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Jリーグに刻まれた“伝説の16分間” 鹿島の闘志が漲った史上初の再開ゲーム【コラム】

FOOTBALL ZONE / 2024年9月13日 17時22分

■【カメラマンの目】2009年の鹿島×川崎は残り16分間を1か月後に消化

 近年、顕著になった気候変動はサッカー界にも影響を及ぼしている。予想を超える事態に安全意識も高まり、豪雨となれば試合時間を遅らせたり、中止の決定が下されることが増えてきた。

 8月24日に行われた浦和レッズが川崎フロンターレをホームに迎えたJ1リーグ第28節の試合も、豪雨のため前半を終了した時点で中止となった。試合は11月22日に後半から再開させることが発表されている。

 90分間のゲームを最初からやり直すのではなく、途中から再開する最初のケースとなったのは、2009年9月12日に鹿島アントラーズのホームであるカシマサッカースタジアムで行われた試合がそれである。奇しくも相手チームはこちらも川崎で、豪雨のため後半29分で中止となり、10月7日に残り16分間を消化する前例のない対処となった。

 当時、このJ史上初の残り時間を消化するという異例の試合に興味をそそられ、16分の攻防を取材するためにカシマサッカースタジアムへと足を運んだ。後半29分まで刻まれた試合のスコアは1-3(得点者は鹿島がマルキーニョス、川崎が鄭大世2ゴール、ジュニーニョ)で鹿島側から見れば劣勢の展開からの再開となった。そして、鹿島は16分間での状況逆転を目指し、全身全霊を賭けて戦った。


ウォームアップを見つめるオズワルド・オリヴェイラ監督【写真:徳原隆元】

 試合前、ピッチでウォーミングアップをする鹿島の選手たちに交じって、指揮官であるオズワルド・オリヴェイラの姿があった。監督が試合前に姿を現すことはあまり多くはないが、それでもないことではない。しかし、それはベンチから選手たちを見守っていることがほとんど。このブラジル人監督はピッチの中に入り、選手のウォーミングアップをサポートした。

 手にしたボールをピッチでバウンドさせ、そのボールをディフェンス陣の要となるセンターバック(CB)の伊野波雅彦がヘディングで対応する。このヘディングプレーの練習が攻撃への布石なのか、ゴールを死守するためのものなのかは、この時には分からなかったが、コーチではなく最高指揮官のオズワルド・オリヴェイラが自ら練習をサポートするその姿を見て、劣勢の状況を覆そうとする闘志がチームに漲っていることを強く感じた。

 そして、メインスタンド下のウォーミングアップスペースで鹿島は選手、スタッフを合わせた円陣を組み試合へと臨んだ。


再開ゲームの前に鹿島の選手とスタッフらが組んだ円陣の様子【写真:徳原隆元】

■11月22日に後半から再開される浦和×川崎の行方は?

 スコアは驚くほどすぐに動く。試合は鹿島陣地からの間接フリーキック(FK)で始まった。キッカーを務めた伊野波のロングキックのボールに、川崎ゴール前でダニーロがヘディングで争う。

 この争いからこぼれたボールに岩政大樹が反応。左足でコンタクトしたダイレクトボレーのシュートが、川島永嗣の守る川崎ゴールのネットを揺らす。CBの岩政がいきなりゴール前へと進出していたことは、追撃の狼煙とするために、まさに狙っていた形でのゴールだったのではないだろうか。

 再開からわずか数秒での得点の勢いに乗って、鹿島はその後も再三にわたって川崎ゴールへと迫った。続いてFKから小笠原満男が放ったロングボールに合わせたダニーロのヘディングシュートがクロスバーを直撃する。アディショナルタイムも含めて20分ほどのプレーということで、ホームチームはエネルギーを出し惜しみすることなく使っていく。

 あらゆるポジションの選手がチャンスと判断すれば、勇気を持って相手ゴール前へと攻め上がって行った。鹿島はそうして中央で待ち受ける選手に向けて、徹底的にハイボールを供給し、パワープレーで勝負する攻撃をこれでもかと続けた。試合前の伊野波のヘディング練習は防御のためではなく、ゴールを目指したプレーだったのだ。

 しかし、果敢な攻撃精神からの速攻劇でゴールを奪い試合をスリリングな展開へと誘った鹿島だったが、中村憲剛を中心とする川崎もチームとしてよく纏まっており、さらなる得点を記録することはできなかった。追撃も1点にとどまり、2-3で敗れたのだった。

 だが、鹿島はこの年のリーグ戦で、最終的には優勝を果たすことになる。オズワルド・オリヴェイラ監督の指揮の下、Jリーグ史上初の三連覇を達成したのだった。

 対して川崎も2位の好成績でリーグ戦をフィニッシュした。たった16分+アディショナルタイムのプレーだったが、2009年のリーグの主役であったクラブ同士の攻防は、実に見応えのあるものだったことを今でも覚えている。

 先の浦和対川崎戦は仕切り直しとなった再開日が3か月近くもあとになるが、残り45分の攻防でどんなドラマが紡がれるのか。勝利を賭けた激しい攻防を期待したいところだ。(徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)

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