W杯予選序盤の山場!? 森保ジャパン、10月シリーズが甘くない3つの理由【コラム】
FOOTBALL ZONE / 2024年9月21日 7時1分
■10月はW杯最終予選でサウジアラビア、豪州と対戦
森保一監督率いる日本代表は9月、ホームで中国に7-0、アウェーでバーレーンに5-0と大勝を続け、2026年北中米ワールドカップ(W杯)アジア最終(3次)予選でこれまでにない最高のスタートを切った。
2022年カタールW杯のアジア最終予選では2位のチームの勝ち点がグループAは23点(韓国)、グループBが22点(日本)だったことを考えると、このままのペースで勝ち進めば来年3月にはもうW杯出場を確定できるのではないか、あるいはもしもほかのチームが勝ち点を伸ばせなければもっと早くに……などと皮算用をしてしまいそうになる。
だが10月のシリーズは簡単にいかないかもしれない。もしもこの2試合で後れを取ってしまったら、前回最終予選と同じく最初の4試合で2敗という追い込まれた状況になってしまう。そうなるかもしれないと思えてしまう理由は3つある。
まず、戦術的なバリエーションが持てないかもしれないことだ。森保監督は中国、バーレーンの裏をかいた。その手はもう使えない。
過去、森保監督は慎重にゲームを進める時は4バックでスタートし、ここぞという場面で3バックを使ってきた。また、カタールW杯後は1か月に2試合行われる時、最初のゲームと2番目のゲームでターンオーバーを使ってきた。
例えば今年のアジアカップ、日本はすべての試合で4バックを使ってスタートした。3月の朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)戦も4バック。6月6日のアウェー・ミャンマー戦、6月11日のホーム・シリア戦で3バックを使用したが、この時はもうW杯2次予選突破を決めていた。
2023年は例えばドイツ戦、トルコ戦という実力を測るのに大切な試合でもターンオーバーを使い、2024年はアジアカップを除き、6月も選手を大幅に入れ替えていた。
今年3月までの戦い方なら中国戦で4バックを使ったはずだ。また、メンバー選考を見ても右サイドバックに菅原由勢(サウサンプトン/イングランド)、望月ヘンリー海輝(FC町田ゼルビア)、左サイドバックに長友佑都(FC東京)、中山雄太(FC町田ゼルビア)を選考し、4バックも可能な選手選考になっていた。
サイドバック4人のうち長友と中山は前回予選を経験しているメンバー、菅原は2023年以降の日本代表戦10試合のうち7試合、2024年は6月までの9試合で5試合に先発していたのだ。
つまり、この最終予選の前までの戦い方を踏まえると、中国は4バックを予想しただろうし、バーレーンはターンオーバーされたメンバーを使ってくると思っておかしくなかった。だが、日本は3バックでスタートし、バーレーン戦でも中国戦の久保建英を鎌田大地に入れ替えただけで、ほぼ先発を変えなかった。
森保監督はこの相手の意表をついたような策に出て、中国戦でもバーレーン戦でも前半のうちに2点を奪い、試合を有利に進めることができた。対戦相手の戸惑いは、たとえば中国が後半不慣れな3バックに変更して日本を押さえ込もうとして失敗したことによく現れている。
■10月シリーズでターンオーバーはない?
ところが、今回、日本の手は限られてしまっている。
9月14日に行われたJ1リーグ第30節、FC町田ゼルビアはアウェーでアビスパ福岡と対戦した。その開始早々の前半5分、中山雄太が足を痛めて交代する。そしてその翌週、中山は町田のトレーニングピッチに姿を見せなかった。
日本代表は3バックでも4バックでも完成度が高いという特長があったため、相手は両方のシステムへの対抗策を用意しなければならなかった。ところが今回は左サイドバックの人材としてのファーストチョイスは長友になる。
4大会連続でW杯に出場した長寿選手のことは、相手チームもよく分かっているだろう。日本のシステムが4バックなら情報はたっぷりあるはず。だったら相手は3バックへの対応策を考えておけばいいということになる。
また、冨安健洋(アーセナル/イングランド)や伊藤洋輝(バイエルン/ドイツ)が試合に復帰していない今、前回選んだDFでターンオーバー使用とすると、望月や高井幸大(川崎)を使うことになるが、それはこのグループの上位争いをすると思われるサウジアラビアやオーストラリア相手では苦しい。4バックとともにターンオーバーもないと考えられるはずだ。
となると、サウジアラビア戦もオーストラリア戦もがっぷり四つという戦いで勝敗を決しなければならない。
懸念される2つ目のポイントは、サウジアラビアの気候だ。たとえばヨーロッパの中で比較的北緯が低いセビリアでも10月の平均最高気温は26度、最低気温は15度程度。ところがサウジアラビアのジッダは最高36度、最低25度程度と対応が難しい。前回カタール大会の最終予選で対戦した2021年10月7日も選手の動きが急激に鈍っていったのを覚えている人も多いだろう。
3つ目は、オーストラリアにもうあとがないという点だ。
たしかにオーストラリアとは前回の最終予選では2勝、2018年ロシアW杯アジア最終予選では1勝1分と分はいい。しかもオーストラリアは世代交代の狭間で揺れ動いている。
ところが追い詰められたオーストラリアがどれくらい強いかというのは、これまでの戦いが証明している。前回の予選ではアジアのプレーオフで勝ち、大陸間プレーオフでもペルーをPK戦で破った。前々回ロシア大会でもアジアプレーオフで勝ち、最後はホンジュラスを1勝1分で破ってW杯出場を決めたことに表れている。
身長差を生かしたパワープレーという日本が苦労する戦い方も選択できる相手でもある。日本はどんどんロングボールを放り込まれると苦戦するのは、前線にハイボールを送り込むFC町田ゼルビアの躍進にも通じるものがある。
もちろんこれがすべて杞憂に終わって、日本代表が対象で連勝記録を伸ばすことが望ましい。一方で、順調な滑り出しを見せたものの、活躍が期待される選手に怪我が続いていること、そして新しい戦力はまだチームの中で台頭していないことも忘れてはならない。薄氷の上を歩いているわけではないのだが、決して悠々一人旅をしているのでもまだないのだ。(森雅史 / Masafumi Mori)
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