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高井幸大から助言受け…「代表で一緒にやりたい」 名門・帝京へ転入、高1で下した覚悟の退団

FOOTBALL ZONE / 2024年9月9日 7時1分

■帝京高校のCB田所莉旺、川崎U-18退団→高体連行き決意の背景

 伝統のカナリア色のユニフォームを身に纏う帝京高校。近年は全国制覇から遠ざかるものの、高校選手権で6度、インターハイで3度の優勝経験を誇る、文字どおり名門校だ。

「カナリアのユニフォームが持つ伝統の重みは常に感じています。胸の星の数(9つ)を見てもほかの高校とは全然違うし、これだけの日本一を取れるだけのチームだからこそ、僕は誇りと責任を感じながらプレーできています」

 今年のカナリア軍団の最終ラインを束ねる187センチの3年生長身CB(センターバック)田所莉旺は凛々しい顔つきでこう口にする。帝京のユニフォームに袖を通す選手たちは誰もがこう思っているだろう。だが、田所の責任感と覚悟はほかとは一線を画すものがある。

 その理由は彼が中学卒業と同時に帝京に進学をしたのではなく、強豪である川崎フロンターレのU-18から昨年度に「転入」してきた存在だからだった。

 田所は小学5年生の時に川崎のアカデミーに入ると、サイズのあるCBとして頭角を現し、川崎U-15、U-18と順調にキャリアを踏んできた。高校1年生ではプレミアリーグEASTの2試合に出場。当時3年生だったCB高井幸大(現・川崎)、DF松長根悠仁、MF大関友翔(ともに福島ユナイテッド)らとプレーした。

「うしろに松長根さん、高井さん、横に大関さん(当時、田所はボランチだった)がいてくれたからこそ、僕は思い切りプレーすることができた。ほかにもたくさんの優秀な選手が揃っていて、僕がミスをしても常に誰かがカバーをしてくれるような環境だった。特に今挙げた3人は人間的にも素晴らしくて僕にアドバイスをくれたり、勇気をくれる声かけを常にしてくれた。感謝以外の言葉はありませんでした」

 しかし、その環境に甘えてしまっている自分に疑問を抱くようになった。

「周りに助けられていることと、フロンターレやほかのチームの同じ1年生がたくさん試合に出られているのに、僕はほんのわずかしか出られない現状に焦りを感じたんです。このままでは自分は成長しないのではないかと」

 もちろん2年生になれば川崎での出番が増える期待感もあった。しかし、「一度環境を変えて、自分にとって厳しい場所に飛び込まないとこのまま並の選手で終わってしまうのではないか」と本気で考えた田所は、高1の冬に川崎U-18を退団し、高体連のチームへ移る覚悟を固めた。いくつか強豪校から声がかかったなかで、帝京を選んだ。

「お父さんが帝京に対して物凄く思い入れが強かったし、高校サッカーが詳しくなかった僕も知っていて、伝統の重みや名門に途中で入る難しさを経験することで成長できると思ったんです」


先輩・高井幸大とのやり取りを明かした【写真:FOOTBALL ZONE編集部】

■先輩・高井からは「今も本当に可愛がってもらっている」

 川崎の下部組織では小さい頃からの顔馴染みが多い中でプレーしていたが、帝京はほぼ初対面。先輩、同級生、後輩のなかに飛び込んでいかないといけない。

「選手、スタッフに認められるには試合の中でのプレーもそうだし、人間性も重要だと思った。最初は先輩たちと積極的にコミュニケーションをとって、自分がどんな人間か、どんなプレーをするのかを知ってもらうことから始めました」

 自ら壁を取っ払って馴染んでいった田所は、徐々に周りの信頼を掴んだ。2年生ながらビルドアップと空中戦の強さを武器に、帝京の最終ラインの統率者となると、今年はより守備範囲が広がり、攻撃のスイッチを入れるパスの精度も格段に成長。守備の要として絶対的な存在となっている。

「まだまだプレー、ピッチ内外の立ち振る舞いを含め、帝京の先頭を走っていく器ではないと思うからこそ、もっとピッチ内外で成長したいという気持ちが強いです。僕の選択を尊重してくれたフロンターレの関係者、偉大な先輩たち、同級生たち。そして僕を受け入れてくれた帝京のスタッフ、仲間たち。彼らにまだまだ恩返しができていないので、そこは甘えることなくやっていきたいと思います」

 この言葉が決断の意義を如実に表していた。心身ともに成長を続ける田所には大きな目標の選手がいる。それは先輩である高井だ。

「僕が小4の時にU-12ジュニアサッカーワールドチャレンジを観に行ったのですが、フロンターレU-12の高井さんのプレーに目を奪われたんです。当時小6だった高井さんはサイズもそうですが、プレー全体が僕の目から見てレベルが突き抜けていたんです。

『この人みたいになりたい』と思って、その翌年にフロンターレに入りました。ジュニアユースではあまり接する機会はなかったのですが、U-18に上がってからは高井さんがトップから戻ってきて練習を一緒にやっていると、凄く気さくに話しかけてくれて、いろんなアドバイスをくれるんです。ピッチ外であんなに優しいのに試合中は本当に怖い。プレーも人間性もすべて僕にとってお手本です」

 トップチームでレギュラーを勝ち取り、19歳でパリ五輪出場、そしてアジア最終予選に臨むA代表にも初選出されるなど、メキメキと頭角を現している高井の存在は彼を突き動かし続ける大きなモチベーションとなっている。

「高井さんには今も本当に可愛がってもらっていて、普段からちょこちょこLINEをさせてもらっています。高井さんは驚くべきスピードでどんどん上に行っているのですが、いつか追いつかないといけないと思っているし、代表で絶対に一緒にやりたいと思っているので、そのために今を満足なんかしていられない。高井さんは自分で調べたりしてくれなさそうなので、嫌でもSNSなどで分かるように活躍をしたいです」

 あふれるばかりの覚悟と自覚と憧れと。名門の番人として日々成長する田所は、内から湧き出すたくさんのエネルギーに満ちている。(FOOTBALL ZONE編集部)

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