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日本代表が「世界基準になっている」 3バックなぜ無失点?…アジア最終予選で際立つ“別次元”【コラム】

FOOTBALL ZONE / 2024年9月14日 11時30分

■森保ジャパン、9月シリーズの2試合で12得点…一方で守備も抜群の安定感

 森保ジャパンは最終予選のスタートとなった9月シリーズの2試合で、ホームで中国に7-0、アウェーでバーレーンに5-0の快勝を飾った。合計12発というゴールラッシュはもちろん素晴らしいが、その一方で2試合ともに無失点という結果は高評価できる。特に3-4-2-1を継続しながら、攻撃的な特長を持つ選手を左右のウイングバックに配置しての結果である。

 興味深いのは中国戦がシュート1本、アウェーのバーレーン戦も相手のシュートを3本に抑えていること。3バックと言ってもハイプレスをかける時は左ウイングバックの三笘薫を高い位置に上げて、右の堂安律を右サイドバックのようなポジションにすることで、従来の4-4-2のような形でのハイプレスを可能にする。一方で相手のロングボールに対して、セットして構える時は左右ウイングバックを下げて5バックにすることで、うしろのスペースを埋めて、相手がボールを下げればプッシュアップするといった柔軟な守備が整理されているのだ。

 そうした守備を可能にしているのは3バックの統率力と状況判断、なにより1対1で勝っていけるデュエルの強さだが、右サイドで攻守に奮闘する奮闘する堂安は無失点の理由について「攻撃的と言っているなか、ゼロで抑えている。全員の守備意識が高いし、これだけ良い選手が守備の重要性を理解している。世界基準になってきていると思う」と見解を語った。

 筆者がこれまで長く日本代表を取材してきた経験から言えば、いわゆる攻撃的な特長の強い選手というのは守備について多くを語りたがらない。それは普段の堂安も例外ではないが、それは守備のタスクを果たしていないことを意味しない。監督に与えられた守備のタスクを当たり前にこなすことは大前提で、攻撃面でのスペシャルを出すことに意識を向けているに過ぎないのだ。これは伊東純也や三笘にも共通している。

 3-4-2-1に関して堂安は「選手の特徴が出やすいシステムかなと思う。仕掛けられた選手も中で作れる選手もいて役割がハッキリする。例えば4-2-3-1で、僕のポジション(右サイドハーフ)なら張るのと中に入るのと色々と考えないといけないのが、外に張るとはっきりするので考えることが減ると思います」とメリットを説明する。そうは言いながら、同じポジションで選手の特長や組み合わせで、変わってくることはある。

 例えば左右のウイングバックが三笘と堂安という組み合わせであれば、守備で4-4-2に可変する時に、基本的には三笘が上がり目、堂安が下り目というメカニズムに落ち着きやすい。これが左ウイングバックを長友佑都のような本職サイドバックの選手を置く場合は左右が逆転するかもしれない。それは2シャドーの組み合わせにも言えることで、3-4-2-1を4-4-2に可変する場合、中国戦の南野拓実と久保建英という2シャドーのユニットなら、南野が左、久保が右のほうが、南野が中央に残り、久保が右サイドに回るメカニズムにできる。

 それがバーレーン戦の南野と鎌田大地のユニットであれば、鎌田を中央に残すほうがより特性を活かしやすいため、南野は右シャドーのほうがベターということになる。攻撃的なイメージの強い3-4-2-1ではあるが、こうしたバランスで成り立っており、その中で選手たちが攻撃の特長と守備のタスクを効率よく発揮していることが、結果として守備の安定にもつながっていると言える。


3バックの中央を担った谷口彰悟【写真:ロイター】

■ボールをロスト時のリカバリーの早さはアジアでは1つ抜けたレベル

 もう1つはやはり3バックと2ボランチの守備が、GKの鈴木彩艶をうしろ支えとして、非常に高い強度と集中力を維持していることがある。今回は本来の主力である伊藤洋樹と冨安健洋を怪我で欠く非常事態であり、やや心許ないと考えられたのが最終ラインだった。筆者が試合前の時点で3バックを予想しなかった理由の1つが、センターバックを3枚要するシステムにおける、バックアップメンバーの層の薄さにあった。

 しかし、森保一監督は板倉滉、谷口彰悟、町田浩樹というこれまでの代表活動で実績と経験のあるセットを中国戦とバーレーン戦で継続させて、そこにパリ五輪世代から初招集された高井幸大を中国戦で点差が開いた後半途中から起用。経験を積ませるというプランをやり切ったのだ。3バックと言いながら、先に書いたようにハイプレスの時はマンツーマン気味にはめていく4バック、ロングボールなどに構える時は5バックという切り替えが明確だった。

 興味深いのは3バックでも常に1人を余らせる守備ではなく、例えば板倉と町田が相手の2トップを捕まえたら、中央の谷口は彼らより前に出て、ボランチの遠藤や守田をサポートする形で、相手の起点を潰しに行った。同数で守り切るという選択は一見してリスクはあるが、相手に押し込まれ続けて後手を踏まないための有効な手段でもある。攻撃的な戦い方にリスクマネジメントは付きもので、例えば一発のカウンターでそのままGKと1対1にされてしまうような立ち位置は今の森保ジャパンも取っていない。

 しかし、必要以上に人数をうしろに余らせずに攻勢をかけること、裏返された時に同数でもしっかり守り切って、素早く帰陣することがセットになって落とし込まれている。こうしたオーガナイズを代表の短い期間でできるのは、やはりカタールW杯を経験して、2サイクル目に入ってる“第2次森保ジャパン”の強みの1つだ。さらに言えば、誰かがミスをしてボールをロストした時のリカバリーの早さも、アジアでは1つ抜けたレベルにある。

 バーレーン戦でも、板倉のミスから相手にショートカウンターを狙われたシーンがあったが、ここで谷口に加えてボランチの守田も素早くカバーに入り、シュートブロックに入っていたのは目を見張った。このように、本当にゴール前でピンチになった時はカバーする選手が複数重なるケースもあるが、1人1人の責任感が生み出している現象とも言える。

 今後の課題になってくるのはやはり3バックが1対1で勝てないようなFWが揃うチームと対戦するケースや攻撃的なウイングバックのウィークになり得る、対角のクロスで彼らに競らせて、そこで勝って中の選手に決めさせるような攻撃を徹底された時の対応だ。バーレーン戦でも、堂安が狙われて危険なシーンがあった。今後の対戦相手も、日本はアジアで頭1つ、2つ抜けた存在という認識で、3-4-2-1というシステムも含めてスカウティングしてくるはずだ。

 今回のシリーズで2連勝、しかも大勝を飾ったことはもちろん良いことだが、今後の戦いを難しくする結果にはなるかもしれない。しかし、その試合ごとに出てくるテーマをクリアして、戦術的にも人選的にもアップデートしていくことで、最終予選だけでなく、世界に向けた強いチームが作られていくと期待している。そしてもちろん、今回の2試合で3バックが継続的に使われたからといって、4バックが捨てられたわけではない。いつでも立ち戻れる引き出し、あるいはオプションとして、活用されるタイミングは来るはずだ。(河治良幸 / Yoshiyuki Kawaji)

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