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苦悩の31歳に突如…町田から熱烈オファー「行くしかない」 J2で出番減り「腹決めてやろう」【インタビュー】

FOOTBALL ZONE / 2024年8月29日 8時30分

■町田MF白崎凌兵、清水から移籍の舞台裏

 FC町田ゼルビアはJ1初昇格、初優勝の快挙を果たすべく、今夏に積極補強を敢行。31歳のMF白崎凌兵はその1人として、J2清水エスパルスから加わった。プロ13年目のシーズン、苦悩の日々を送ってきた中で舞い込んだ突然のオファー。愛着あるクラブを去る――。悩みに悩んだ末に「迷いはない」とJ1再挑戦を決心した舞台裏に迫る。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・橋本 啓)

  ◇   ◇   ◇ 

「素晴らしい話をいただいて、行かないっていう選択はもうなかったんです」。心を突き動かしたオファーを断る理由はなかった。

 高校サッカーの強豪・山梨学院で世代屈指のテクニシャンとして注目され、2012年に争奪戦の末、清水入り。今季でプロ13年目。昨年あと一歩までJ1昇格に迫りながら、プレーオフで涙をのんだ清水でもう一度、J1昇格へ再チャレンジしようと決心した。

 チームは開幕から上位争いを演じる一方で、白崎の立場は主力を担った昨季から暗転した。主戦場とする中盤ではMF宮本航汰の台頭もあり、開幕から途中出場が続くと、J2第10節から7試合ベンチ外に。ここ2年、リーグ戦では30試合以上に出場してきた白崎にとっては、屈辱以外の何ものもない。

「もう年齢的にも上のほうになってきてるんで、若手を鼓舞しながら自分のやれることをやろうっていうふうに切り替えて、普段のトレーニングだったり練習試合、試合もそうですけどやってはいました」。気付けば31歳。若手の手本となるべき立場になった以上、下手な振る舞いは許されない。プロとして、サブ組からチャンスを窺った。

 5月26日のJ2リーグ第17節・水戸ホーリーホック戦、ホーム戦で8試合ぶりにスタメンへ抜擢されると、1-1の同点で迎えた後半8分、頭で今季初ゴールを叩き込み、2-1の勝利に貢献。「ここからだ」。そう信じて翌節も先発を飾ったが、無情にも立場は変わらなかった。

「やっぱりなかなか試合に出られないっていうことに対して、納得いかない部分、すっきりしない部分はもちろん持っていて……」。6月上旬からのおよそ1か月、ベンチ外や途中出場が続いた。そんななかで届いたJ1町田からの熱烈オファーに心は傾いた。家族だけに相談し、自ら決めた。「もう腹決めてやろう」と。

「苦しみながらチャンスをものにして、ゴール決めて、チームも勝った。ただやっぱり感覚的には序列が変わりそうになかったんです。シーズンが終わったタイミングでチャンスが来る保証もないし、サッカー選手である以上、このチャンスで勝負したかったんです」

 昨年、今年とJ2で戦ってきた白崎にとって、J1の舞台は2022シーズン以来。苦悩の日々を送ってきたなかで、再びJ1へチャレンジできる境遇に恵まれた。当然葛藤もあった。清水はプロキャリアの中でも特別なクラブ。2019年から3年間は一度、鹿島アントラーズへ完全移籍しながら、再び拾ってくれたという恩もある。

「高卒から清水ではお世話になって、一度鹿島に移籍して、そこから戻ったっていう経緯もあったんでやっぱりそこでもう一度出るっていうところへの迷いはやっぱりありました」と白崎。それでも、自身が描くキャリアとの天秤をかければ迷いはなく、「もう行くしかない、行く以外の選択肢はないなと。こんな有難い話はないっていう、その1つですかね」と、当時の心境を思い返す。


J2首位からJ1首位へ。優勝を掴み取れるか【写真:(C) FCMZ】

■技巧派の白崎、速攻型の町田への移籍は「ポジティブに捉えている」

 町田加入からおよそ1か月。1年半遠ざかっていたJ1のピッチで「個人的にはすごくやりがいがある」と、改めて喜びを噛みしめる。J2からJ1へ舞台を変え、レベルの差は痛感しつつも新天地への適応も上々。一方で「ゴールにつながるようなプレーはもっと上積みしていかなきゃいけないし上積みできる部分だなっていう風には個人的に感じています」と課題も忘れない。

 カウンター主体のスタイルでJ1首位を快走してきた町田。テクニシャンの白崎がそこへ加わるのは少々以外にも映る。技巧派としては、自らの持ち味を存分に発揮しにくい環境でもあるからだ。

 もちろん、本人はそれを承知のうえで「逆にポジティブに捉えている」と言い、テクニシャンがチーム内で少数派である事実を見据えて「縦に速い攻撃だけじゃなくて、相手陣地で揺さぶるとか攻撃を彩るような部分っていうのも今後もっと出していければ」と語る。今後の課題として挙げている“上積みできる部分”もまさにそこだ。

 町田への加入が、自らのサッカー観へ変化をもたらしつつもある。“ボールを握るサッカー”へのこだわりが薄れたわけではない。ただ町田に来て、ロングボールを使った攻撃に対する見方は変わった。「ボールをつないでゴールするのも、相手陣地に素早く入ってゴールをするのも同じ。結局は相手に何をされるのが嫌か1番重要だなっていうのは、こっちに来てすごく感じている部分」と、力を込めてこう続ける。

「サッカー観っていうところも新しい発見じゃないですけど、実際見てるのとやってみるのとでは また違うなっていうところはすごい思いますね。このチームに入ってやってみてるのと、傍から見ていた感覚とは全く違うなって。相手が実際にどれだけ嫌がってるかとかも肌感覚で分かる。そういったプレーからスペースができて、時間ができてくるからこそ、パスも活用できるし、攻撃に行けるようになると感じてます」

 清水を離れ、新たな一歩を踏み出した31歳の戦いはまだまだ序章に過ぎない。ここまでリーグ戦4試合で出番を得て、直近の2試合はフル出場。チーム内からの信頼はひしひしと感じている。だからこそ「もっと貢献したい」。8月31日、浦和レッズとのホームゲームの舞台は国立競技場。“聖地”での一戦に、その言葉に自ずと力が入る。

「やっぱり国立競技場でプレーするっていうのは特別ですよね。ファン、サポーターもかなり入ると思いますし、町田の選手として国立に立つのは初めてですけど変に気負うことなく、目指す目標に対してやるべきことをしっかりやって、結果を出すだけです。選手のモチベーションが上がるので、両チームのサポーターがたくさん来て、熱い応援を繰り広げてくれたら有難いなと思います」

 町田での背番号は、清水でプロキャリアをスタートさせた時と同じ「23」。Jデビューから13年、苦悩の日々を送った先に掴んだチャンスを無駄にはしたくはない。自身5クラブ目となる新天地で、必ずや成功を掴んでみせる。

[プロフィール]
白崎凌兵(しらさき・りょうへい)/1993年5月18日生まれ、東京都出身。山梨学院高―清水エスパルス―カターレ富山―鹿島アントラーズ―サガン鳥栖―清水エスパルス―FC町田ゼルビア。J1通算176試合・21得点。足もとの技術と視野の広さを生かした攻撃センスが光る技巧派MF。今夏、プロキャリア5クラブ目となる町田へのレンタル移籍を決断した。(FOOTBALL ZONE編集部・橋本 啓 / Akira Hashimoto)

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