「日本人にしか備わっていない」資質とは? ドリブル伝道師の実体験「海外の選手は意外とできない」【インタビュー】
FOOTBALL ZONE / 2024年9月24日 7時20分
■岡部氏が考える日本人ドリブラーの強み
日本人ドリブラーは、エジプト代表FWモハメド・サラー(リバプール)やフランス代表FWキリアン・ムバッペ(レアル・マドリード)の領域に到達できないのか。日本人選手は、海外一流選手との差にどう向き合っていくべきなのか。“ドリブルデザイナー”として日本代表選手をはじめ、数々の世界トッププレーヤーに自らが提唱するドリブル理論を伝えている岡部将和氏は、「日本人にしか備わっていないものがある」と、日本人ドリブラーが世界と渡り歩くうえで、備わっている重要な資質について見解を述べている。(取材・文=城福達也)
◇ ◇ ◇
世界で活動する岡部氏は子供たちへの指導にも尽力しており、これまでも国内外で子供に向けたサッカー教室や講演を行い、9月23日には株式会社海帆とともに「Kaihan CUP 2024-Memorial Alfredo Casas-」をスペインで開催。日本全国の小学生を対象に、U-8とU-10の代表選手をセレクションで24人を選出し、日本代表としてレアル・マドリードやFCバルセロナ、アトレティコ・マドリードなどに所属する同世代のユース選手も参戦する大会となっている。
プロサッカー選手を目指す子供たちにとってはこれ以上ない貴重な機会となるが、目を背けるわけにいかないのは、海外一流選手とのギャップだ。
それは、特に個の力で打開する局面で可視化される。分かりやすく言えば、サイドで繰り広げられるデュエルの攻防で、俊足なサラーやムバッペが見せる爆発的なドリブル突破は、まさに超人的な領域だ。
岡部氏に日本人ドリブラーが行き着く最高到達点について尋ねると、「シンボルになり得るのは、やはり三笘くん。今まさに、日本人ドリブラーが世界を席巻できるということを証明してくれている」と、日本代表MF三笘薫(ブライトン)の存在が大きな道標となる見解を示した。
「僕のドリブル理論もそうだが、例えば足が遅い選手でも、対峙する相手との距離と角度を調整すれば、ここからであれば確実に抜けるというテリトリーを持っていて、彼はそこを熟知している」
ドリブルデザイナーの岡部将和氏【写真:FOOTBALL ZONE編集部】
■日本人選手は「再現性高く認識できる」
三笘の強みに言及しつつ、日本人ならではの武器について語っている。
「国内外の多くの選手に指導するなかで、細部まで考えるというのは日本人選手の良さであり、海外の選手は意外とできないと感じている。僕自身が実感しているが、日本人に近いアジア人でも、背後から人がやってきてぶつかってしまうかも、という状況でスッと避けることだったり、お互い真向かいから歩いてきたら、スムーズに譲り合ったりとかができない。日本人にしか備わっていないものもあるし、ちょっとした変化にも気づくことができる。例えば、わずかな重心の移行を海外の選手は感覚値で捉えるが、日本人は再現性高く認識できる」
岡部氏は現在、スペインに在住しているが、日常生活でも感性の差を思い知っている。「スーパーの駐車場でも、T字路で『出口は右側』と記載されていて、曲がって進み、またT字に突き当たった際、そこに出口の案内が掲示されていないと、スペイン人は『え?右か左、どっちなんだ?』と全く分からなくなる人が多い。日本人は、次は左と感覚的に分かる人が多いと思う」。最初にあった「出口は右側」の案内で、駐車場の全体像をある程度頭の中で描くことのできる日本人は、確かに多いだろう。ピッチにおいても、同じようなことが言える。
「ただ敵陣で横パスを出すワンプレーだけにしても、それによってセンターバックが数メートルだけ前に出て、サイドバックとの最終ラインにわずかながら溝が生まれる。そのスペースを順序立てて導き出せる」
岡部氏は、海外の一流選手と互角に渡り合うだけの資質が、日本人選手に備わっていると確信している。すべての指揮官がペップ・グアルディオラ監督のように細部まで戦術を徹底的にチームに落とし込むわけではない。そのような世界で、説明書に書かれていないことを自分で考えて紐解く力は、日本人ドリブラーの活路になるのは確かだろう。
[プロフィール]
岡部将和(おかべ・まさかず)/1983年8月1日生まれ、神奈川県出身。PREDATOR URAYASU FC SEGUNDO―バルドラール浦安―Laguna Playas de Salou(スペイン)―湘南ベルマーレ。2015年からドリブルデザイナーとしての活動を開始し、多くのプロ選手や子供たちにドリブルの指導を行う。YouTubeなどのSNSを通じて配信した動画の総再生回数は3億回を超える。(城福達也 / Tatsuya Jofuku)
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