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8歳でスペイン留学「逃げ道なかった」 異国で直面した壁…神童とも対戦した無名の日本人MF【インタビュー】

FOOTBALL ZONE / 2024年9月14日 7時20分

■足立開はマドリードキャンプ参加がきっかけで8歳の時にスペインへ【前編】

 プリメーラRFEF(スペイン3部相当)には今季、グループ1に属するSDアモレビエタに、スペイン1部レアル・マドリードからMF中井卓大が期限付き移籍で加入した。同リーグには、もう1人日本人選手が在籍。それがグループ2に属するアンテケラCFのMF足立開だ。8歳でスペインへ渡り、街クラブから這い上がってきた19歳のアタッカーの軌跡を追う。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・小田智史/全2回の1回目)

   ◇   ◇   ◇

 鳥取県米子市に生まれた足立が、サッカーを始めたのは3歳の頃。幼稚園のスポーツ体験でサッカーに触れたのがきっかけで、サッカースクールへ通うようになったという。

「両親が言うにはサッカーボールを離さなかったみたいです(笑)。いろんなスポーツをやりましたけど、結局はやっぱりサッカーだなとなりました」

 サッカー人生の転機は、早くも8歳の時に訪れる。中井卓大(現SDアモレビエタ)のレアル・マドリード下部組織入りの原点となったことで知られるマドリードキャンプ(レアル・マドリード主催のファンデーションキャンプ)参加を機に、スペインへ渡った。

「ラージョ・バジェカーノやレアル・マドリードで練習・試合をして、父親が日本とスペインではレベルが違うなと感じたそうで。そこから小学2年生の夏にバルセロナでの自主参加型のサマーキャンプに参加。数チームから『うちに来ないか』と話をいただいて、『スペインでも通用するんだな』『小さい頃から上手い選手たちがいるいい環境でやらせたい』ということになりました。最初は1年の予定だったんですけど、もう1シーズン、もう1シーズンとチーム探しを続けてきました」

 スペインでの活動は、バルセロナの街クラブであるヴィラ・オリンピカでスタート。2年目はオルタU.ATに所属し、のちに欧州選手権(EURO)で最年少ゴール記録を打ち立てるFWラミン・ヤマル(FCバルセロナ/17歳)とも対戦した。この試合の活躍で、バルセロナからスカウトが視察に来るとの連絡を受けたが、足立は2歳年下のバルセロナの選手よりも小さかったこともあり、チャンスを逃してしまう。技術や戦術理解度には優れていたが、体格差の影響は大きく、ポジションも中盤からサイドへコンバートされた。

「小さい頃はボールをこねるタイプで、中盤でプレーしていました。でも、11人制になって2年目くらいから背が小さい分、中盤だと負けることが多くて、監督にサイドにポジション変更されました。ドリブルは昔から得意で、今も自分の武器の1つです。昔から観ているのはリオネル・メッシ選手(アルゼンチン代表FW/現インテル・マイアミ)。最近ではマンチェスター・シティの(ベルギー代表FW)ジェレミー・ドク選手、日本人選手だと三笘薫選手(日本代表MF/現ブライトン)を参考にしています」


幼少期の足立は背が小さく、海外の選手との体格差に直面【写真:本人提供】

■体格差の壁に直面し、中学時代は「サッカーをやめたい」

 スペインと言えば、名門レアルの下部組織からBチームであるレアル・マドリード・カスティージャまで上り詰めた中井、FCバルセロナのユースで研鑽を積み、日本でのプロ生活を経て、再びスペインに渡った久保建英(現レアル・ソシエダ)がいる。彼らが歩んできたのは言わば、選ばれし者のエリートコース。無名だった足立は、街クラブゆえの難しさに直面する。

「中井選手や久保選手は、周囲からの期待が飛び抜けています。そういう名門クラブは小さい頃からプロ扱いされますし、そのなかで生存競争を生き残ってきた選手はまったく違う。僕は街クラブを渡り歩いてきましたが、街クラブなのでほとんどの選手はプロになるという意識を持っていない。真剣にはやっていますけど、学業やほかのこと優先が多いんです。自分以外にあまり日本人選手もいなくて、モチベーションやプロへの思いを保つことは大変でした」

 バルセロナのサン・クガ・エスポルトFCやFCバルセロナ・エスコーラ、カタルーニャのルスピタレート、ウニフィカシアンCFサンタ・パルペトゥア、サン・ジュアン・ダスピなど、毎年のように所属チームが変わるなかで、中学時代は体格の問題もあって出場機会が得られず、足立にとっては“暗黒期”だった。

「U-15までは(体格も)小さくてガリガリで、監督からの信頼も得られず、『楽しくないな』『(サッカーを)辞めたいな』と思った時期はありました。でも、8歳でスペインに来て、人生を賭けていたので、辞めることはできなかった。正確に言えば、『逃げ道はなかった』という感じです」

 しかし、「中学年代は我慢して、のちに苦労するであろう技術や戦術理解を先取りで学ばせるようにした」父親の方針は、身体の成長が周囲に追い付き始めた頃に実を結び始める。苦難の日々に立ち向かうなかで、「高校2年生くらいから上手くいき始めました」と足立は話す。

 2022-23シーズンは、サバデルに拠点を置くユース年代2部のメルカンティルでプレー。育成に定評のあるクラブで技術が磨かれたという。

「メルカンティルはアンダー年代しかないんですが、バルセロナ、エスパニョール、ジローナなどに選手を輩出している名門クラブ。そこで技術が高まったと思います。スペインのクラブでは、日本のクラブと違って足元の練習をあまりしないんです。チーム全体の連係がメイン。上手い選手はストリートで技術を身に着けてきた感じ。日本でテクニックを身に着け自分は少しタイプが違うので、小さい頃からやれているなという感覚はありました。スペインの選手は献身的に、ということを嫌がることも多いです。自分がチームのために献身的にプレーできるし、日本人らしさが武器だと思っています」

 足立にとって、異国の地スペインでプロへの道に光が差し込み始めた瞬間だった。

<後編に続く>

[プロフィール]
足立開(あだち・かい)/2005年4月14日生まれ。鳥取県出身。中井卓大と同様にマドリードキャンプ参加をきっかけにスペインへ。街クラブを渡り歩き、プロ1年目となる今季は、プリメーラRFEF(スペイン3部相当)のアンテケラCFと契約。サイドを主戦場とするアタッカーで、1対1からの突破や味方との連係で相手のディフェンスラインを崩すプレーを得意とする。(FOOTBALL ZONE編集部・小田智史 / Tomofumi Oda)

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