今夏見られたもう1つの流れ

 一方で、この夏に見られるもう1つの流れが欧州をメインとする海外からJリーグに帰ってくる出戻り組の選手たちだ。これまでも長友佑都や大迫勇也、酒井宏樹といった海外で一時代を築いた選手が、30代になって帰ってくる事例は多くあったし、今年でいえば4度のワールドカップを経験したGK川島永嗣がジュビロ磐田に加入し、13年ぶりにJリーグ復帰となったことが大きな話題となった。もちろん、海外でうまく成功できずに短期で帰国するケースは例年あるが、そこにも変化が起きている。

 広島からスイスのグラスホッパー、ベルギーの名門スタンダール・リエージュと渡り歩き、日本代表も経験したMF川辺駿が28歳で、広島に帰ってきた。彼の場合は2つのクラブで足掛け3シーズン、主力としてプレーしており、まだまだ欧州でステップアップも狙えたはず。それでも選手としてピークとなる年齢で、欧州の厳しい環境で得た経験をアカデミーから育った“古巣”に還元するという選択を取ったことになる。

 その川辺ほどの実績は上げられなかったが、ポルトガルとベルギーでプレーした28歳の三竿健斗も1年半ぶりに、鹿島に戻ってきた。また古巣に戻るという形ではないが、柏からオランダに渡り、イングランドも含めて5年半、欧州で挑戦した27歳の中山雄太が、現在J1で首位の町田に移籍したことも、注目すべきトピックだ。そうした選手たちがJリーグにもたらすものはプレーのクオリティーに止まらない。海外帰りの選手の「還元力」と呼ぶべきか、彼らの経験がチームや若手選手にもたらす影響力も計り知れないものがあるだろう。

 欧州の主要リーグに限っても60人前後が挑戦しているが、この夏にJリーグから日本人選手が海外に移籍した件数と逆に欧州から戻ってきた件数はほぼ同じ。各国のリーグタイトルやUEFAチャンピオンズリーグの上位を狙えるクラブに所属する選手も徐々にではあるが増えており、英チャンピオンシップのような新たな“受け皿”も広がってきているが、海外の環境に揉まれてJリーグに戻ってくることにネガティブな空気も以前よりなくなってきている。その中には現在デンマークのブレンビーに所属する日本代表MF鈴木唯人のように、再渡欧するケースも増えてくるかもしれない。それだけ日本のサッカーと世界の距離が縮まっているとも言える。

 おそらく、Jリーグで名を上げた選手が若くして海を渡る流れは止まらないだろうし、20代後半で初めて欧州挑戦して、いきなりブレイクした大橋が新たな成功例になれば、そうした“遅咲き”の選手に新たなスポットが当たるかもしれない。そうした傾向をJリーグの人材流出としてネガティブに見る向きも確かにあるが、サッカー界も契約社会である以上、そのサイクルを無理に断ち切ろうとするクラブは選ばれなくなるリスクが非常に高い。

 こうしたサイクルを繰り返しながら、Jリーグ側もいかに選手の価値を高めて、クラブに移籍金を残していくか。そのためにも世界の中でのJリーグとして、インターナショナルな競争力を身につけていくしかない。その中で、よりハイレベルな環境に揉まれてきた選手たちが、Jリーグに「還元力」をもたらしていくことで、それがJリーグやクラブの成長にもつながっていくはずだ。(FOOTBALL ZONE編集部)

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