苦境札幌ついに浮上…上昇阻んだ異常事態「さすがに難しい」 “居残り組”明かす「復調の要因」【コラム】
FOOTBALL ZONE / 2024年9月14日 10時10分
■低空飛行の札幌が最下位を脱出、J1残留圏内が視界に
シーズン序盤から低迷し、単独最下位で低空飛行を続けてきた北海道コンサドーレ札幌がJ1第29節の川崎フロンターレ戦(2-0)で今季初の3連勝を達成。ついに最下位を脱出し、J1残留圏内との勝点差も7へと縮めた。
J2降格を免れる可能性を見出しつつあるが、経験豊富なミシャことミハイロ・ペトロヴィッチ監督は「残留を成し遂げるためには残り試合も勝たなければいけない。手放しで喜んでいい3連勝ではない」と手綱を引き締め続けている。
そんな札幌だが、低迷の予兆は昨季からあった。2023年シーズンは最終順位こそ12位だったものの、後半戦だけを見れば17試合でわずか3勝。前半戦に蓄えた勝点でなんとか乗り切った。もはや予兆というよりもこの時点から低空飛行を開始していたとも言える。
その状況下でオフに田中駿汰、ルーカス・フェルナンデス(ともにセレッソ大阪)、小柏剛(FC東京)、福森晃斗(横浜FC)ら近年の札幌を支えてきた主軸が一気に移籍。それによる戦力ダウンを補うべく例年よりも多めの新戦力獲得を行ったものの、戦術の成熟度が拠りどころだったミシャのチームが主軸を複数失うダメージは大きい。
新加入選手も実力者が揃ってはいたが、現在の絶対的な守備の柱である岡村大八でさえ定位置を確保するまでに加入から1年以上を要したように、高い戦術理解度を求めるミシャのチームですぐに主軸とはならない。さらに開幕前のキャンプから多数の負傷者が発生し、十分なチーム作りができないままリーグ戦が開幕。「誰かが怪我から復帰したかと思えば、また誰かが怪我で離脱する」(ペトロヴィッチ監督)という状態で戦った序盤戦で躓き、そこから立て直せず第15節から8連敗を喫し最下位に沈む苦境に陥ってしまったのだ。
冒頭で記したように、そのチームが3連勝で巻き返すまでに至った。要因としては大きく言って、負傷者復帰と大型補強の2つが挙げられる。後者については無所属だった大崎玲央が移籍期間前に加入したのを皮切りに外国籍選手を中心に計7名の新戦力が加わった。基本的に現有戦力を重用するミシャ体制の札幌がこれまでシーズン途中のフィールドプレーヤー補強が少なかったことを考えれば、思い切ったマネジメントを敢行したと言える。
ミシャ率いる札幌が残り9試合の戦いに挑む【写真:徳原隆元】
■負傷者復帰&新戦力加入…ミシャ札幌の問題点が解消
では実際にその2つのポイントが具体的にどのような好影響を与えたのか。単純に戦力が整ったというのも挙げられるが、ここである選手のコメントを借りたい。
「成績が悪かった時期に、アウェーゲームの時に居残り組としてトレーニングに参加したのが僕1人だけだったことがあるんです。そのくらい怪我で選手がいなかった。さすがにその状況では、いくら必死にトレーニングしたとしてもチームのレベルアップにつなげるのは難しいです。
そのあと、負傷者が復帰し新戦力も加わった。人数が揃ってしっかりとしたトレーニングを積めるようになった。そこからですよね、強度もテンションも高いメニューで積み上げが作れたのは。ですから『誰々の活躍が』とか『チームの勢いが』というのもあるかもしれませんが、それ以上にサッカーチームとしての通常の姿を取り戻せたことが復調の大きな要因だと思うんです」
ミシャのチームの生命線はやはりトレーニングなのだろう。「私が目指すサッカーでは規律や連動性が重要になる。しっかりとトレーニングの時間が確保できれば、どのチームとも互角以上に戦える力が私のチームにはある」と近年のミシャは常に発してきたが、その状態になったことがまずは大きいようだ。
思い返せば昨季終盤戦も負傷者頻発により人数が不足し、リーグ戦のサブメンバーにGKが2名入れた試合があったほど。当時も今季の不調時と同じような状況だったのだろう。そして今季リーグ第28節のジュビロ磐田戦の時には、同日に居残り組が地元大学と練習試合を組めるほどにまでなった。チーム自体の体力が回復してきたといったところか。プランどおりにトレーニングを消化できれば今後も目指すサッカーをより表現できるようになるだろうから、さらなる浮上に期待したい。
ラスト9試合。世界的に見ても混戦のJ1リーグのなかで札幌がどのような決着を見るのか非常に興味深いところだ。限られた残り試合のなかで残留圏内に滑り込めるか、否か。(斉藤宏則 / Hironori Saito)
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