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ブラジル人助っ人が生みの苦しみ 川崎で台頭する24歳FWとの争い…なぜ劣勢なのか【コラム】

FOOTBALL ZONE / 2024年9月15日 20時10分

■【カメラマンの目】エリソンは川崎の戦術マッチに苦戦

 試合後、スタンドを埋めた川崎サポーターたちの前に置かれた、お立ち台に上がった鬼木達監督。チームスタッフなどに促されての行為だが、珍しい光景だった。そこで鬼木監督は終盤を迎えたリーグ戦と、これから始まるAFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)への活躍を声高に誓った。

 それにしても劇的な勝利だった。9月13日に行われたJ1リーグ第30節、サガン鳥栖をホームに迎えて臨んだ一戦は、最後の最後で川崎サポーターを歓喜させる幕切れとなった。

 前半11分に橘田健人の得点で先制した川崎は、後半6分に同点ゴールを奪われたが、その10分後に家長昭博が勝ちゴールをゲットし、勝利に向けて試合を仕上げていく。

 しかし、残り15分となって清武弘嗣と堀米勇輝をピッチに送り出し、勝負に出た鳥栖にリズムを徐々に奪われていった。そして、アディショナルタイムにPKを与えてしまい同点とされる。

 後半アディショナルタイム1分の得点にこれで結果が出たと思われたが、スコアはさらに動く。示していた時間は後半55分。川崎は途中出場のマルシーニョのパスからチャンスを作り、最後は山田新が鳥栖ゴールのネットを揺らし勝ち点3を手にしたのだった。

 シーズンが経過していくと、どうしてもリーグで上位に位置するチームの試合を取材することが多くなる。FC町田ゼルビア、サンフレッチェ広島、ヴィッセル神戸が勝利へのスタイルとして打ち出したハードマークと、素早いカウンター攻撃を武器とする今シーズンのJ1の潮流の中で、やはり川崎のボールを保持するパスサッカーは新鮮だ。

 ただ、川崎自慢のそのスタイルも所属する選手によって、多少の変化が見て取れる。左サイドからチャンスを演出するマルシーニョの最大の武器であるドリブル突破も、これまではチーム全体から見ればパスサッカーのアクセント的なプレーだったが、昨年あたりから主要な武器となってきている。

 さらに後半からピッチに立った、成長著しい山田新も前線へと一気にボールを運ぶ推進力を魅力としているフォワード(FW)だ。マルシーニョや山田の活躍により、川崎はパスで繋ぐことを基本としているが、ドリブルという形でのボール保持によって、相手ゴールを急襲することもチームの武器としての比重が高くなっている。山田の相手守備陣が待ち構えていても逃げるのではなく、真っ向勝負を挑んでいくダイナミックなプレーは見ていて実に気持ちがいい。

■川崎に新選手が完全にフィットするのは時間がかかる

 その山田が交代でピッチに立つ前に、川崎の前線でプレーしていたのがブラジル人のエリソンだった。新加入のエリソンは、開幕から先発メンバーに名を連ねる存在だった。しかし、シーズンが進んでいくと、トレーニング中に負った怪我などもあり、ベンチスタートとなる試合も出てくる。

 川崎のチームが上昇気流になかなか乗れないため、選手起用において試行錯誤をしていることも影響しているのだろう。鬼木監督は手持ちの戦力を有効的に起用し、勝利のための方策をやり繰りをしているように見える。

 ただ、やはり川崎というチームに新選手が完全にフィットするには、どうしても時間がかかる。選手が指揮官の思い描くスタイルを体現するのは当然であり、どのチームでもあることだが、川崎が目指すボールを保持する時間を長くして相手を圧倒するサッカーを身につけるには、多かれ少なかれ新たに加わった選手では苦労することもある。

 2019年に加入し、20年の川崎のリーグ優勝に貢献した同じブラジル人のレアンドロ・ダミアンも、加入初年度は川崎のサッカーを理解するのに時間がかかりレギュラーに定着することができなかった。圧倒的な存在感を示したのは、リーグMVPを獲得する加入3年目の21年となる。

 今夏に加わった河原創のように、つなぎ役としてゲームを作ることが主な仕事になる選手は、川崎のサッカーを体現するのに比較的ハードルは低いだろうが、ゴールを期待される最前線のエリソンはより課される動きも多く、この戦術にフィットするのは簡単ではない。

 ただ、エリソンも戦術の中で存在感を発揮しようと努力をしていることは、そのプレーから感じ取れる。前線から守備を行い、FWとしてゴール目指す精神も忘れていない。

 今シーズンは終盤に差し掛かっているが、今のエリソンは川崎というチームで存在感を発揮するための生みの苦しみを経験しているというところだろうか。実力のある選手なだけに、レアンドロ・ダミアンのように数年プレーすれば、絶対的な戦力になると思うのだが、まずは残されたシーズンでの活躍を期待したい。(徳原隆元 / Takamoto Tokuhara)

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